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交流会

  今日は朝からスコットの機嫌が良い。

  鼻歌交じりに出かける準備をしている。


  スコットにとって待ちに待った交流会の日だ。

  イグニスからしてみれば、自分が参加しなくてもいいとはいえ面倒なものでしかない。

 

  交流会主催は魔法協会で師匠(あのひと)の弟子ということもあって、必要以上に声をかけられる。まるで親戚のような感じ。


  そんなわけで、上機嫌なスコットを連れてイグニスは交流会の会場に向かった。

 

  会場が見えてきた頃、イグニスの足が止まる。


「あそこで交流会をやってる。セルジュとこの前の、ウォルスがいるはずだから、この封筒を渡して中に入れ」


  そう言ってイグニスは一通の封筒をスコットに手渡す。イグニスは会場に近づく気はないようだ。


「行ってきます!」

「おう。楽しんでこい」


  招待状を持ったスコットは、走って会場に向かう。中に入る直前に振り返ってイグニスに手を振る。

  イグニスにそれを見て手を振り返した。


「ちゃんと師匠やってるみたいだな」

「弟子が良い子だからじゃない」

「それもそうか」


  手を振るスコットを見ながらセルジュとウォルスがそんな会話をする。


「ようこそ交流会に」

「よく来たな」


  歓迎する二人にスコットがはにかみ、招待状を渡す。


「今日はほとんど菓子を食うだけだから安心しろ」

「は、はい」


  期待と不安を胸に中に入ると、すぐに声をかけられた。


「スコット君。久しぶり」

「フィアさん!」


  見知った顔に安堵するスコット。

  不安にかられた表情は、笑顔になる。


「よかった〜。知ってる人がいて……」

「わたしもだよ。今日は知らないばっかりでちょっぴり怖かったんだ」

「そうなんですか」


  あたりを見回せば、10人程の人がいるだけだった。年齢はスコットやフィアたちよりも高い人ばかりのようだ。

 

「うん。いつもはもっと――」

「全員揃ったね。それじゃ始めよっか」


  セルジュの声が部屋に響いて、四つほど並んだ机に飲み物やお菓子が置かれる。

 

「今日はまぁ、自己紹介さえできればあとは自由で構わない」

「できれば一人くらい覚えて帰れると嬉しいかな」

 

  セルジュとウォルスの簡単な説明が終わると交流が始まった。

 

  スコットとフィアは、緊張から喉が渇いていたので飲み物を取りに行くことにする。

  そこで二人組の少年少女に声をかけられる。


「おまえら見ない顔だな。俺様はリオン!兄貴って呼んでいいぜ」

「わたしはカルネ。将来の最強魔法使いよ!」


  リオンとカルネはかなり気合の入った自己紹介をするが、スコットとフィアはノリについていけず唖然とする。

  4人の元に眼鏡をかけた少年がため息をつきながら近づいて来る。

 

「リオン、カルネ。そう言った自己紹介は控えるように言われているだろう」

「そうだっけ?」

 

  とぼけるリオンの態度に眼鏡の少年は頭を抱えたくなるのをこらえて、スコットとフィアの方へ向く。

 

「バカどもがごめんね。ボクはコナー」

「おいバカとはなんだ」

「こいつと一緒にしないで」


  リオンとカルネが騒ぐが、コナーは相手にしない。

  その様子にスコットは笑いが込み上げる。まるで師匠とセルジュを見ているように見えたからだ。


「お前のせいで笑われただろ。まぁいいや。名前は?」

「えっと、ボクはスコットです」

「わたしはフィアです。よろしくお願いします」


  スコットとフィアが小さく頭を下げる。


「よろしくね。スコット君、フィアちゃん」

「はい。よろしくお願いします」


  少し不安が取れたのかスコットの顔には笑みが浮かぶ。

  それに気付いたコナーはもう少し緊張をほぐそうと共通の話題を探す。

 

「う〜ん、師匠の話でもしようか」

「わたし達の師匠は東の三バカって言われてるし、多少は有名だと思うけど、聞いたことある?」

「おね……師匠から聞いたことがあります。

  3人が揃うととても強いと」

「よく言い争いしてるけどな。お前らの師匠は?」

「カタリナです」


  コナーとリオンが驚いた顔をする。

  カルネはフィアの手を素早く握る。フィアは少々引きつった顔をしている。


「今度、会いに行ってもいいかしら。憧れなの」

「えっ、あー、大丈夫だと思います」

「ありがとう!師匠を通して連絡するわ」

「は、はい」


  フィアの師匠がわかったところで、視線はスコットの方へ移る。

  その視線に若干怯えつつもスコットは口を開く。


  「師匠は、イグニスです」


  リオンが吹き出しそうになるのを堪え、カルネとコナーはびっくりして動きが止まる。

  フィアは彼らの反応にうろたえ、スコットは不思議そうに目を丸くして首をかしげる。


  イグニスの名が有名なことも、魔法界一の問題児と呼ばれていたことも、スコットは何ひとつ知らなかった。


どれだけ時間がかかっても途中放置はせずに頑張ります。

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