610話 年が明けて
明けましておめでとうございます。
相変わらず不定期更新が続きますが本年もよろしくお願いします。
外では新年を祝う花火が打ち上げられ部屋の中は様々な色で照らされている。ちなみにこちらの花火は西洋式のため円筒上のモノを打ち上げため展開方式が異なる見た目が結構異なる。
さて、必要な儀式は終わったのでここからは真面目な話だ。
とりあえず直近の予定は朝になったら魔獣討伐組が出発する。それを見送ったあとは居残り組のメイザン枢機卿から補佐役を紹介される予定だ。
司教から枢機卿に昇格した事で流石に共同体運営だけに関わる暇がなくなったためだ。
僕らウィンダリア王国使者組は飛行魔導輸送騎の準備が遅れている事もあり出発は最速でも夕刻、場合によっては翌朝になるだろう。
留守番する面子は通常業務を行うものと討伐組から追加の人員要請があった場合に派遣するための者らに分かれる。
師匠が最後に連れてきた高屋家の者らはまだ同化訓練が終わっていないので例の島で待機である。
姫将軍のところに派遣する面子も共同体拠点工事を始めるはずだ。鉄筋コンクリート製の巨大な市壁を作りつつ外側は煉瓦積みのこっちの世界風の壁とする。
作業用の魔導重騎をそれなりに導入するので春の前月には完成しているだろう。
騎士として派遣する面子の他に魔導歩騎や装甲歩兵が扱える人員も同時に常駐させる。
十字路都市テントスは危険度が少ないので戦闘員は最低限で十分である。
あとは条件付き【転移門】の設置を行い物資の行き来を楽にするくらいか。
黒の偽勇者のところに処分奴隷の娘らを送って人頭税の支払いを済ませる。
あとは…………確か冒険者組合の担当職員であるマクファイト伯爵令嬢から面会予約が入っているので対応する。
でも、どういった用件だろうなぁ?
しかし竜王国エルマイセンかぁ…………。白竜山脈の中ほど、標高875サートにある周囲が切立った崖の難攻不落の国だという。国土ははウィンダリア王国の小さめの侯爵領くらいというから平方625サーグらしい。そこに人口4万人が住む。
国に入るのに飛行魔導輸送騎か飛行できる騎獣以外でほぼ侵入不可というとんでもない国だ。
徒歩で入る場合は高さ375サートほどの突風が吹き荒れる絶壁を登攀する必要がある。
噂では標高250サートあたりまで通ずる地下街道があると言われている。流石に物資を搬入路が何処かにあるよね?
この世界の空気濃度は上空ほど薄く僕らのいた地球換算で1250サート相当である。中央アジアのタジキスタンがイメージとして近いのだろうか?
現在は人類浄化聖戦を掲げる神聖プロレタリア帝国から攻められていると言われているが実際のところは難攻不落の絶壁が攻略出来ずいるという。
和花と予定の確認をし名残惜しいとは思いつつ対面を気にして自室に戻る。
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時間は三の刻を過ぎたあたりだ。まだ日の出ではないが薄っすらと東側が明るくなってきている。
整列する一堂に簡単な挨拶を済ませる。
「それじゃ行ってくるぜ」
中型平台式魔導騎士輸送騎に搭乗した健司がそう言って各位に号令をかける。
魔獣討伐は健司をまとめ役に据えて補佐としてフリューゲル師などを据えている。
荷台には壁盾を持たせた装甲歩兵を八騎並べてある。大型の魔獣対策である。
事前に調べた情報だと魔獣のサイズは軽トラサイズと聞く。脆弱な人族じゃ攻撃を受け止められないので盾役として配備した。
漫画みたいに盾役の人族が受け止められたら良いんだけどねぇ。
人員及び荷物の積み込みが終わると二騎の中型平台式魔導騎士輸送騎が出発する。
それを見送ったあとはメイザン枢機卿との面会である。
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「こちらが私の後任の者たちです」
そう言ってメイザン枢機卿が紹介してくれた者は法衣を纏った双子の姉妹であった。一卵性双生児のようで髪型以外はほぼ区別がつかない。
「ご紹介に上がりましたミリエル・ノードです」
「同じくレオニー・ノードです。聖印を見ていただければお分かりになるかと思いますが私たちは商業の神の信徒であります」
そう言って深々と礼をする。その動作も双子らしく同じタイミングであった。
年の頃は僕と同じくらいだろうか? 若いなぁと思っていると、
「この若さで高司祭とかなり優秀である」
そう言ってメイザン枢機卿が補足してくれる。
商業の神の聖職者は多くが優秀な商人でもあり高い教養を持っているという。
これまでメイザン枢機卿が行っていた事をほぼ双子が引き継ぐことなる。
僕らが使者として赴いている間に引継ぎを済ませるとの事だ。彼女たちは癒し手としても優秀だが神官戦士としての訓練は受けていないので冒険者として連れ出すのは勘弁して欲しいとメイザン枢機卿に言われてしまった。
主要メンバーへの顔見せが終われば本日から引き継ぎ作業を始めるという。
どういった人物かについては後日個人的に話してみようとか考えつつ時間が押しているので次の目的地へと移動する。
病室に行きキーン先生に許可をもらい女の子だけを【転移門】で黒の偽勇者のところに移送した。
流石は黒の偽勇者というべきか快く引き取ってくれた。
そう。僕はついに【転移門】の魔術を使えるようになったのである。うちの共同体だとフリューゲル師に次いで二人目という事になる。当面は使える事は隠す予定だ。
黒の偽勇者のところから戻ってくるとお昼時だったのでさっさと食事を済ませようかと思っていると面会予約があった冒険者組合の担当職員であるマクファイト伯爵令嬢が既に到着していると連絡を受けた。
懐中時計を取り出すと確かに予定の時刻の八半刻前であった。
新年早々忙しい…………。
そうえいばメイザン氏は司教から枢機卿に昇格したのを忘れておりました。
竜王国エルマイセンの面積ですが近いのは佐賀県とか神奈川県くらいのサイズですね。




