授業の内容は?
セルリアが提案した授業は【魔道具】の使い方。
セルリアいわく、リオンは勝手に突っ走ることが多く、人の話を聞かないので魔道具を扱わせるのが怖いところらしい。
スコットがいれば先輩ヅラで、少しは安全なのではと考えからの提案だった。
魔道具とは、魔力を流すことで使える道具だ。戦いに使うものから、日常で使うものまで幅広い。
今回は比較的簡単なものをということで、魔道具のコンロを使うことにした。
魔法使いたちは火を起こすのに薪は使わない。よほどの家でない限りコンロは設置されている。
というわけで、机上に置かれたのは、一台の携帯コンロ。
赤色をした20センチ四方の平たいキューブで、一箇所だけ側面にスイッチがいくつかついている。
「お師匠……いや、これも魔道具だけど、なんかさ、もっとすごいのとか」
見るからに気落ちするリオン。その横ではスコットが目をキラキラさせている。
「怪我をするのがリオンだけなら、どれを使ってもよかったんですけどね。スコット君を見習ってください」
ひどいことをさらりといってのけるセルリアは笑顔を崩さず、持ってきていたカバンから鍋と透きとおった小さな石を取り出す。
「なにをするんだ?」
「そうですね。お湯でも沸かしてみますか。魔力を込めて動かすのが目的ですから、それぐらいでいいですかね」
「それもそうか」
授業内容は決まっていても具体的な中身は話し合っていなかったらしい。
「早くやろーぜ。魔力をいれりゃあいいんだろ」
リオンが魔力を入れるため、コンロに手を伸ばす。
「待った――」
イグニスが急ぎ止めようとするが遅かった。
ボッ!
コンロは火がついた瞬間勢いよく高く高く昇って、火柱が上がる。
「あっちぃ!」
「わっ⁉︎」
リオンは慌ててコンロから手を離す。
そばにいたスコットは驚いてリオンにしがみつく。
イグニスはため息を吐いてコンロの火を消す。その動作は手馴れている。
セルリアは呆れた顔をして、右手に持った鍋で左の手のひらをパチリと鳴らす。
「全く、相変わらず話を聞きませんねリオンは」
「そんなわけねぇし」
目が泳ぐリオンは目をそらす。そんなリオンを相手にしないと決めたセルリアはスコットに声をかける。
「怪我はしていませんか、スコット君」
「……」
コクリと頷くスコット。
怪我はしていないようでひとまず安心するセルリアとイグニス。
「まず魔道具の説明をした方が良さそうだな」
「ええ、しっかりと叩き込んでおかないと。同じことを繰り返されてはたまりませんからね」
イグニスの言葉に同意するセルリアは楽しそうに笑った。
ありがとうございました。