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79話 推測してみる

2020-05-04 文言を修正

「は? なにそれ?」

 板状型集合住宅(マンション)に戻り、これまでの事を皆に話した後の和花(のどか)の第一声がそれだった。明らかに不機嫌な声音だ。

「それで(いつき)くんは、でっち上げられた罪状で追われる御子柴(みこしば)の事をどうするの?」

 その目は当然スルーでしょ? と言わんばかりだ。

「冷たく聞こえるかもしれないけど何もしない」

「あら、……珍しい」

 確かに珍しいかもしれない。

隼人(はやと)がどのあたりにいるかはある程度は予想できる」

 ただし追いつくためには魔導速騎(マギスピーダー)魔導客車(マギ・ビーグル)でも手に入れないと無理だと付け加える。

(いつき)くんの考えとしては現在の位置はどのあたりだと思うの?」

「そうだね————」

 そう言いつつ僕は魔法の鞄(ホールディングバッグ)である腰袋(ベルトポーチ)から地図を取り出しテーブルに広げ持論を展開させる。


 このルカタン半島のほぼ中央に位置する迷宮都市ザルツがある。(アサド)(ノード)に長い半島の両端は断崖絶壁なので自ずと南端の港湾都市ルーベンか北端の市壁の門前街しか逃げ場がない。

 どちらも徒歩なら一週間(一〇日)乗合馬車(タグバグン)なら6日ほどで到着する。身請けした娘さんの事を考えると移動は間違いなく乗合馬車(タグバグン)だろう。

 今頃だと町に到着しているだろう。

 ではどちらの町へ移動したかと言えば北端の市壁の門前街だ。ここは雑然としていて人を探すのは難しい。ここで一晩休みを取っておそらく中原(セントルム)の方へ移動するはずだ。

「なぜ南端の港湾都市ルーベンじゃないんですか?」

 疑問に思ったようでセシリーが挙手してから質問してきた。和花(のどか)も気になるのかウンウンと頷いている。


「南ということは(スキップ)で高跳びという選択肢になるんだけど————」

 港湾都市ルーベンで客船(クロサスキップ)ないし貨物船(ボーラスキップ)に乗り込んで脱出という手段は愚策だ。何故なら(スキップ)は言わば袋の鼠だ。逃げ場がない。臨検、海賊、天候など運要素も大きい。そして移動速度がそれほど早くはない。どこかの港に着いた頃には手配書が回っていて逃走は難しいだろう。まして同伴者が荒事に縁のない公娼(トレド)の娘だ。


(いつき)兄さん…………駅舎街で魔導列車(マギ・トレイン)に乗るという選択肢はないの?」

 これまで黙って聞いていた瑞穂(みずほ)もそう言って話に加わってきた。

魔導列車(マギ・トレイン)は一番ダメだ。距離は稼げるかもしれないけど、乗車資格に身分証明書の提示がある


「あ、認識票(アーケナングスマーク)……」


 そう、冒険者組合エーベンターリアギルド認識票(アーケナングスマーク)を見せれば乗車券(チケット)は買えるけど足が付いてしまうのである。冒険者組合エーベンターリアギルド延いては上位組織の商人(マークアンテギルド)の情報伝達速度は早い。何せ専門の通信師(コーレスポンデン)と呼ばれる魔術師(メイジ)を囲い込んでいるくらいなのだ。


(いつき)くんはどうしたいの?」

 和花(のどか)がそう質問してくる。ただ彼女の中では答えは決まっているのだろうけど、一応聞いて置くよってスタンスのようだ。

「何か私たちに出来ることはないのでしょうか?」

 そういうセシリーの意見も判る。僕も何か出来ることはないかと模索した。結論は出ている。すでに僕らに出来ることはない。


隼人(はやと)の逃走先は見当がついている。飛び地であるルカタン半島を出てしまうと選択肢は広がるけど、道中の危険が少なく安住を求めるなら西方東部域の日本(やまと)皇国を目指すと思う」

「どうして?」

「政情が安定していない東方東部域は難民も多く紛れてしまえば探すのは困難だ。人狩り(トゥル・ジェンガー)としては東部域に逃げ込まれる前に捉えたいと思う筈だ」

「ん…………逃走側の心理としても目立つ交易路(トレド)経由で西に行くとは想像もつかないって事かな?」

「もちろん可能性の一つとして検討はしているだろうけど、真っ先に西(オクシデント)へ向かうのはよほどの変人だろうね。あとは運を天に任せるしかないよ」


「打つ手もないし隼人(はやと)幸運の神(ラクスタ)の加護をある事を祈ろう」

 そう言ってこの話は締めくくった。



 ▲△▲△▲△▲△▲△▲


「あいつは精神(こころ)の奥底に恐怖が刻まれた。竜人族(リル・ドラケン)はまがりなりにも(ドラゴン)族だけあってその咆哮(ロアー)は原初の恐怖心を呼び覚ます。戦いに恐怖し心が折れたんだよ。どのみち一党(パーティ)迷宮(アトラクション)に潜ることは無理だろう」

 翌日、一応念のためにと思い師匠に助力を頼みに行ったのだが素気無く断られてしまった。

「この町で迷宮(アトラクション)に潜れない冒険者(エーベンターリア)に生活の当てはないよ。まさか、お前たちが憐れんで生活費や税金を恵んでやるのか?」

 師匠は痛いところをついてきた。

 滞在税、家賃、奴隷(スクラブ)保有税、食費など結構お金が飛んでいく。今までの様に治安の悪い長屋(アパート)というわけにもいかないだろう。


「あいつはお前ら武家出身と違って先祖代々二等市民(一般市民)だろう? 結構劣等感持ってたんだよ。あいつにわずかに残っていた矜持がお前らに養ってもらうという選択肢を除外したんだろうな」

 師匠にそう言われて納得した。



 ▲△▲△▲△▲△▲△▲


 師匠宅を辞して板状型集合住宅(マンション)への道すがら健司(けんじ)と遭遇した。

(いつき)、探したぞ!」

 なにか約束でもしていただろうか?

「俺らの銅銹等級(第四階梯)昇格を宣伝も兼ねて大々的にするんで、その打ち合わせだよ」

 なにか約束がと思案していた僕に健司(けんじ)はそう言った。

「あ…………」

「あ、じゃねーよ。いくぞ」

 そういうと健司(けんじ)は僕の手を握り駆け出した、慌てて僕も走り出す。

 そして何故か近くにいた若い女性たちが数人黄色い悲鳴を上げる。


 まさかと思うけど…………。


 まさかね?


 こっちの世界にもBLあるの?



 冒険者組合エーベンターリアギルドに到着し、表彰の打ち合わせを行った。

 この町の冒険者(エーベンターリア)はとにかく働かない。

 その日暮らしが出来る程度稼げれば良いという考えなので当初予定していたより万能素子結晶(マナ・クリスタル)が集まらないのだそうだ。

 それで僕らの様に大量に納めれば昇格もするし特典もいろいろつくぞと言うことをアピールするのが目的だ。


 僕らは有名人…………顔が売れているので丁度いいというのが組合(ギルド)側の考えだ。


2019-05-19 入院中につきペースが遅くなっております。また退院後は毎日午前様コースが約束されているので運が良ければ…………__〇_バタリ

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