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80話 表彰とこれからの行方

 一週間(一〇日)後、表彰という名目で広場にてさらし者にされている。

 歓声の中で手を振って応えてはいるものの道化だなーという感想が僕らの中で渦巻いていた。


 制度が変わって初の昇格者である事、そして階梯(ランク)毎の変更した特典などが発表され、一部冒険者(エーベンターリア)たち…………主に若い層が歓声を上げている。

 昨年までの制度だとこの町で冒険者(エーベンターリア)が昇格することはあり得なかったのだ。

 だが努力すれば報われると分かり彼らの目はギラギラとしている。

 逆に中年連中は、今更そんなこと言われてもといった感じで多くの者は覇気がない。

 迷宮(アトラクション)攻略についても新しい規約(ルール)が設けられた。到達階層(フロアー)が5で割った階層(フロアー)毎に報奨金が出る事となった。既に地下五階に到達している冒険者(エーベンターリア)たちにも報奨金が渡された。一人頭金貨20枚との事だ。地下十階だとその倍だという。


「だけど報奨金が一人頭2万ガルドとは気風がいいな。そう考えると()()()も馬鹿だな……」

 報奨金を受け取りつつ健司(けんじ)が遠い目をしてそう漏らす。

 ここでいうあいつとはもちろん隼人(はやと)の事だ。

 だが過ぎた事を気にしても仕方ない。彼の生死はまだ賞金首(プレミー・デナーロ)の張り紙があるのでうまく逃げ回っているのだろうと思うので僕らに出来ることは彼の無事を祈るだけだ。


 さて、僕らはこれから新しく募集した面子の面接が待っているのだ。

 やれやれ…………面倒臭そうだ。



 ▲△▲△▲△▲△▲△▲



 そして瞬く間に一か月が過ぎ、気が付けば冬の中月となった。この迷宮都市ザルツは古代王国時代に王都だった頃の設備が数多く生きており魔法によって気候が制御されているので冬でも肌寒い程度なのがありがたい。


 募集枠一人に対して結構集まったので、まず最初にソロ活動で4年潜っているという19歳の重戦士(ヘビーウォーリア)を採用してみたのだが…………。



 ここの迷宮(アトラクション)に潜るソロの冒険者(エーベンターリア)のほとんどが数時間潜り、怪物(モンスター)を倒して入手した万能素子結晶(マナ・クリスタル)を換金して金が尽きるまで豪遊するか、短時間で一日必要な生活費だけを稼ぐというスタイルなのだ。


 僕らの様にほぼ毎日朝から夕方まで10時間は潜る冒険者(エーベンターリア)珍しい存在らしい。採用枠を狙う冒険者(エーベンターリア)は楽をして大金と名誉をゲット考える寄生根性駄々洩れの奴らばっかりだったのだ。

 冒険者(エーベンターリア)学校(スコリー)などがなく冒険者(エーベンターリア)は使い捨て呼ばわりされるだけあって、ほとんどの冒険者(エーベンターリア)は貧乏ながら最低限の装備を整えた軽装の戦士(ウォーリア)の状態で登録し、運よく生き残り資金に余裕が出来ると重装備になり重戦士(ヘビーウォーリア)として大型の武器をブンブン振り回す。体力(スタミナ)配分や戦闘技術などないに等しく体格が大きいと何となく強いという印象だけが独り歩きしている状態だ。


 最初の戦士(ウォーリア)は3日目の朝には来なかった。仕方なく次の候補を一党(パーティ)に入れたが、その戦士(ウォーリア)に至っては翌日には来なかった。

 失望しつつ自称斥候(スカウト)を次に採用したが、蓋を開けたら単に貧乏で装備を整える余裕がないだけの素人だった。


 半ば諦めつつも二週間(二〇日)で10人ほど組んでみたけど、師匠の下で体力(スタミナ)気合(こんじょう)が一番重要とスパルタ教育された僕らと比較すれば、そりゃ僕らの稼ぎが異常に多いなと改めて実感した。

 この町に住む多くの堕落した冒険者(エーベンターリア)たちは一日に20ガルド=銀貨20枚稼げれば、地下一階広場(ホール)木賃宿(チップ・ロキャンダー)に宿泊し、残ったお金でほどほど遊べるのである。


 結局のところ募集を打ち切り五人で迷宮(アトラクション)攻略を続けている。


 そして僕らは地下九階で鍵の守護者アツレガー・エーズビルドニズか地下十階の階段を探して彷徨っている。この階層(フロアー)での一日の稼ぎは多い時で金貨三枚前後になる。僕らの一党(パーティ)はお金の分け方を人数+1で割っている。+1の分は一党(パーティ)の共用資産だ。ここから魔法の水薬(ポーション)や装備の修理費用や雑費などを捻出する。


 多くの冒険者(エーベンターリア)から見れば一日同伴するだけで二週間(二〇日)は遊んで暮らせる金が手に入るのである。

 結局のところ顔が売れている僕らは体のよい寄生先なのであった。師匠が人前で実力を発揮したり権威をひけらかしたりするのを極端に嫌う理由がわかった気がする。



 現在いる地下九階は魔法生物(クリーチャー)と呼ばれる怪物たちが彷徨っている階層(フロアー)だ。各種魔像(ゴーレム)雨樋の魔像(ガーゴイル)が徘徊しており精神衛生的に楽な階層(フロアー)だ。

 創成魔術(クリエイト)によって作り出された生物とはいえ攻撃すれば血飛沫が上がり臓物が飛び散り、体液で身体が汚れるが、各種魔像(ゴーレム)ならそれがない。

 話は戻るが僕らが恵まれているのは間違いないだろう。

 装備なども師匠や師匠の仲間の名工バルドさんが用意してくれるから購入費用が掛かっていない。僕ら五人の装備を購入したと仮定すると百万ガルドはくだらないだろう。師匠の話では最前線の攻略組より装備面は上じゃないかと言われた。

 上質の装備に変わった恩恵は大きく、消耗品を大量に用意できるようになったり、僕個人の話だと戦闘が楽になった。

 硬革鎧(ハードレザーアーマー)時代は回避(アヴォイド)一辺倒だったのが、バルドさんが作ってくれた神覇鉱(ヴァーラル)製の板金半鎧ハーフプレートアーマーに代えた事で、鎧の曲面を滑らせて打撃を逸らす技術である逸らし(グライド)が使えるようになったり、師匠から貰った真銀(ミスリル)製の片手半剣(バスタードソード)は非常に軽くて丈夫で今までは武器の破損を恐れて使わなかった受止め(シース)受流し(パリィ)が出来るようになった。

 戦闘に余裕が出来た事で師匠の模倣マネをして近接戦闘中に魔術を行使したりといろいろと試行錯誤している。また人以外との間合いの取り方などの戦い方も掴めてきて武技(グウェラー・アーツ)を的確に使いこなせつつあり殲滅力は以前に比べて格段に上がった。



 遭遇した簡易魔像(パペットゴーレム)骸骨魔像(ボーンゴーレム)の一団を倒し、万能素子結晶(マナ・クリスタル)を回収を終え一息ついたところで斥候(スカウト)を担当する瑞穂(みずほ)手信号(ハンドサイン)でこの先の情報を伝えてきた。


「みんな、この先で戦闘が行われてるんで注意して」

 迷宮(アトラクション)内で活動する冒険者(エーベンターリア)のマナーとして戦闘中は近づかない、または遠巻きに見学が規約(ルール)である。全部ではないが冒険者(エーベンターリア)の動きは監視されているので無視するメリットはあまりない。

 曲がりくねった通路の為、先の状況が分からないが瑞穂(みずほ)は感覚が優れているのか僅かな音や振動から大まかに判断できるそうだが、どういう頭の構造をしているんだろう?


 だが、瑞穂(みずほ)の反応が良くない。その事を訝しんでいると————。 


「こっちに近づいてきてる…………大きい…………」

 そう呟いている。

 この階層(フロアー)で大きい敵で通路を移動している怪物となると————。


「やべーな。区画主(エリアボス)かよ」

 そう口にする健司(けんじ)だが、その表情(かお)は獰猛な肉食獣のソレだ。


2019-05-24 検査入院後から作業するものの調子が出ずにずるずる…………。

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