547話 残件処理④
目が覚めると戦利品の最後の分別を行うべく倉庫へと向かう。そこにはすでにフリューゲル師と闇森霊族のアドリアンが待っていた。最後の分別は魔法の工芸品である。
今回の迷宮攻略では結構魔法の工芸品を使い捨てにしたので補充と市場に流せるレベルのモノを分けるのだ。あと共同体の幹部クラスの面々の強化もある。
「まずは[防護膜の指輪]は我々で確保しようかと思う。中級品級が20個あるのだが構わないだろうか?」
最初に口を開いたのはフリューゲル師だ。この中級品級の[守護の指輪]は身に着けると常時硬革鎧相当の防御効果を得られる。第六階梯魔術の【高位防御膜】相当であるから売ればそれなりの価格となるが命には代えられない。
「その20個の中に俺らは入っているのか?」
「勿論だよ。共に戦った仲ではないか」
アドリアンの問いにフリューゲル師が即答する。僕も無言で肯首する。
「ならいい」
宝飾品類に関しては定番品が数多くあり他には魔法に対する抵抗力を引き上げる[抗魔活性の指輪]、武器による打撃力を引き上げる[打撃の指輪]、見えざる盾で敵の攻撃を受け流す[不可視の盾の腕輪]、着用者の回避能力を僅かに底上げする[回避の腕輪]、術者の魔法強度を底上げする[魔法強度増強の指輪]、収めた剣に特定の力を一時的に付与する[鍛えの鞘]、[聖なる鞘]、[炎の鞘]、[冷気の鞘]、[電撃の鞘]、とある。
他にも明かりを灯す[光源の首飾り]、悪感情や敵意を感じ取る[悪意感知の護符]、身綺麗にする[洗濯の首飾り]、液体を真水に変える[浄化の首飾り]、火種になる[種火の指輪]などだ。
あとは使用回数がある簡易魔法の工芸品として[火球の棒杖]、[分解の棒杖]などもある。これらは売り払おうという事になった。
一方で売却をしないと既に決めているものもある。一定数の魔法を封入しておける[呪文貯蓄の指輪]、着用者の姿を周囲から見えなくする[姿隠しの指輪]と[妖精の外套]、物音を立てない[妖精の長靴]、超人的な跳躍力を与える[跳躍の革靴]、水中呼吸が可能になる[水中呼吸の指輪]、着用者に怪力を与える[馬鹿力の籠手]、着用者を任意の姿に変装させる[プーカの耳飾り]、不死の生物を退ける助けとなる[不浄払いの護符]、着用者の周囲を恒常的に過ごしやすい温度を保つ[常温の首飾り]、使用すると周囲1サーグの安全圏へと強制転移させる[緊急脱出の水晶柱]などだ。
武器となるものは低ランクの[鋭さ]や[必中]が付与された安めの武器はすべて売却。【自爆】は自作武器で済ませる。
特に優秀な装備に関しては瑞穂が持つ[透過の刃]の幅広穂長槍版である[透過するもの]、受けた衝撃を倍加して跳ね返す魔法の盾である[反射の鞘盾]、瑞穂が持つ[鋭い刃]の広刃の剣版ともいうべき[切裂きの剣]、自動修復に強力な防御に魔像のように半自立で動く全身甲冑である[番兵]、万能素子を宝珠に貯めておける[補填の長杖]、着用者に転移能力を付与する[転移の額冠]、周囲の音の伝播を止める[静寂の鐘]、最後の一本を使わない限り無限に矢弾を補給する[|豊饒の角《ジャベリンコンテナー・オブ・アンリミテッド》]、向けられた魔法を反射する[魔法反射の指輪]などだ。
そして報酬としてもらった六振りの[豊穣の剣]だ。既にハーンに三振り渡して然るべき箇所で使ってもらっている。
「次は山のようにある[技能付与の宝珠]はどうするね?」
「俺らはこいつの特性を理解しているから不要だが、即席で使える人材が欲しい奴が居るじゃないか。フフ…………」
「アドリアン君。悪い笑みを浮かべているよ」
アドリアンが悪い笑みを浮かべそれをフリューゲル師に指摘されていた。
まぁ~この[技能付与の宝珠]を使われた人ら急激に自分の実力が向上したと錯覚し即座に終末戦争の最前線送りだろう。
「残らず売ろう」
「そうだな」
即決であった。うちの共同体には必要ない。実験用に確保してあるモノは既に佐藤くんらに使ってある。彼らの報告書待ちである。
「こいつはどうする?」
アドリアンが指した先には数えるのも億劫になるほどの無数の水薬が無造作に置かれていた。
「効果はどうでした?」
「少なくても[快癒薬]級のモノはなかった。売り払ってよかろう」
[軽傷回復薬]、[重傷回復薬]ばかりだったそうだ。これらは僕らでも量産できるので確かに不要である。
後は研究書などがあるもののちょっと表にさせないものが多い。売り払うどころか禁書指定されてカスみたいな価格で買い取られるのがオチだ。
四つの迷宮で確保できたモノとしてはこれで全てであった。
これの他に緑竜の素材が山のようにある。翠玉に輝く竜鱗と竜肌の一部は僕らが使うので確保。錬金学の素材になる竜血も確保した。
牙や爪や骨は削れば武器になるけど加工できる骨細工職人は僕らの共同体にはいない。
肉はあの巨体を支えるだけあって硬く筋張っており食べるとすると加工後に熟成が必要になる。10グローほど確保して残りは売却である。
「それじゃメイザン司教に捌いてもらうよ」
僕は全ての物品を[時空倉庫の腕輪]に放り込んでメイザン司教のいる十字路都市テントスの本部へと【転移】した。
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更に一週間が過ぎ去った。秋の前月の中週も過ぎ去り後週に突入した。
港湾領都ルードも十字路都市テントスも終末戦争の影響は特に感じない。
気になっていた半豚鬼らの拠点に様子見に来ていた。預けた女性らは大丈夫だろうか?
「やぁ。共同体責任者」
最初に僕に気が付いたのは女性陣のまとめ役であるヒルデであった。至って健康そうで笑みまで浮かべている。
「様子を見に来たけど、何か不便してたりしないかい?」
「あいつら仕事に差し障るとか言って毎日夜中には寝ちまうから想像してたよりはるかに楽だね。人数も居るから個人の負担も少ないし。それに――――」
女の冒険者は男と寝るのが楽しいって層が結構いるらしく誰も不満はないとの事であった。
本当だろうか? 最悪の事態から比すればってだけではないのか?
そう問うと思いっきり笑われてしまった。
快適な環境で昼間は生活し夜は気持ちよくて充実しておりこれで不満が出るはずもないとの事である。
「約束は忘れないでおくれよ?」
「もちろんだ」
半豚鬼らは成長も早いが30歳あたりから急激に老化が始まり長くても35歳あたりで老衰する。二年か三年ほど楽しんだら半豚鬼らはクロガーを除いて全滅である。クロガーは変わり者で他の半豚鬼が老衰で逝ったら彼女たちはお役御免にしてくれと頼まれている。
彼女たちはアルカンスフィア大陸は生きられないので別の大陸に渡り心機一転という訳である。
その後は闇森霊族の集落へ行き密偵役として数人の闇森霊族に協力してもらう約束を交わし、妖精族の集落で生活の不満はないかの確認を取った。
あとは西方の大迷宮都市クーデンに設けた共同体拠点に赴き佐藤君ら報告を聞くくらいだろうか?
空き時間で終末戦争の対策を練らないとならないな。
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貴重なお時間を使って報告していただき感謝に堪えません。




