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僕と俺

最近1話に使う字数が増えて危機感を覚えております。中島です。



 



 あいつに家の外に放り投げられた。俺の体が外壁を突き破って、家の2階から落ちて行くその刹那、奴が眩い程の光を放つ炎と共に鎧を召喚し、それを纏う瞬間を見た。


 それは灯の無くなった家の中を照らすようで美しかった。


 眉を寄せたおっかない面。 筋肉を模した黒の鎧は、どこか生物的だ。風に青いマントをたなびかせ、家の壁を突き破って、奴がこっちに向かってくる。


 俺は翼を広げて体制を立て直しながら、紙一重に奴の突進を避けて、周りに誰もいない、田んぼに俺たち2人は降り立った。



 仮面から見える青の瞳は夜の闇に怪しく光り、鎧に付けられたいくつもの傷からは、空に舞う桜の花びらの様な火の粉を巻き照らし、地獄の業炎が吹き出している。



 頭に血が登りながらも、やはり自分の本質がカメラマンだと言うことを自覚したよ。



 それに、これが間近で見れた事に感動したし、何故カメラを持ってこなかったのかと、今凄い公開してる。




 ……あれ。




 意識が遠のいていく。……異常に眠い。あの子から引き継いだ傷だけなら、まだ動けるはずなのに。




 理由は、意外と簡単だった。何気なく下を向くと、俺の足元には1mほどの血溜まりが出来ていた。



 鼻血がダラダラと、全開に開けた水道の様に、際限なく溢れ出ていた。その血溜まりに写った自分を見て、やっと状況を理解した。



【人化け草】が、軽い変装の為に使っていた人化け草の効果が切れていた。地味男の顔は、ドロドロと溶けて、俺が奴の前にあらわになっていた。


 まあ……副作用って奴だ。今弱ってたから余計きついのが来たのかな。



 血溜まりに映る自分の顔を見て、いつも思ってる事を呟いた。多分癖だ。



「嫌いだ。こんな顔…… 」



 それを最後に、前かがみに倒れた。 重い目蓋が閉じていく間、あの綺麗な鎧がこっちに駆け寄ってくる姿が見えた。……やっぱ走る姿も絵になるな。



 はぁーきっと、トドメを刺されるのだろう。



 意識が無くなる直前に思った事は、あの子の親の記憶を奪えなかった、自分の不甲斐なさにイライラした……ただそれだけ。







 ※※※※




 カッカッカッ……。




 女のハイヒールが心地よい音を鳴らしながら、この夜を1人で歩いている。


 灰色のジャケットにパンツスーツ。沢山の資料が詰められパンパンになった、赤のトートバッグを肩にかけて、カツカツと一定のリズムで、心地よい音を鳴らしながら、家路を歩いている。



 女は夜の一人歩きには慣れていた。毎晩の事だ。社会人として、仕事を終わらせてから帰るのは当然の事だと、社会人としての彼女はそう考えていた。



 だが今日は、何かがおかしいと感じていた。



 いつも異常に夜風が肌寒く、いや……もはや突き刺さる様な寒さと言っていい。


 それに加え、自分の足音と少しタイミングのズレた、何故か不快に感じる足音が聞こえるのだ。



 ピチョ……ピチョ……ピチョ……ピチョ。




 だが……何故かその足音は、遠くなっていく所か、どんどんこちらに近づいてくる。



 グチュ!……グチュ!……!グチュ!……グチュ!



 女は、少し足を早めた。後ろの音が気になったが、振り向くことは出来なかった。だが足音はどんどん近づいてくる。



 女はいくら足を早めようと、不快な足音は遠ざかることは無く、この音の主がゆっくりと自分に近づいてくるのがわかった。


 理由は分からないが、恐怖で女は涙した。



 そして、高まる不安、恐怖、そこに足音の主が誰なのかと言う、ほんの僅かな好奇心が、女の足を止め、振り返らせたのだ。






 女は安堵した。足音の主など、どこにもいない。



 夜道が怖くなって、少し暗い妄想をしてしまったのだと納得し、涙を吹いてまた前を向いた。




 前を向く……そして女は歩み出そうとしたその1歩を止めた。




 ギィー……ギィー……ギィー……。





 女の視界に入ったのは人、と読んででいい者なのか、躊躇してしまう程歪な顔のパーツの青白い男の顔。2メートル程の高身長に、まるで骨に皮だけが張り付いたのような細長い手足の男だった。





「我が血肉の1部となる事を……光栄に思え 」


 低い声が女の鼓膜と体を揺らした。



 これが奇形の男が発した言葉であり、女が最期に聞いた言葉でもあった。




 ※※※※



 子供は大人に憧れる。大抵の子達は早く年をとって大人になりたいと思うだろう。



 人それぞれあると思うが、大抵は口うるさい親から離れたいとか、好き勝手したいからとかだと思う。



 俺は思い込みが激しい方だから、合ってるかどうかは分からない。



 だが、この意見を持ってる奴らの気持ちは正直何となくだが分かる。フラフラするのはそれなりに楽しいし、縛れるのは嫌だ。




 1人で生きるなら子供より、大人の方がいいに決まってる。それは分かってる。



 でも……俺は大人には……成りたくない。




 ※※※※



 目が覚めた。何処で目が覚めたか? そんなのこっちが聞きてえよ。


 なんか寝ぼけてたのか変な事言っちまった気がする。


 取り敢えず周りを見る。取り敢えずはあの世じゃないらしい。俺がいるのはなんか質素な寝室だ。


 質素と言う言葉で済ますのが手っ取り早い。


 目移りするもんなんて、何もねぇ普通の壁。普通のベット。無柄の絨毯じゅうたん。 迫っ苦しい部屋。




 …………。



【人化け草】の効果が切れたせいだろうな。【僕】なんて一人称使おうと思うと寒気がする。


「だよねー」的なお綺麗な言葉使いなんて、女見てぇーで、気持ち悪くて、吐き気がするからぜってぇ無理。



「……あ」



 ふと両手を見た。今までで、1番の違和感を感じた。




 魔法使うには、【筆】を使って【式】を書き、最後に名前を言わなきゃならない。



 あのショタじじいで言うと、馬鹿でかい剣があいつの【筆】だ。 五芒星を書いて結界を作ってたから、あれが奴の筆で間違いない。



 指は【筆】にはならない。何故なら物じゃないからだ。思い入れがある物なら魔力インクにして式を書ける筆になれる。なら何で俺が指で【式】を書いてのか、だけど。







 俺の両腕は義手だ。ちょっと色々あってね。腐って医者に切られちまった。



 いつもは、【偽の皮】って言う、魔道具使って隠してる。その……ちょっとだけ気にしてるから……。




 でも定期的に外さなきゃ、中身が錆びちまうんだ。それがきちんと外されて、ベットの横に畳んで置かれてた。


 状況は、何となくだけどわかる。 あいつが俺をここまで連れてきたんだ。でも、



 ……あいつ、何で俺が義手って知ってたんだ? どうして俺を殺らなかった? 俺、完全に掟破りの魔法使いなのに。



 そんな疑問で胸がムカムカしながらも俺は、寝室を出た。扉を開けるとすぐ左側に、階段があった。


 何となくそこを降りると、少し小さめの机が1つ。何処か懐かしげのある木の椅子2つが、机を挟んで置いてある。



 向かい側にはあいつがいた。スマホ片手に菓子食ってやがった。ジジイの癖に行儀悪すぎるんだよ。



「何、年配のおじいちゃんがスマホなんて使ってんの?」なんて差別気味のセリフが飛び出しそうだったが何とか飲み込み、俺は椅子に座った。



 奴が無言で菓子の口を、こちら側に向けた。




 少し間を置いて1枚だけ食べた。わさび風味のポテチだ。こいつやっぱりジジイじゃねぇかよっと思った。



 スマホをポケットの中に閉まって奴が口を開いた。




「おはよう、冴島さえじま 烈花れっか



 16歳の未成年君よ。



 言い訳ついでに、お前の事を聴こうか?


 まずは朝飯食ってからだけどな 」







【ヘルマン・グレン】。奴は俺の名前まで知っていた。普通に驚いたが、それよりも、飯前にお菓子食ってもいいのか? なんて事の方が気になってしまった。






寝る時は、お腹に布団をかけて、暖かくして下さい。僕みたいに馬鹿でも風邪は引くんです(絶望)

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