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579話 調査してみる④

 会議後解散し翌朝。


 朝の鍛錬を済ませて例の島へにて闇森霊族(ダークエルフ)のアドリアンらの参加を依頼するために出向いたが…………。


「なんだよ。俺だけじゃ不満なのか?」

 アドリアンは不満そうに言う。めでたく子供が生まれたので連れていくのは申し訳ないかと思ったのだけど彼らにとって子供は氏族(クレーネン)全体の宝であって人族ほど()()()に固執しない。

 問題は…………。

「僕としては本命はシャルリーヌだったんだけどねぇ」

「なんだよ。俺はオマケか?」

「アドリアンは子供が生まれたばかりだし断られても仕方ないかと思っていたんだよ。それに欲しいのは聖職者(クレリック)だし」

「あいつは自由の女神(バポータ)の信徒だけに気まぐれだからな。あいつの興味を引けなかったんだ諦めろ」


 自由の女神(バポータ)の信徒は気のままに生きる。彼の興味を引けなかったのだからと諦めた時だ。唐突にアドリアンが「あ、そうだ」と手を叩く。


「なに?」

半豚鬼(ハーフオーク)らのお世話係の女がいるだろ? あの中に匠の神(トーラス)の信者がいたぞ」

匠の神(トーラス)って、確か…………」

 職人、それも細工師(レパラトー)らが信仰する神だっけ? でも元野盗(マリング)だよ? 信仰心とかなさそうじゃ…………。


「よく分かってなさそうだ」

 アドリアンはそう言って匠の神(トーラス)という一柱の神について説明してくれた。匠の神(トーラス)は一般的には細工師(レパラトー)の守護神とも言われているが、手先の器用さを売りにするのは細工師(レパラトー)だけではない。数は少ないが手練師(トレーナー)所謂(いわゆる)盗賊(シーフ)の中に信者がいるとの事だ。彼ら曰く鍵開け職人と(うそぶ)くらしい。


 アルマも言っていたが神様って意外と大雑把というか大らかというか…………。奇跡が使えるならいいか。

 取りあえずあってみる事にした。高司祭(ハイプリースト)級なら採用なんだけどなぁ…………。


 ▲△▲△▲△▲△▲△▲



「いいですよ」

 半豚鬼(ハーフオーク)らの生活拠点に赴き目的の人物を見つけたのでざっくりとこちらの事情を話したらあっさりと承諾された。仕事内容は伝えたが報酬関係はまだだったんだけど…………。

「そんなに意外ですか? そもそも貴方は私たち犯罪奴隷(クリミネ・スクラブ)を見受けしたんですから好きに命じればいいんですよ」

 どうやら表情(かお)にでていたらしい。たしかに犯罪奴隷(クリミネ・スクラブ)には人権なんてものは存在しない。処分奴隷アービトリオ・スクラブ以下の扱いだからなぁ。

 そうは言っても僕は日本(やまと)帝国人だからこっちの世界の倫理観とかはちょっと違和感を覚えてねぇ。


 それも言っても詮無きことなので親分であったヒルダに許可をとって連れていくことにした。匠の神(トーラス)小神(マイナー・ゴッド)と言われる所以が信仰するものの大半が聖職者(クレリック)気質ではなく恩恵が欲しい職人(クラフトマン)なせいか神殿もほとんどないし聖職者(クレリック)自体もかなり希少だったりする。

 その中でこのプリマヴェーラという女性は手練師(トレーナー)であると同時に高司祭(ハイプリースト)級の聖職者(クレリック)でもあった。

 なるほど、組織内に高司祭(ハイプリースト)が居れば傷の回復なども早いだろうし野盗(マリング)集団としては凶悪だったのも分る気がした。


[転移門の絨毯カーペット・オブ・ゲート]で拠点へと移動し念のため闇森霊族(ダークエルフ)のアドリアンには[変装の首飾りネックレス・オブ・ディスガイズ]を貸し出し肌を白く変えてもらった。何処かに居るであろうハーンを呼びだしその間にプリマヴェーラの装備を見繕う事にした。


 とは言っても女性用装備の良し悪しは僕には判らないので暇を持て余していた瑞穂(みずほ)に頼むと同時に実力を確認するようにと頼む。


 ▲△▲△▲△▲△▲△▲


樹さん(ボス)。お呼びとか?」

 待つ事四半刻(三〇分)ほどだろうかハーンが息をきらせてやってきた。呼吸が落ち着くのを待ち用件を告げる。

「アレはいまどこにある?」

 するとハーンは無言で真下を指し示す。さすがに用意が良いな。

 次元潜航艦ディメンシア・プロンゴ・スキップの事だ。あれは潜入にぴったりの装備なんだよね。

「どっちを持ってきてる?」

(オルク)っすね」

 逆戟改級潜行艦サジターニア・インバーサの事だ。小回りも利くし元々が揚陸艦(アパルサズ・スキップ)としての運用がメインなので今回には相応しい。ただ…………。

「一応(ホエール)もあるっすよ」

 完璧であった。逆戟改級潜行艦サジターニア・インバーサの欠点は索敵能力の低さであった。速力と突破力と隠蔽力は優秀なんだけどねぇ。


 ハーンには地上部の探索などには同伴させられないがその魔導機器(マギデバイス)知識は必要な時が来そうな気がするので同伴させることにした。


 調査目的の人員やら幹部連中を呼び寄せ「出発は十一の刻(二二時)とする」と告げ各自には支度時間とした。


(いつき)さん。ちょっといいですか?」

 そう言って袖を引くのはお留守番担当のアルマであった。

「どうしたの?」

 一応偽装妊婦さんなんで連れて行ってとかは対外的に困るぞとか思っていると、「これを」と言って報告書(レポート)を差し出してきた。

「ヴァルザスさんからです」

 師匠からねぇ…………。

 少し考えこんでいると、「許可をもらって先に読ませてもらいました」と告げざっくりと内容を告げてくれた。

 最新の世界情勢の他に故あって師匠らと暫く連絡が取れなくなること。物事の優先順位を過たず行動する事との事であった。


 優先順位? 

 報告書(レポート)を読めば解るのだろうか?

「アルマはこの優先順位って何かわかる?」

 そう問うと少し言葉に詰まったもののこう回答した。

「恐らく人命(いのち)の優先順位かと…………」


 嫌な選択肢を持ってきたなぁ…………。師匠がわざわざそれを忠告するって事は共同体(クラン)にもそれなりに被害が出るかもって事?


 いや、違うな。


 でしゃばるなら共同体(クラン)にも、いや近しい人にも被害が出るぞという事かな。


 それは困るなぁ。


 アルマには「ありがとう」と礼を述べ部屋に戻る。

滅多に管理画面見ないのですが気が付いたら見知らぬアイコンが…………。イイネありがとうございます。

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