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568話 移住説明会

 宰相閣下から依頼を正式に受領した日の夜に共同体拠点(クランベース)に在籍している元防衛軍のおじさんら約200名を集めて今後の話などを含めて説明を行った。

 その際に僕らがこの世界では異邦人(ストレンジャー)として人種的に異なる事を話し結婚して子供が欲しい場合はかなり確率が低い事、ただし西にある日本(やまと)皇国の人であればそれなりに確立が上がることなどを説明した。そして出会いの機会が多い場所への勤務地の移動の話など多岐にわたった。


「いま説明した通りだ。移住希望者は挙手して欲しい」


 最初はざわついていたが程なくしてポツポツと挙手し始めた。その数は128名であった。多くは20代の独身者である。残った者の多くは元の世界に妻子を残した30代ばかりである。

 この後に島にいる後発組や運搬業務(トラスポーティ)に出ている者らは後で意見を聞くが同じような割合になるだろう。こっちの世界だと適齢期を過ぎると途端に結婚相手として見てもらえなくなる。稼げる男であればマシであるがそれでも擦り寄ってくるのは財産目当ての奴ばかりだ。ワンチャンあるとすれば未亡人を娶るという手もある。体力勝負の仕事が多く女性は稼ぎにくいので苦労人が多いからだ。


 医療は未だに民間療法が跋扈(ばっこ)しヤブ多い。慈善活動する者もいるが常時行列で診察してもらうのに数日待ちとかもある。そして薬も結構高価でお手製の為に数も多くない。風邪とかでも悪化しただけでぽっくり逝く。

 異世界ものの定番の魔法を携わる神殿や魔術師(メイジ)の治療は非常に高価だ。軽症の治療ですら金貨一枚、独身男性の最低限の一か月の生活費が飛ぶ。保険制度もない。年金もないので貯蓄をしつつ将来的には子供に面倒を見てもらう事になる。この連らを断ち切るのは容易ではなく為政者も推奨していない。

 なぜなら家畜(国民)を生かさず殺さずが理想的だからである。知恵や知識が付き生活に余裕が出来始める政治などに関心を持ったりし始める。僕らのいた世界でもとある権力者言った「国民は馬鹿である事が望ましい」と。


 神の前で愛を誓いあう為に離婚はもっての外で浮気は社会的に殺される。こっちの世界の住人に日本(やまと)帝国人的な恋愛観を押し付けても恐らく理解しがたいだろう。

 性欲処理やファッション感覚でパートナーを変えたいのであれば結婚しないのが一番だが…………。あとは富裕層がよくやる手口で契約奴隷コントラクト・スクラブとして愛妾(マーレトリクス)契約を行ったり妓館(ブロセル)に通うという手段がある。


 ま、他人の心配をしても仕方ないか。



 次に移住先であるクリスチアン男爵領の領都クリスティアーナの状況であるが実は詳細はまだわかっていない。いちおう[神の視点ポント・ビスタ・ディ・ディウス]を用いて観察した限りでは王族が納める(トレス)だけあってそれなりに設備は整っている。少なくても街路は奇麗に整えられた石畳であり住宅は自身と縁がない地域のせいか煉瓦積みの多層階住宅が多く窓などに硝子は用いられていない。

 薄く透明度の高い板硝子はまだ普及率が低いから仕方ないね。


 ただ感心すべき点は大通り限定だがガス灯が実装されているところと自然流下式水道が整備されていた事だ。領主の館の隣にある水源となる人工的に作られた貯水池、恐らく貯水池の底に僕らも使っている[水精霊の宝珠オーブ・オブ・ウォーターエレメンタル]があるのだろう。

 そこから地下の水道桝を通って各所に設置してある共同井戸から組み上げる方式のようだ。井戸自体も手押しポンプが設置されており生活感は江戸末期から明治初期くらいだろうか?

 十字路都市テントスのように各家庭に上水道が設置されてはいないが割とマシである。下水の方は富裕層区画は下水道が設置されているようであるが庶民向けの区画は共用便所(バグノ・コミューン)を使い排水などは共同水場にある排水桝に捨てるようだ。

 ただし下水の処理などに関しては十字路都市テントスなどのように都市機能を用いて真水レベルに浄化されているかは分からなかった。


 食事に関しては日本人に馴染みのあるメニューっぽいものは存在するが、そもそもの話として日本で食べ慣れた食材が存在しない。大根(イアポニカー)馬鈴薯(カートフェル)玉葱(マイス)茄子(メランザナ)人参(カーロット)小麦(ウィージズ)短粒米(コルタリッソ)ですら食にこだわりのない素人でも違いが分かるレベルで異なる。

 それは仕方ない事だろう。土壌や気象条件などが異なるのだから。

 日本で食べた食材が手に入れば自動工場(ファブリカー)で複製する事も可能ではあるが…………。


 あ、もしかしたら彼らが持ってきた物資に何かあったかも?


 ま、それは後で調べるとして、食事問題やこっちでの生活に関しては流石に慣れたとの事で大きな不満は出なかった。


「移住希望者には向こうで教導業務(ドーセンソパズ)を請け負ってもらう。対象は領都軍の正規兵だ」

 こっちの軍隊は警察権とかもあるが基本的には訓練されているという印象が薄い。戦争に備えていないので彼らも平和ボケしている。

 凶悪犯相手なら最悪の場合は高位の冒険者(エーベンターリア)に依頼を出したりもするので日本(やまと)帝国の警察や軍隊に比べるとぬるま湯レベルである。

 働き次第では世俗騎士(リッター)としての登用や領軍の幹部候補としての採用もあると告げる。また文官が不足しているのでそちらの方面でも希望者が居れば採用すると説明した。

 いちおう姫将軍バンフリアンサー・オルグメンとはそう言う話で纏まっている。


「年明けの新年祭が過ぎて落ち着いたら移動を開始するので各自準備しておくように。解散」


 解散を宣言し僕はと言えば次の目的地である例の島へと転移した。

事務員は男女どちらにも一定の需要があるが基本的に高学歴以外は採用されない。女性だと給仕、調理師、使用人m服飾系の職業が定番。

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