563話
明けましておめでとうございます。
本年も宜しくお願いします。
2025-06-16 誤字脱字の修正&爵位が間違っていたので修正
なんか色々あったせいか今後の方針に揺らぎというか何をすべきかという点で定まらなくなってしまった。
「樹。ひとつお前の悩みを解消する策を授けよう」
どうすべきか迷っていたところ黙ってついてきていた師匠がそんな提案をしてきた。
「どの悩みです?」
悪い話ではないだろうという事で聞いてみる事にした。
「組合に登録した個人情報は基本的に本人が開示しない限り第三者が知ることはない。そこでだ――――」
師匠の話は確かに有効な手に思えた。それは僕らがこの世界の住人ではないという事を公表するという事だ。最初はなんの事だと思ったのだけどよく聞くとこの世界の人と交配可能な生物はいくつか存在する。学問的には魔獣などと呼ばれ外敵扱いされる海洋人面鳥、牛頭鬼、裸婦半蛇、二股半蛇、黒の神に組した事で変異していった元人族の豚鬼。
他には妖精族の森霊族、闇森霊族、炎霊族、水霊族、氷霊族、風霊族。
人族の中原民族、南方民族、北方民族、東方民族、砂漠の民、獣耳族、古代人、神人族、山岳民族、海洋民族が存在する。
なお半森霊族などは種としての数が居ないのでここでは除外するが交配は可能である。
そして僕らのように並行世界からやってきた者はこの中では古代人や神人族、妖精族に近いという。人族らとの交配は可能であるが受精率が低い。かつて日本皇国を建国した並行世界の日本人らは混血化がなかなか進まず移住してきた人らが次々に寿命で亡くなり滅亡の危機があったという話はある程度の教育を受けた層であれば有名な話である。王侯貴族などは優秀な遺伝子を後世に残すことが最重要なので僕らが異邦人である事が分ればまず婚姻の話は消える。
これでほぼ間違いなく貴族の養子や婚姻はなくなるはずだと師匠は言う。ただ世の中にはギャンブル感覚で婚姻を組みたがる層もいるにはいる。没落目前の男爵とかだ。
次に叙爵させて取り込むという手段に対してだが叙爵には領土もセットされる。誰でも自領を切り取って渡すのは気が進まない。それもあって一代で滅ぶかもしれない人物に叙爵させにくい。後継者がいない場合は王家に没収されてしまうためだ。
では王家であれば良いのではと懸念しているのだけど師匠によって否定された。王家の者は体面を重んじる。底の見えない資産を持つであろう竜殺し率いる共同体を取り込むのに男爵や子爵程度では王の器量を問われるのである。かといって伯爵ともなると門閥貴族どもの突き上げが厳しい。
貴族は王家に忠誠を誓ってはいるが建国時ならいざ知れず長い歴史を持つ国であれば政略的に大貴族などの影響力は大きく無下には出来ない。
「そうなるとアルマとの、というか法の神との話はどうなるんです?」
彼女は僕に一目ぼれしたという事で政略結婚がなくなった際にこれ幸いにと子供を作って来いと出向という名目でやってきた。受精率が低いのであればこの話は立ち消えるのでは?
そう質問をすると首を振られた。
「寧ろ喜ばれる。審議官殿の結婚相手に魔術師の適性を求められた話がなぜかと言えば古代人に近いからだ。古代人と神人族は非常に近しいので連中からしたら渡りに船であろうよ」
アルマに関しては正直言えばあの献身に絆された自覚はある。それに結構嫉妬深いはずの和花が歓迎しているので覚悟きめていた。
「ただ…………何事も例外はある。終末戦争で使い捨てる事を前提に叙爵する可能性もあるから努々油断しないようにな」
師匠はそう締めくくった。
空手形という訳だ。
取りあえず悩みが軽くなった気がするので予定を変更しようと思案始めた時であった。
「そう言えば…………」
そう言って師匠が自前の[時空倉庫の腕輪]から一振りの長剣を取り出す。金属製の鞘や柄頭などには彫金が施されており高価そうな見栄えである。
「それはなんです?」
「[魔法の武器]なんだが、こいつの人柱を探している」
人柱とはずいぶん物騒な言い様だ。
「呪いの類ですか?」
「いや、技能付与系だ」
「なるほど…………」
ようするに素人同然の人物が必要という事か。そこでふと気になる事があったので彼の人物を人柱とすることを思いついた。
「心当たりがあります。ところで使い手やその周囲に危険はないんですよね?」
「ないな」
ないとなれば契約を盾に押し付けるか。
今後の方針で一つ思いついたことがあるのでハーンに自動工場での生産を依頼しておく。
「待った」
そして一旦拠点に戻ろうとした僕を師匠が呼び止めた。
「なんでしょうか?」
「自動工場だが動力に[豊穣の剣]を使っているよな?」
そこまでバレているのか…………。
「そうでうね。助かっています。それが何か?」
刀身から莫大な万能素子を生み出す素晴らしい[魔法の武器]である。自動工場は万能素子と引き換えに様々なものを生み出すので大助かりである。
「その[豊穣の剣]は複製品だ。万能素子を生み出すのではなく横取りしているだけだ」
そう言って仕組みを説明してくれた。
地脈から万能素子を抜き取っているだけで大量に万能素子を使えば代償として地脈の先で万能素子の欠乏を引き起こす。実は南大陸で突然万能素子が減少した現象が発生し調べてみたらココだったのだという。
ハーンがかなり調子にのってあれこれ作っていたからなぁ…………。
「分かりました。注意しておきます」
そこでふと思った。
「オリジナルの[豊穣の剣]ってどこにあるんでしょうか?」
「俺が持っている」
オリジナルの性能は万能素子を増幅する創成魔術の非奥義である【万能素子増幅】を恒常的に行使する危険極まりない代物だという。過度な万能素子は有機物、無機物に変異を促すからだ。
ハーンに説明し自重するように伝えた後に師匠と別れて共同体拠点へと【転移】した。
【転移】部屋と呼んでいる地下室に戻ると何やら外が騒がしい。まさか王国の連中が強硬策として資産接収に来たのか?
僕は急いで外へと向かった。
一般的にロングソードと言えばバスタードソードの別名ですが当作品では片手用のやや細身で刀身の長い剣という扱いです。ショートソードより長いからロングソードという扱いとなります。同じ片手用の幅の広いブロードソードと差別化されています。
せめて三が日くらいは仕事したくなかったのですが6日に元受け会社で確認したいから用意しておけとお達しされているのでのんびり積みプラモを崩す暇もないです。
そろそろガンプラ以外にも積んである美プラを崩したい。
流石に積みプラが三桁に達すると部屋が狭く感じる。




