合同授業のお誘い
初めての交流会が終わり、ゆっくりと日々は過ぎる 。
「う〜、なんで上手く出来ないんだろう」
目の前に置かれた桶に視線を送りながら唸っているのはスコットだ。
現在、水魔法の練習中のスコットは、イグニスから直径15センチほどの桶を渡されていた。
一度の水魔法で桶一杯の水をだす。
見せられた手本のように簡単にはいかず、スコットがやると大体は三分の二か、半分くらいの量までしか水は貯まらない。
苦戦中のスコットのそばで、イグニスは以前洞窟から採ってきたものを加工していた。
そこに一羽の白い鳥が飛んでくる。
嘴には封筒を加えていて、イグニスはそれを手に取る。
「ギャー」
白い鳥は確かに渡したぞと言いたげに鳴くと、どこかに飛んで行った。
「せっかちなやつ」
手紙の差出人を確認する。
綺麗な字でセルリア•スターリング、その横には隙間に無理やり書かれたような字でリオンと書かれている。
リオンは、スコットが初めての交流会で知り合ったリオンだろう。
スコットが話してくれた会話の内容をイグニスは思い出す。
『リオンさん、コナーさん、カルネさんの師匠は東の三バカって呼ばれてるって言ってました』
イグニスはこめかみを押さえてため息をつく。
セルリアはカタリナとまた違う形で厄介な相手だ。真っ向勝負なカタリナとは違う、とらえどころがない感じ。
スコットのことを考えると受けるべきだとは分かっている。
「スコット」
唸りながら練習続けるスコットをイグニスは手招きしながら呼ぶ。
スコットは何かあったのかといったふうにイグニスの近くに行く。
「なんですか師匠。手紙?」
「ああ」
近くに来たスコットにイグニスは手紙の差出人がわかるようにして言ってましたスコットに見せる。
「合同授業をやらないかって手紙だ」
「えぇと、リオンさんと一緒に?」
歳が離れているので、一緒に出来ることはなさそうなのにと首をかしげるスコット。
「魔法の練習だけが授業じゃないからな」
「一緒に出来るならやりたいです!」
元気よく答えるスコット。
スコットがいうなら仕方がない。
セルリアは一応、信頼できる相手だ。それに交流会の話を聞く限り、スコットはリオンに懐いているようだし、問題ないだろう。
「分かった。そう返事をしとく」
「お願いします。師匠!」
家の中に入って、イグニスは手紙の返事を書いて外に出る。
一箇所の窓のにだけついている20センチほどの板に三枚の銅の硬貨とビスケットを一枚置いて、板を叩く。
すると、一羽の茶色い鳥が飛んで来る。
「ギュイ」
茶色い鳥は板に置かれた硬貨を、くびにぶら下げている小さな箱にくわえて入れる。それから、ビスケットをこぼしながら食べる。
イグニスは食べ終わるのを待ってから、手紙を見せて鳥に話しかける。
「セルリア・スターリングにこれを届けて欲しい」
「ギュイギュイ」
胸を張って鳴いた鳥は手紙を咥えて、すぐさま飛んで行った。
それを見送ると、二人ともそれぞれの作業に戻った。
基本的に苗字があるのは貴族だけです。