82話 いい人にはなれない
身軽な瑞穂と周囲を探索して分かった事は、六人一党であった事。熊型岩魔像が来た方向に五体の遺体があった。奴隷である半豚鬼は数に含めないので六人一党で間違いない。
「てっきり区画主と遭遇戦になって負けたから逃走したのかと思ったら————」
ご休息中に襲撃を受けたようだ。殴打されて無残な遺体と化している彼らは装備を身に着けていない。破壊された大型の天幕、大型の背負子、散らばった装備品…………。
巨漢の半豚鬼は顔に奴隷を現す紋様が浮かんでいたので多分見張りを彼に任せて楽しんでいたのではないだろうか? それ以前にこんな時間に盛っていたのが不思議でならない。
「こんな場所でお楽しみとか神経が分からんなぁ」
「お楽しみ?」
僕のボヤキを聞いた瑞穂が装備品の回収していた手を止めて聞き返してきた。
「単なる独り言だよ。ところで良いものはあった?」
慌てて話を逸らす。まだ瑞穂には早い話だ。
「ん…………これ以外はゴミ」
そう言って差し出してきたものは、小袋だ。中を確認してみると結構な数の万能素子結晶が詰まっていた。
「軽く見積もっても結構な額になるね」
「うん」
迷宮内で拾ったものは拾った一党のモノになる。ましてや持ち主は全滅しているのである。
蘇生義務もないし認識票だけ回収して、半豚鬼の奴隷を奴隷商へと引き渡さないとならない。
主人なしの奴隷は基本的に最低限の活動以外は行わないようにされている。
その為に良さげな人物に媚を売って自分を買い取ってもらうようにするのだが…………。
「ぶっちゃけ、いらないな…………」
「そうなの?」
思わず口から出てしまったが、あの半豚鬼はうちの一党には合わないタイプだ。うちの一党に図体がデカくて前線で盾を構えて突っ立っているような戦士は不要なのだ。盾戦士の仕事はあくまでも怪物の敵意を集めることで攻撃を受ける事じゃない。どだい人間サイズの僕らじゃ打たれ強さは大きく変わらない。これがゲームだと違うんだけどねぇ…………。
そんな感じの説明を瑞穂にしつつ帰路につく。
「どうだった?」
戻ってきた僕らを最初に出迎えてくれたのは和花だった。
「全滅だった」
細かい事は省いて事実のみ伝えた。
「あの半豚鬼はどうするの?」
一応気を使ったのか和花が日本帝国語で問いかけてくる。
「うちじゃ相性が悪いからマニュアル通りに奴隷商に引き渡すよ。何もしなければ彼はここで死ぬだけだからね。それに————」
豚鬼という種族そのものが嫌悪されておりセシリーが拒否反応を示しているのだ。
「そっか…………。私もそれが良いと思う」
和花はそう答え、瑞穂は無言で何度か頷く。
「今日は早いけど引き上げよう」
そう皆に告げ帰還した。
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「————という状況だったのですが、僕の判断は正しかったのでしょうか?」
そう師匠に質問を投げた。
「善人ぶれなくて後悔してるのか?」
そう答えた師匠の表情は笑っていてこの台詞が冗談の類であることが分かる。
「んもー。そういう冗談は言わないの」
そう嗜めるのは師匠の横にピッタリと寄り添っているマリアベルデさんだ。いや、本名はメフィリアと言うのだが、つい偽名の方が先に来てしまう。
「お前らの一党じゃメリットはほぼないしな。んで、逃げ出した頭目っぽいのは遺体が見つかったのか?」
帰り際に遺体を発見した。暗がりの中を頑張って走ったのだろうが、広場近くで遭遇した骨魔像によって倒され冷たくなっていた。
「樹らの一党だと必要なのは片手剣と盾を持った戦士か、槍戦士あたりだろうからな」
「でも、半豚鬼なんて珍しいね」
マ…………じゃなかった。メフィリアさんがそう言うのには訳がある。
母体にかかわらず豚鬼は九割九分が豚鬼として誕生する。残りの一分が半豚鬼として誕生するのだが、生まれた瞬間から半豚鬼は豚鬼たちの奴隷であり玩具なのだ。成人年齢である8歳まで生き残れる確率はほぼゼロとの事で極めて希少な存在なんだとか。
その後迷宮攻略などの話が続き半刻ほどが経過していた。
そろそろ本題に入ろう。
「師匠。お願いがあります」
更新しないとそのままFOしそうなので文字数少なめでも何とか更新していきたいが…………。
考えてみるとそこまでする必要があるのだろうか?




