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幕間-62 滅びゆく世界

いつの間にか九月が終わっている。

 周囲は絶え間ない爆発音と炎で包まれていた。四度の世界大戦で荒廃した世界からそれなりに栄えた都市が今では瓦礫の山である。最初に出現した正体不明の黒い獣らを撃退したはいいが奴らは次々と現れてこちらの戦闘力に適応していくかのように討伐難易度が跳ね上がっていく。


 襲われているのはわが国だけだろうか? この期に他国が侵略してくるのではと懸念してしまうもののすでに対抗するだけの戦力は残されていない。

 それどころか生きる意味すら失いつつある。



「こっちの世界は火力過多だな」

 気が付けば馴染みの偉丈夫(ヴァルザス)が立っておりこちらをじっと見つめていた。

「どうした?」

 偉丈夫(ヴァルザス)はそう問うが意地の悪い問いであった。

「仕えるべく盟主一族は死に絶え同僚らも多くは散り息子も妻らも散り私だけが生き恥を晒しているよ」

「足掻くなら新天地へ送ってやろうか? 百人ほどが限度だが…………」

 偉丈夫(ヴァルザス)は大規模な異世界間移動を事も無げに言う。

「生き恥を晒すぐらいなら…………だが、残された部下らにはそれも良いかもしれぬな」

「おいおい。(不肖の息子)の存在を忘れるとはひどい親だな」

「あれはもう向こうの世界の住人だ。あっちで幸せにやってくれていればそれでいい。ところで…………倅は至りそうか?」

 死にゆく前に最大の懸念事項を友人に問う。

「片足は突っ込んだ。一度再現出来たから後は本人の鍛錬次第だろうが…………早ければ二十歳前には至るかもな」

「そうか…………」

 他家に婿養子として出す関係で奥義など重要な技術は学ばせなかったが、この男の指導で至ってしまうのか…………秘伝技の更なる先へと。

 その技は一族の夢であった。初代が残した指導書の最後の項目にあった最後の技。歴代当主が生涯をかけても誰も至らなかった最終秘伝技【真・無幻(しん・むげん)】。その技は剣術と魔闘術(ストラグル・アーツ)を突き詰めた先に存在する人を超えた技。


 討ち死にも視野に入れていた老骨である自分のこれからが決まった瞬間である。

「済まないが明日もう一度ここに来て欲しい。それまでに準備をしておく」

「分かった。俺はちょっくら世界の状況を見てくるわ」

 そう言うと偉丈夫は何処かへと転移していった。



 ▲△▲△▲△▲△▲△▲



「この短時間で随分と集まったな」

 いつの間にか現れた偉丈夫(ヴァルザス)が広場に集まる面子を見てそう零した。

 一族の生き残りのうちで希望者を募り集まってもらった。話を聞くに今後倅には必要な人材であろう者たちである。

 生き残った高屋(たかや)家所縁の防衛陸軍の最精鋭35名とその家族。高屋(たかや)家の裏部門の精鋭13名とその家族。職人や文官職20名の総計97名と向こうで必要になるであろう装備であった。

「話を聞く限り倅に必要な人材を呼び寄せた」

「都市国家程度なら瞬く間に墜とせそうな面子だな。倅を王様にでもする気かよ」

 偉丈夫(ヴァルザス)は呆れている。

「倅の状況を聞くに権力者らが倅に目をつけたのだろ? 肥大化した特権意識の者らに取り込まれないようにするには大きな力が必要であろう」

「悪いが時間もないから即座に送るぞ」

 悠長に【次元門ディメンジョン・ゲート】を長時間開きっぱなしできる状況ではないという。

「別れの言葉とかは?」

 広場に集まった一同を見回し頷くと「もう済ませた」と答える。

「分かった」

 偉丈夫(ヴァルザス)が頷くと広場に居た者たちは瞬く間に消えていった。呆気ないものである。


「こいつを倅に渡してくれ」

 そう言って腰の打刀(かたな)脇差(わきざし)を偉丈夫に差し出す。家宝である[無想友近極光むそうともちかきょっこう]と対となる脇差(わきざし)の[無想友近残影むそうともちかざんえい]である。高屋(たかや)家当主の証でもあった。


 偉丈夫(ヴァルザス)は家宝を受け取ると何か言いたげにしばらく見つめてくる。知り合って六年弱の間柄であった。年齢も離れているにもかかわらず妙に馬が合った。長年共に戦った戦友のような気分にさせる。

「確かに預かった。無粋な来客もきた事だし俺は行くぞ」

「あぁ。達者でな」

 偉丈夫(ヴァルザス)から視線を外し無粋な来客である黒い獣ら見つめる。その数は優に千を超えるだろう。


 その時、巨大な竜巻が五本現れ周囲を巻き込み招かれざる客を飲み込んでいく。


[魔法の鞄(ホールディングバッグ)]の仕舞っておいた打刀(かたな)を取り出すと鯉口をきり鞘を投げ捨てる。

 生き残りの招かれざる客を斬って捨てる為だ。



 ▲△▲△▲△▲△▲△▲



 死ぬと爆発する黒い獣らを斬り捨てて爆発するまでの僅かな間に次の標的(ターゲット)を斬り捨てる。

 どれくらい暴れただろうか?

 気が付けば爆発音も途絶え瓦礫の上で大の字となり空を眺めていた。出血により体温が低下してきておりもうすぐ死ぬだろう。

 土壇場で至るかと淡い期待をしていたが残念ながら自分には無理であった。だが満足である。


「おい」

 居なくなったと思われた偉丈夫の声が聞こえた気がした。幻聴が聞こえ始めたようである。

「至らなかったが自らの限界を超えた確信していい気分で逝けそうなんだ…………」

 徐々に視界が暗くなっていく。


 最後に至った倅の姿を見たかった。



ブックマーク、評価、感想、誤字報告などありがとうございます。

貴重なお時間を使って報告していただき感謝に堪えません。


最近トップページまで戻らないので誤字直してませんが…………。


忙しすぎていくつか遊んでいたスマホゲーすら放置という状態。

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