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565話 条件とは

名誉騎士(ホノリス・リッター)をお受けするにあたって一つお願いを聞いていただけませんか?」


 そう切り出したのには理由がある。

 うちの共同体(クラン)の主力は元防衛陸軍の20代から30代の独身男性たちだ。彼らも家庭を持ちたいようなので出来れば引きこもり生活はしたくない。他の面子と言えば冒険者組合エーベンターリアギルドへの教導員(ドーセンズ)として派遣している現地人の二十代の冒険者(エーベンターリア)が多いが彼らは身を固めたくて危険な業務(ネゴティアム)には後ろ向きな者が多い。

 元防衛軍出身者だが師匠の話だと中原(セントルム)西部域の日本(やまと)皇国人となら混血もそれなりに可能だろうとの事だ。気に入らないから共同体(クラン)を解散して逃げるとしても彼らの身の振り方くらいは考えておきたい。

 逃げるのは簡単だけど逃げた先に未来が見えない逃亡だけはしたくない。


 今は存分に貯蓄して自分たちの将来は自分たちで決めて欲しい。ただコネはあってもいいと思うので姫将軍バンフリアンサー・オルグメンの庇護を受けようかと思った次第である。


 僕ら共同体(クラン)ごと取り込もうと画策している王侯貴族としては来るべき終末戦争後の世界の為に一人でも多くの優秀な戦闘員が欲しいし優秀な戦闘員の遺伝子を継いだ子供が欲しいので虎視眈々と狙っている。この世界だと子供が出来ない場合は奥さん側に問題があると信じるものが多い。

 いらん不幸は避けたいかなとも思ってる。


 後ろ盾が弱い僕らが権力者に楯突くにはそろそろ限界ではと考え可能な限り自分たちをよい条件で売りたい。師匠の存在は分かる人には後ろ盾として機能するけど多くの貴族などには効果が薄い。


 そこで思ったのが姫将軍バンフリアンサー・オルグメンからの提案である名誉騎士(ホノリス・リッター)であった。貴族社会では最下級扱いだろうが大陸最大の国家の王家が後ろ盾となる。もっとも臣下騎士(リテナー・ナイト)ではないので笠に着て偉ぶったりゴリ押しとかはできない。臣下ではないとはいえ自分らを立ててくれた人物に恥をかかせられないので自重は必要だ。

 貴族社会で恥をかかせると大変な目に合うとアルマやメイザン司教(ビショップ)にも散々言われてきた。


「それで私に何を望むのだ? 私は王家で継承権も低いし貴族らしくない。建前として女男爵(バロネス)でもあるが出来ることは少ないぞ」

 姫将軍バンフリアンサー・オルグメンは自虐的な笑みを浮かべつつそう返してきた。

共同体(クラン)の構成員の中から希望する者が居たら男爵領で召し上げていただきたい」

 所詮僕らは冒険者(エーベンターリア)である。騎士(リッター)衛兵(セントリー)、または文官(グワシフィル)として登用して貰えるのであればと考えたのである。別に高い地位を要求したわけではないし能力がない者をごり押しで登用してくれとお願いしたわけでもない。


 これでダメなら売り込み先を考えるか例の島に引きこもりかな?


「ホントにそれだけでよいのか!」

 共同体(クラン)に対しては俸給は発生しない。同時に共同体(クラン)に対して命令権もない。ただ姫将軍バンフリアンサー・オルグメンの為にある程度は便宜は必要であるが貴族の婿養子だとかにされるよりは遥かにマシである。


「それで構いません。うちは結婚適齢期の男性が多く定職に就けることが望みです」

 そう答えるておくが実はもう一つ理由がある。姫将軍バンフリアンサー・オルグメンのクリスチアン男爵領は中原(セントルム)の西南部域にあり日本(やまと)皇国に近いのだ。


「それとこれは…………厚かましいお願いなのだが…………」

「結婚してくれとかは嫌ですよ」

 やや被せるようにお断りした。

「そ、そんなに拒否られるとそれはそれで傷つくのだが…………」

 そう言ったあとにに咳ばらいをしこう続けた。

「私をここの訓練に加えてもらえないだろうか?」


「御付きの臣下騎士(リテナー・ナイト)位いるでしょうに」

「あんな甘やかされた環境で育った木っ端共では修練にならん」

 そこまで酷かっただろうか? しばし考えた後に了承した。この程度で機嫌が良くなるなら安いものである。

 すると分かりやすいくらいご機嫌になり魔法の契約書(コントラート)を交わそうと言い始めて懐から印章(スティンピル)を取り出す。




 ▲△▲△▲△▲△▲△▲




「では、アルマリア・ミル・レグリアム審議官(スタドトラット)の名に置いて双方の契約が成ったことを認めます。法の神(レグリア)の御名のもとに、その代理として命ずる。互いに条約を破ること(あた)わず。【誓約(ミアン)】」

 法の神(レグリア)の高位の聖職者(クレリック)が行使できる奇跡(ホーリー・プレイ)たる【誓約(ミアン)】は一種の呪いであり約束事を破ろうとした場合に死んだ方がマシというほどの耐え難い激痛が襲う。


 魔法の契約書(コントラート)の写しを仕舞い込みつつ姫将軍バンフリアンサー・オルグメンが嬉々として「明日から通うからな」と言って軽やかな足取りで帰っていった。



 まー双方納得の条件だし後は姫将軍バンフリアンサー・オルグメンがポンコツでない事を祈ろう。




 客も帰り一息入れたところで冷め切った青茶(キィーアル・ティー)を啜っていると和花(のどか)が師匠から預かった[真実の瞳オカリー・バーリタティズ]を貸して欲しいと言ってきた。

「まさか自分に使うの?」

「まさか。少なくても(いつき)くんが損する事にはならないわ」

 暫し迷ったが[真実の瞳オカリー・バーリタティズ]を預けた。

[真実の瞳オカリー・バーリタティズ]を受け取った和花(のどか)は側にいる審議官(スタドトラット)としての正装のを身に着けていたアルマを上から下まで何度か眺めた。そして、

「アルマ。明日は一緒に法の神(レグリア)の神殿に行ってくれる?」

 そう問うのであった。

「構いませんよ。私も用事がありますし。いつ頃行きましょうか?」

 そう答えて明日の予定などで二人して話始める。僕は蚊帳の外だ。



 この日はこれ以上イベントが起こらず翌朝、三の刻(六時)ごろ和花(のどか)とアルマを送り出すと同じようなタイミングで姫将軍バンフリアンサー・オルグメンがやってきた。早すぎだろ!















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