幕間-67 召喚された者のその後㉕
これで本編に戻ります。
「いくよ」
覚悟を決めてそう告げ階層主の部屋へと踏み出す。徐々に扉が閉まり始め全員が入ると同じくして扉は閉じた。
程なくして奥から情報通り六体の豚鬼が現れた。やや体格がよく豪華な見た目の板金半鎧の豚鬼が豚鬼王種だろう。その隣に長衣を纏い杖を持つ豚鬼が付き従う。これは精霊使いか闇司祭のどちらかだという。残りは普通の豚鬼のはずだ。
エマが背負子を降しこれまで使わなかった凧型盾を装備した。その分武器も重鎚矛に変更している。
うちの術者たちも詠唱を開始した。
魔法には有効距離がある関係で支援魔法などは効果が発動するまでは術者から距離を開けるわけにはいかない。この辺りがゲームと違ってやりにくい。
上位種が居る事で戦意は旺盛であり後方で全体を俯瞰しながら指示を飛ばす事からそこらの豚鬼の集団より危険度が増す。
この一党では俺が斬りこみ隊長なので魔術師の七海の【不可視の盾】、精霊使いのクロニーの【影纏い】の支援を受け命令語を唱え敵陣に突っ込む。
聖職者の天音は【邪悪からの防御】で後衛を守る結界を展開する。
軽戦士の巴と槍戦士のオリヴィエがペアで豚鬼二体を引き受ける。
エマは盾を構えて後衛の壁として立ちはだかる。
幼人族のアーシアは連弩を持ち遊撃としてかく乱を担当する。
最初の一体はあっさり舞い踊る剣の錆となった。相手側の術者から魔法が飛んでこない。恐らくは闇司祭に違いない。そうなると傷の回復をされるのが困るのでまずは奴を仕留める。
二体目の豚鬼の攻撃を華麗に躱し豚鬼闇司祭に肉薄する。舞い踊る剣が長衣を切裂くが妙に硬い感触が伝わる。
こいつは長衣のしたに鎖帷子を着込んでいたのだ。舞い踊る剣の切れ味で鎖帷子は割け出血を強いたもののどっかの神に祈りを捧げ始める。
豚鬼王種もボケっと突っ立っているわけではない。巨大な肉切り包丁のような剣を振り上げ襲い掛かってくる。その一撃を大きく避けた為に豚鬼闇司祭仕留めるチャンスを失うが遊撃のアーリアの連弩の三連射が豚鬼闇司祭に突き刺さる。
急所ではなかったものの痛みで祈りを中断してしまう。
巴はと言えば華麗なステップと長剣による刺突を中心とした攻めで豚鬼を攻め立てる。もう一体をオリヴィエの三角穂長槍で牽制しつつ巴を一対一の展開を維持しようとサポートしている。もう一体の豚鬼は後衛へと向かったが棘付き棍棒の一撃はエマの凧型盾によって受け止められていた。
仲間を信じて俺は豚鬼王種へと攻撃を仕掛ける。身体が大きく豪華な見た目の板金半鎧と分厚い皮下脂肪と筋肉で意外と致命的な一撃が入らない。それに戦闘技術も結構高い。
一限ほどの攻防で体力がない俺の方は動きが鈍り始めてきており支援魔法のお陰で辛うじて致命的な一撃を避けている状態である。ただ相手も出血が続いておりかなり動きが緩慢になっている。
その時であった。牽制目的であったのかアーリアの連弩から放たれた一矢が豚鬼王種の装甲の薄い上腕に突き刺さる。気を取られた瞬間にオリヴィエの突進が脇腹に突き刺さる。痛みで頭が下がったところを俺が、もとい舞い踊る剣が見逃すはずがない。
素早く一撃が豚鬼王種の首を捉え切裂く。
頸椎を切裂けなかった為、残されたわずかな時間で最後の一撃を放とうと肉切り包丁のような剣を振り上げたまま前のめりに倒れこんだ。
「殺ったか?」
思わずフラグを立ててしまったが豚鬼王種が起き上がることはなかった。
そして奥の扉が開く。間違いなく倒したという事だ。
報酬部屋には到達記録を保存する宝珠と地上に帰還する為の【転移門】の他に地下十一階へと降りる階段と大きな収納箱がある。
まずは到達記録を行うために宝珠に触れる。これで次回からは地下十一階から探索を始める事が出来る。
収納箱は討伐報酬で罠などはない。開けてみると中身は先ほど入った冒険者の装備品と認識票の他に羽根付き槍であった。
うちで槍を使うのはオリヴィエかクロニーだが今回はオリヴィエの持たせるべきだろう。
エマの遺品などを袋に詰めさせ俺らは地上に帰還した。その後は認識票を冒険者組合に持っていき遺品の処理の手続きなどを行う。
あの冒険者らは独身であり家族の情報はないので遺品は俺らが自由にしてよいとの事であった。
もっとも体型が合わないので使い物にならず中古として売る以外にない。魔法の工芸品ですらない普及品だったし二束三文だろう。
全ての処理が終わり拠点に戻ると手紙が届けられていた。
差出人はこの大迷宮都市クーデンの有力者の一人であるオボロという大商人であった。
いい加減登場人物の紹介とかないと自分が忘れそう。




