セルリアとリオン
合同授業当日。
勉強をする場所はイグニスの家になったため、現在セルリアとリオンの到着を待っている。
スコットは落ち着かないようで座ったかと思うと立ち上がり、玄関まで行ったり、窓から外を見てはリオンが早く来ないかとソワソワしている。
その様子にイグニスは苦笑する。
仕方がないといえば仕方がないのかもしれないと、イグニスは思う。
もともと訪ねてくる人間は少ないが、まともな来客となるとおそらくいない。
スコットが知る人といえば、勝手に上がり込んでるか、家を吹き飛ばそうとするようなやつらだ。
ビュォォ――。
突然、外から大きな風の音がして窓ガラスがガタガタと音を立てて揺れる。
「師匠……」
驚き目を瞬かせるスコットは怯えた顔をしてイグニスの方をみる。
そんなスコットをよそに、イグニスは時計で時間を確認する。
「さすが」
イグニスの言葉にスコットは疑問符を浮かべていると音がやんで、玄関の扉がノックされる。
玄関に向かうイグニス。後ろにスコットが付いてくる。
扉を開けると、派手な格好をした青年に服の襟を掴まれているリオンがいた。
「よっ!スコット」
「お久しぶりです。先輩」
リオンを見て嬉しそうな笑みをこぼすスコット。派手な格好の青年セルリアを見て呆れた顔をするイグニス。
「リオンさん!」
「久しぶりだな」
セルリアは営業スマイルのような笑みを浮かべて崩さず、リオンはうんざりした顔をセルリアに向ける。
「なぁ、お師匠。そろそろ離してくれよ」
「ああ、そうでしたね」
掴んでいた襟を離して、セルリアはスコットに視線を向ける。
「君がお弟子さんか。初めまして、ボクはセルリア・スターリング。リオンと仲良くしてくれてるみたいでありがとう」
「……セルリアスターリングさん」
スコットがセルリアの名前を復唱して、リオンが声を出して笑い、セルリアがリオンを軽くはたく。
「セルリアで構いません。ボクは貴族でして、苗字があるんです」
「変わりもんだけどな。魔法使えるやつと縁を切らねぇんだから」
「貴族なのに?」
一般の家庭でも魔法使いとわかるだけで忌み嫌われる。貴族ともなればなおさらで初めから存在しないとされることがはるかに多い。
「えぇ、貴族というより芸人の集まりですからね」
「……芸人」
「魔法も芸の一つとしか考えてませんから」
セルリアは呆れたように言って、庭に視線を向ける。
「ところで、ドラゴンはここにいさせてもらっても構いませんか」
イグニスたちも庭を見る。
庭には一体のドラゴンが行儀よく座っている。視線に気づくと鼻息を荒くして胸を張る。
よく躾けられている。
「暴れないなら問題ない」
「……格好いい」
「お褒めいただきありがとうございます」
「カッケェよな。こいつに乗ってきたんだぜ!」
リオンの言葉にスコットは目を輝かせる。
「ボクも乗って見たいです」
「のせてやりてぇけどさ、あいつはオレの言うこと聞かないんだよなぁ」
リオンが頭を掻き、スコットはちょっぴりショックを受けた顔でイグニスの方をみる。
「あれに頼めばできるだろうけど、安全については保証しない」
洞窟にいたドラゴンのことだろう。
セルリアの連れてきたドラゴンは賢そうな見た目をしているが、洞窟でイグニスが倒したのは暴れることしか頭になさそうなやつだった。
「スコット君。合同授業が終わったら、少しだけ乗って見ます?」
「乗ります!乗ってみたいです」
やや食いつき気味に返事をするスコット。
イグニスは目だけでセルリアに礼をする。
「問題ないとは思いますが、気をつけてくださいね。リオンは初フライトでリーフェに嫌われましたから」
「原因は?」
イグニスが尋ねる。
「リーフェの上で騒いで動いてました」
リオンはそうだったのかと驚いた顔をして、イグニスとスコットは納得した顔をする。
そんなこんなで授業開始!
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