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61話 予想外の展開①

2023-09-16 文章の一部を修正。

「この間はきつい事を言って済まなかった」

 朝一番に健司(けんじ)隼人(はやと)板状型集合住宅(マンション)に訪ねてきた。


 扉を開けた途端に、

「この間は言いすぎた。すまん」

 隼人(はやと)が頭を下げたのだった。 

 悔しい。

 こっちから頭を下げるつもりだったのに先にやられてしまった。

「いや、僕の方こそ予期せぬ収入に浮かれてて自分を見失っていたよ。助かったよ。ありがとう」

 実際あそこで隼人(はやと)から指摘を受けなければ、意識誘導されて全財産使っていただろうからね。

「それよりこんな時間にどうしたんだい?」

 二人が訪ねてきた時間は三の刻(六時)を過ぎたばかりなのである。冒険者(エーベンターリア)であれば活動している時間ではあるが、あと数日は自由時間のはずだ。

「あーそれな。ヴァルザスさんから言伝ことづて四の刻(八時)までに屋敷に来いってさ」

 師匠が? なんだろ?


「それはそうとだな…………後ろの金髪巨乳美少女は誰だよ」

 そう小声で健司(けんじ)が聞いてきた。多分食いついてくるだろうなとは予想していた。

 あえて日本(やまと)帝国語で聞いてくるあたり空気は読めるようだ。

 二人に昨日の出来事を説明すると、

「「なんて羨ましい…………」」

 二人とも口を揃えてそんな感想を漏らした。 

 羨ましい? 結構気を遣うんだけどねぇ…………。



 支度を済ませ師匠の屋敷までの道中でセシリーに健司(けんじ)隼人(はやと)の事を紹介し、ここにいる六人で迷宮(アトラクション)入ることを説明する。

 まずは軽く流しながらセシリーに手信号(ハンドサイン)や用語を覚えてもらうのと装備を整える事、あとは実際に動いて見ながら調整しようって話になった。

 必要な話が終わるタイミングで師匠の屋敷に到着した。もっとも広大な敷地なのだが…………。


「なんか人のざわめきが聞こえない?」

 最初に異変に気が付いたのは和花(のどか)だった。

 顔パスで敷地に入りしばらく歩いていると確かにかなりの大人数の声が聞こえる。しかも日本(やまと)帝国語だ。

 声のする方へと早足で向かうと————。


「おい、何人いるんだこれ?」

 隼人(はやと)が指差した先には競技場よりはるかに広い空き地あり、そこにいるのは黒髪の老若男女でその数は数百人に上る。

 まさかとは思うけど、師匠がここらの奴隷を全部買い取ったのか? でもその意味は?

 そう考えていると————。

「早かったな」

 いつの間に近づかれていたのか声の主は師匠だった。


「先生…………まさかとは思いますが、この人数を身請けしたんですか?」

 和花(のどか)の言いようはそんな慈善家じゃないからありえないと言わんばかりの言い方だ。間違っていないけど。


「地位も名誉も金もある人がスポンサーだ。俺は依頼されて実行しただけだよ。日本(やまと)帝国語が話せる者すべて探し出して可能な限り連れてきた」

 なんでも既に適正額で買い取られた奴隷(スクラブ)を倍額で買い戻したりもしたらしい。

 ただすでに迷宮(アトラクション)内に入ってしまった者など行方の分からない者は断念したらしい。

 あとは心身にダメージを負った者もいたそうだけど面倒だからそのまま送り返すらしい。


 既に送還作業は始まっているらしく、ここに残っているのは順番待ちの者たちと、僕らが身請けした年少組くらいだ。

 年少組が後回しになったのは、彼らが僕らに礼を言いたいと言い出した為だそうだ。

 師匠の集団(クラン)の面々が次々と皆を誘導して送還している中、僕らの存在に気が付いた年少組が駆け寄ってきた。

 口々にお礼を言われ、自分のしたことは無駄じゃなかったんだよね? と自問したりしていた。

 中には元気が有り余っているのか一緒に冒険したいとか言い出す子たちもいたけどそこは和花(のどか)が丁重に説得をしていた。だが「中等部を卒業して、まだ冒険心が残っていたらその時はおいで」などというのはどうなんだろうか?

 嵐のような勢いで年少組が去って行って師匠が僕らに小袋を渡してきた。

「これ、なんです?」

 聞いてみたものの音と重さでお金だと分かった。だが意味が分からない。

 頭にクエスチョンマークを浮かべていると、師匠が答えを述べた。

「それはお前たちが身請けした子たちの代金だ。依頼人が全額払うとの事なんで、それはお前らに返す」

 なんと戻ってきてしまった。でもこんな太っ腹な依頼人とか誰なんだろう?


「依頼人を紹介する」

 師匠がそう言うと立ち位置をずらす。

 そして見えたのはこちらに歩いてくる和装の初老の男性だ。


「あっ」

 目のいい瑞穂(みずほ)が真っ先にその男性の正体の気が付き声を上げる。

 目を細めてみると…………。


「父上…………」


 居るはずがない人物がここにいることで僕は混乱している。まさか僕を連れ戻すためにここへ来たのか?

 近づくにつれてその人物が間違いなく高屋(たかや)家当主である高屋(たかや)護守(ごのかみ)森和(しんわ)宿禰(すくね)将成(まさなり)であると分かった。2.5サート(約10m)の位置まで来ると立ち止まる。


 父は左右の手に木刀を一振りずつ持っており右の木刀を僕に投げ寄越した。

 慌てて受け取る僕をよそに父は木刀を正眼に構えこう言った。

「構えろ」

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