幕間-66 召喚された者のその後㉔
文字数の関係でもう一話あります。
年が明けて高屋くんが連れてきた荷運び人の子は珍しい娘であった。本来は生まれるはずがない人族と地霊族の混血という。
処分奴隷として先日買い取った娘だそうで傷などは癒し終えており体力が回復すれば荷運び人として働けるとの事だ。見た目は近年創作物に見るロリっ娘だが地霊族の血の恩恵かタフで力が見た目と大違いであるとの事だ。
名前をエマというそうで人族のいい部分と地霊族の良い分だけを集めたような娘だ。
処分奴隷として捨て値同然だったこともあり食事もあまり与えられていなかったようなので一週間ほど休んでエマの体力回復を行った。
メンタルの方は差別をされまくり虐げられていたこともあり初日は縮こまっていたが周囲に殆ど大人がおらず最終日には最低限のコミュニケーションをとれるまで回復していた。内心の方は流石に俺には判らん。
なぜ処分奴隷だったのか気になるところだが朴訥で迷信深い連中は異物を嫌う傾向にありそれが引き取り手が居なかった原因ではと高屋くんは言っていた。
うちでは人種による差別はない。そもそもそう言う偏見がないからだ。
戦闘技術は全くない素人なので防御には力を入れることにし全身甲冑を装備させた。装備を整えて背負子に荷物を積みまくった結果、167グローまでなら普通に歩ける事が分かった。武器に関しては扱いが簡単な大鎚矛と巻上式重弩を持たせた。
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迷宮慣れも含めて出発した。
適性があったのか戦闘でも怖がる素振りがない。それどころか大荷物を背負った状態で後衛を守る壁として立ちはだかり、時には巻上式重弩で援護射撃を行ってくれた。
取りあえず高屋くんありがとうとこころの中で感謝を述べる。
エマは逃亡生活が長かったせいかどんな所でも体力が回復できるようで数日かけて地下九階を探索した際には一番元気だった。
「このまま地下十階の階層主まで行ってみようか?」
休憩中にそう提案すると体力が低い慎重派の面子ですら行ってみようという意見が出た。それだけ余力があるという事だ。
実のところ階層主を倒せれば帰還は【転移門】で地上に戻れる。
高屋くんから分けてもらった水薬もほとんど使用していないし十分攻略は出来るはずだ。
「では、行こう!」
そう号令をかけ地下十階へと向かう。休んでいる間にある程度の情報が出回っており地下十階は階層主のみで出現する敵は豚鬼軍団である事が分かっている。
地下十階に到着すると先客が居た。どうやら順番待ちのようである。
「よう。ハーレム王。また一人増えたのかよ。あんたも好きだねぇ」
そう声をかけて来た男は頻繁に俺に声をかけてくる男所帯の一党のまとめ役で名前はなんだったかな?
「まぁ~ね。別に一党に人数制限とかないしな」
報酬を頭割りする関係で人数が少ないほうが儲けも良いのだけど危険度も増す。その点うちは殆どの子が戦闘奴隷扱いなので取り分で揉める事はない。
もちろんきちんと衣食住と装備を満たしつつ、自分たちを買い戻す為の賃金や多少は自由にできるお金は渡してある。
高屋くんからも奴隷は成長する財産だから粗雑に扱うなと言われてもいる。
名前も思い出せない男とくだらない雑談で時間を潰していると両開き扉がゆっくりと開いていった。階層主の部屋の奥の扉が閉じるのが見えたので戦闘していた連中は討伐に成功したのだろう。
「それじゃお先に行ってくるわ」
名前も知らない男はそう言って一党ともに中に入っていく。戦闘はそれほど時間がかからない。恐らくだが八半刻ほどもすれば両開き扉が開くはずである。
ところが二限ほどで両開き扉が開き始めた。室内をよく見ると奥の扉が閉じたままであった。
「あいつら全滅したのか…………」
もう一つの可能性もある。基本的に階層主は生か死だが[帰還の水晶柱]などの使い捨ての魔法の工芸品で脱出できる、一応だが高屋くんから一つ預かっている。
一応振り返りみんなの様子を確認すると彼女らは俺を信じているのかそれとも覚悟が決まっているのか入る気満々であった。俺一人が不安だったようである。
舞い踊る剣は憑依型の武器で命令語を唱えた持ち主を達人並みの技量を与えます。ただし身体能力の底上げはありません。




