表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
677/678

602話 何事も予定通りにいかない③

10月に間に合った(間に合ってない

「なるほど…………ま、無難な選択ですな」

 目の前にいる初老の男性がそうこぼした。ここは法の神(レグリア)の神殿の奥にあるバイラン・オルネージュ最高司教(アークビショップ)の執務室だ。彼はアルマの後見人であり上司である。


 僕らはアルマがうっかり転んで流産したという形に話を持ってきたのである。医者(ラーカーリー)も誤診で評価を崩すことなく良かろうとの結果だ。これでアルマを自由に連れ歩けるという訳である。ちなみに流産にしようと決めたのは和花(のどか)であった。アルマにドジっ娘属性が付くが本人が気にしないとの事なので無難だろうとなった。ただ流産と知った人たちが挙って悲しそうに声をかけてくるのがちょっと申し訳ないとも話していた。


「ところで高屋(たかや)殿は三人目や四人目は考えないのですか?」

 純粋にオルネージュ最高司教(アークビショップ)猊下の善意なのだろうとは思うがけどそんな事を言ってきた。

 理由は分かっている。富裕層では男が稼ぎ女は家の女主人として使用人(ディペンデント)を管理し来客を持て成すのが役目だ。

 仕事もできて独立心もある和花(のどか)もアルマもその役割を振るには勿体ない女性である。結婚すると共同体(クラン)の宿舎住まいという訳にもいかなくなるのでそうなると家の管理を任せるに足りる人物が必要となる。代理人を立てるという手もあるけどこの世界では歓迎されない。

 この世界は性悪説が根付いており人は生まれつきは悪だが、成長すると善行を学ぶと考えられている。代理人を立てると最初はまじめに仕事をするが多くの者は特権に目がくらみ悪さをする。人事権の乱発や横領とかだね。

 法の番人でもある法の神(レグリア)聖職者(クレリック)として数多くのそういった者たちを裁いてきたであろうオルネージュ最高司教(アークビショップ)猊下の言葉ではあるが…………。


 この世界での結婚は互いを尊重し家族愛を形成するがビジネス的側面もある。恋にラリって結婚するものの多くは破滅する。

 恋は盲目と言う様に視野狭窄に陥るのが結婚後にだんだん現実が見えてきて絶望するのである。

 神の前で永遠の愛を誓う関係で浮気は社会的に抹殺されるし離婚は白い結婚以外はまずは許されない。性欲やトロフィ気分で複数の女性と結婚はまずできない。全員が賛成しない限りは重婚は成立しない。


 和花(のどか)もアルマも己惚れ抜きに僕に好意は持っている。そのうえで僕の役に立つ人物であれば賛成派でもある。僕は愛情は独占したい派であり一人に愛情は注ぎたい派である。奥さんは公平にとは言われているが究極の選択として誰か一人を選ばなければいけない事態となった時に全員を守るなんてご都合展開はない。そうなると僕は必ず和花(のどか)を助ける。それを承知できるのであれば賛成してもやぶさかではと言った感じで押し込まれたのである。


 そしてここにきてさらに増やす?


「ところで三人目の必要性は理解しましたが四人目とは?」

 これ以上増えてたまるかという意味も込めて問う。

「当主や家人への護衛役ですよ」

 そう答えたのであった。この世界では神は妄想の産物でも単なる権力の象徴でもなく実在する事もあり神の前で愛を誓った事が一種の呪いとなり裏切ることはないと信じられている。血縁とか血統を重んじるのもそのあたりにある。

 信頼できる護衛は居るかもしれないが何かの拍子に裏切る事もあると考えるのがこの世界の住人だ。

 こっちの世界で生きていく以上は自分の考えが絶対であり他人に強要するといった教養のない者たちと同列な事はしたくはない。

 護衛役となるとやはり瑞穂(みずほ)か。正直言えば重婚するならそうなるだろうなとは思っていた。和花(のどか)もアルマもそれとなく匂わせていたし。


 僕が首を縦に振れば決定だろう。


 僕的には義務で閨を共にするのは勘弁と思っているので瑞穂(みずほ)とは白い結婚で終わっても良いのかなとも思っている。そうなると家を任せる三人目の存在だ。


 両隣に座って黙って話を聞いていた和花(のどか)とアルマの方を交互に見るが三人目に関しては候補が居なさそうである。

 和花(のどか)を家の主として代理として家令(プロキュレーター)侍女長(プリンシパリズ)に家を任せる事も可能ではあるが同等の権力を持つがために権力争いなどを始める事が多く推奨はされていない。


 取りあえず現在は婚約(プローリオ)期間とし結婚は終末戦争が終結してから考えようという事で三人目については棚上げとなった。


 そして懸念していた偽装の口裏合わせとして渡した魔眼(パノンジャハット)は戻ってこないので申し訳なく思ったのかオルネージュ最高司教(アークビショップ)猊下は人手を手配してくれることとなった。

 ひとりは真なる聖女と呼び名も高いアルマの付き人という形で若い有能な侍祭(アコライト)を二人、他に傭兵(マーセナリー)共同体(クラン)という事で様々な神殿(テンプラム)に声をかけ修行と称して若い聖職者(クレリック)らを癒し手として派遣してくれるとの事であった。


 ま~初歩の【軽傷治療キュア・ライト・ウーンズ】や【精神力譲渡トランスファー・メンタルパワー】、【体力回復(レキューパーレア)】の使い手が増えるだけでも大助かりではある。


 その後は細かい話を詰めて僕らは帰宅した。




 翌日来客があった。

 従軍司祭として戦の神(ゲラン)神官(モンク)が六名派遣されてきたのである。

 その後は僕は魔法の工芸品(アーティファクト)の作成と鍛錬に没頭し約束通り各神殿(テンプラム)から様々な人材が派遣されてきた。

 また従軍魔導機器技師(インジグナー)として魔導機器組合(マギテックギルド)からも頼んでおいた装備と共に人員が派遣されてきた。


 そして一週間(一〇日)が過ぎた。

白い結婚とは式の後に一度も肉体関係がなかった夫婦を指す。契約による偽装結婚の場合のみ許される。

重婚の場合は奥方間の序列は存在するが職分を犯してはならないという決まりもある。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ