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545話 残件処理②

 目が覚めると自室だった。

 早速得た知識を検証を始める。


 一刻(二時間)ほどして分かった事は意外と使えない知識であったという事だ。当時と今では大前提が違いすぎてそのままでは使えない技術が多すぎた。当時の溢れんばかりの大気中の万能素子(マナ)で当たり前のように駆動する魔導機器(マギデバイス)は現在の希薄な万能素子(マナ)では性能を発揮できない。心臓部の再設計が必要であった。

 また知識だけ詰め込んでも理解しているわけではないので知識を生かしきれない事も多い。これはハーンたち魔導機器技師(インジグナー)たちと相談だな思ったのだった。


 時間を確認すると九の刻(一八時)を少し過ぎておりもう一件の面倒事を解決するために再び共同体拠点(クランベース)へと跳んだ。


 ▲△▲△▲△▲△▲△▲




「この者らが報告書にあった者たちです」

 メイザン司教(ビショップ)は出かけているとの事で彼の下で働いている事務員(クリーク)が応じてくれた。

 目の前にはずらりと並ぶ20人ほどの女性らであった。彼女たちは重犯罪者である。彼女たちは「青の党(キャーア・コイシィ)」と名乗る冒険者(エーベンターリア)崩れの女性だけで構成された野盗(マリング)集団であった。

 冒険者組合エーベンターリアギルドの指名依頼で元防衛軍の面子で討伐に出向いたのである。

 報告書には重軽傷者は出たものの味方の損失はゼロとあった。


 おじさん連中は女性という事で当初は捕縛を考えていたようだけど予想外の強さと勇猛さに()てられ50人ほどいた構成員のうち30人は殺してしまったとの事であった。野盗(マリング)海賊(パイレーツ)などは捕縛したものが生殺与奪の権利があり官憲に突き出して報奨金を貰うか自分たちで()()するかを選べる。

 世間的には誤解を招きそうであったが僕らは引き取った。目的は今回、多くの犠牲を払って肉壁として頑張った半豚鬼(ハーフオーク)らとの約定を果たす為である。


「あんたがここの首魁(ボス)かい?」

 そう声をかけてきたのは一人だけ毛色が違う女傑と評したくなる人だった。体格は健司(けんじ)と同程度と大柄で戦士として鍛え抜かれた筋肉を誇りいくつもの傷が全身にあった。

「そうだ。たしか君は…………首魁(ボス)のヒルデだったね」

 ヒルデはこちらを値踏みするように見ている。立場的には普通ならその場で斬り殺されても文句も言えない筈だが豪胆というか…………。だが気に入った。


「噂って当てにならないね。もっと(いか)つい男かと思ってたけど顔以外は普通だね」

「有名人がこんな程度で失望したかい?」

「いや、普通なら斬りかかってきてもおかしくないのに平然としている。あたいをみても怯えもせず逆に気に入ったよ」

 たしかに事務員(クリーク)さんは少し怯えているなとは思った。何気なく立っているがいつでも戦闘可能だと言わんばかりに身体に力が入っている。だけどそれで彼女の実力は見当ついた。恐らく一流以上だが達人の域には達していない。うちの共同体(クラン)だと十指に入るか否かといったところだろうか?


「無駄な話をしても仕方ないので今から職場に連れていく。質問などはその際に受ける」

 僕はそう言うと[転移門の絨毯カーペット・オブ・ゲート]を取り出し進むように告げる。

「やれやれ。せっかちだねぇ」

 そうボヤいてヒルデが真っ先に【転移門(ゲート)】へと消えていく。首魁(ボス)が真っ先に動いたことで残った女性らもぞろぞろと続いていった。


 全員が移動したのを見届けて[転移門の絨毯カーペット・オブ・ゲート]を片付け【転移(テレポート)】で彼女たちのいる場所へと跳ぶ。



 ▲△▲△▲△▲△▲△▲



「ここが君らの職場になる。その前に――――」

 僕はそう告げた後に人数分の短剣(ダガー)を彼女たちの足元に置く。訝しむ彼女らに仕事内容を告げると共にクロガー率いる七人の半豚鬼(ハーフオーク)らにご登場願う。

 あれ?

 一人足りなくない?

 ほら、森霊族(エルフ)に血が混じった半豚鬼(ハーフオーク)にしては小柄で細身だった総受け担当の人が…………。


「私らはこいつらの慰み者になるかここで自害するかって事かい?」

 正解であった。

 自害できなければ官憲に野盗(マリング)として突き出し別の場所で有無を言わさず同じ目にあうだけど。


 組織が大きくなるとどうしても保身に走りがちだ。自分の判断で多くの者が路頭に迷うのだから。やはり僕にはこういった組織の長は向かないのではないかと思う。


 ヒルデは半豚鬼(ハーフオーク)を一瞥すると、

「内緒話がしたい。耳を貸してくれよ」

 僕には強制的に従わせる権限があるのを承知でそれを告げる豪胆さはいいなと思った。大人しく近くまで進む。

「それで?」

「あいつらが死んだらお役御免なのかい?」

「殺害しようって?」

「ははは。流石にそれはないよ。厳つい奴以外は寿命が近いだろ?」

 良く知っているな。変態遺伝子の豚鬼(オーク)はほとんどすべての種族と交配可能で高確率で豚鬼(オーク)を出産させる。代償なのかその分寿命が短い。このヒルデという女性は言い方は悪いけど見た目の粗野さに違わぬ博識っぽい。もしかして良いところのお嬢さんだったのでは?

「そうだね」と回答しておく。

「お役御免になったらあたしらは処分かい?」

 野に放つわけにもいかないので普通に考えると処分という事になる。でも僕はそうは考えていない。

「ここから出してあげることは出来ないけど能力に見合った仕事をしてもらう事になる」


 暫し瞑目してヒルデがこう答えた。

「使い潰されて用済みなら処分って言うならここで自害を選んだが…………あたしはここに残る。んで、お前らはどうする?」

 後ろに控える19名にそう告げる。こちらの方がマシと思ったのか全員が短剣(ダガー)を突き返してきた。


「では、あとの差配は任せるよ」

 僕はクロガーにそう伝えると次の案件を処理するために移動する。

ブックマーク、評価、感想、誤字報告などありがとうございます。

貴重なお時間を使って報告していただき感謝に堪えません。

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