570話 拠点となる土地を求めて来たのに
領主の住処は国境沿いという事もあって城塞、いわゆる武骨な外観の防衛城であった。日本人の感覚として欧風の城と言えばドイツのノイシュヴァンシュタイン城とかを連想するが、こっちの世界ではそれらは装飾城と呼ばれ王都など内地の戦闘と縁のないような地に建てられる権威の象徴のようなモノをさす。
その城塞の一角に全長10サート|にもなる飛行魔導輸送騎の駐騎場が存在する。
他にはいくつか並ぶ大型の倉庫は恐らくは魔導騎士の格納庫だろう。執政の場である主城は塔型で煉瓦造りだ。かなり古い建築様式である。
城壁などの高さが1.25サートくらいに見える。魔導騎士などの襲撃は想定されていない。恐らくは魔導騎士が普及される以前に建築された歴史ある城塞なのだろう。
訓練中の兵士の動きを見るとかなり練度が低いように見える。彼らの訓練とか大変そうだ。数人ほど全身甲冑を纏った者が居る。間違いなく臣下騎士である。全身甲冑は騎士の制服と言っても過言ではない。
兵士の訓練を監督する彼らも欠伸をかみ殺しておりかなり弛んでいると言える。うちの共同体じゃ解雇だ。
「恥ずかしながらこんな現状だ。どうかよろしく頼む」
兵士らを観察していた僕に気が付いたのか姫将軍閣下がそう言って頭を下げる。慌てて御付きの臣下騎士たちがおやめくださいなどと割って入るが姫将軍はお構いなしである。
ちょっと好感度が上がった。
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係留作業も終わり地に降り立つと姫将軍自ら軽く城塞内を案内をしてくれた。古代都市ではないようで自動修復能力などはないようだ。水は井戸から組み上げる方式で下水の方はぼっとんである。
都市機能はなく河川を挟んで都市部が存在する。
その川幅はせいぜい5サートだが水量は豊富だ。石造りの橋梁を渡り城下町へと繰り出す。
領都はそれほど大きな都市ではない。中原では領主の館は軍事施設も兼ねているので市街地は民間人のみだ。また多くの都市は人口が千人から五千人程度だからだ。この領都クリスティアーナの面積だってせいぜい帝都ドーム五個分くらいだ。
ここは王族が管理するだけあって男爵領でも人口が多いほうなので結構大きな都市なのだ。それでも都市内部に軍事施設である城などを配置するスペースはない。
閣下と街中を歩くと人々が気軽に声をかけてくる。それに対して閣下は気軽に応じている。本当にこの姫は規格外な人である。露店に並ぶ商品は乾燥野菜が多い。基本的に農家は税の対象となる主食を生産の主軸に置き余裕があれば野菜などを育てる。十字路都市テントスのような巨大都市のように農奴に野菜だけを作らせるなどの余裕がないのだろう。
多くのものは他所からの輸入品ってこともあり物価は十字路都市テントスに比べると高い。
巡回する衛兵は市民に対して気さくな感じではあるがあまり訓練はされていない印象であった。街中の凡その店舗などを把握した後に市壁の外へと出た。都市の外は領主の住処を兼ねた城を除けば周囲は見渡す限り平地である。
そこへ一人の兵士が慌てて駆け込んできた。
「失礼いたします。迷宮から怪物があふれ出し数の多さに苦戦しております」
そう報告したのだ。
事前調査では迷宮はなかった筈なので最近増えているという迷宮宝珠を使った所業だろう。誰かは知らないけど面倒なことを…………。
姫はいくつか質問を投げ兵士は的確に受け答えしている。横で聞いていると溢れて来た怪物は迷宮産赤肌鬼の大群のようだ。
学習していない迷宮産赤肌鬼であるなら程なくして沈静化するかな?
ところが閣下は現場に赴くと宣った。そして僕らにも同伴して欲しいと頭を下げるのであった。
そこまでされたら断れないのでついて行く事にする。面倒なんで攻略するかと思いながら。
帝都(東京)ドーム5個分だとおおよそ幕張メッセくらいですね




