534話 ちょっと寄り道。塔攻略②
GW初っ端から高所作業で足を踏み外し台無しなりGW終日にものもらいになるしで気が付けば五月も中旬に…………。
少し長くなったので分割。残りは翌日投稿します。
実物の白亜の塔より小さい事もあり薄暗い室内を探し回ること半刻。いくつかの空き部屋を経て展示室を発見した。
そこにあったものは惑星を中心に周辺の天体や人工物が立体投影されていた。恐らく[神の視点]の亜種であろう。
母なる惑星を中心に青き月、白き月、赤き月とあり母なる惑星の周囲に天体間質量平衝点に巨大人工構造都市群が存在する。当時の奴隷階級を住まわせる星界の監獄である。当時は魔法が使えない者は人に非ずと言われており家畜扱いであった。
巨大人工構造都市群の管理は貴族と呼ばれていた魔術師たちが管理していた。彼らにで生殺与奪の権利があった。酷い者が管理する場所はその日の気分次第で奴隷が無残に殺されるなどあったという。
この当時は奴隷の扱いは僕ら日本人が思っているような過酷な扱いであったという。
現在はどうなっているのかは不明である。管理者が居ないので全滅しているのではというのが定説だ。なにせ渡航する手段がないのだから確認しようがないのである。
もっとも我が共同体の装備である白鯨級潜航艦であれば不可能ではない。今のところ行く気はないけど。
青き月については現在は消失しており痕跡すらない。極大魔術の触媒に利用されたのではというのが定説だ。
しかし冷静に考えると直径575サーグにもなる青き月を触媒にして発動する魔術って何をしたのだろうか?
いち魔術師としては気になるなぁ。
その後は高軌道ステーションへと向かう昇降機のダミーやら港湾施設のダミーを見て回り結局ここはなんだったのかと考えこむ事になる。
ハズレルートと判断し昇降機へと戻ろうとした時である。
カシャン。カシャン。と鉄靴らしい足音が響き渡る。他にもかなり軽い足音は複数追従する。
程なくして暗がりから姿を現した者らは全身甲冑に盾を装備した恐らく男性っぽい何か。他には大振りの短剣を両手に持つ四人の人造人間であった。
「どうやら罠だったな」
フッと笑うと半豚鬼英雄のクロガーが武器を構える。それに釣られて他の半豚鬼らも壁盾を構え防御姿勢を取る。
それが合図となり人造人間が人間離れした勢いで5サート近い距離を一気に詰める。
驚くべきことに細身の人造人間が壁盾を構える半豚鬼相手に体当たりを敢行したのだ。
質量差でどう考えても負けると思った。しかし結果は受けたはずの半豚鬼らがよろめいたり平衝を崩したりしていた。盾に当たった時の音が金属の塊がぶつかったかのような感じであった。
まず最初の犠牲者が平衝を崩した半豚鬼であった。わずかな隙を逃さず人造人間が飛び掛かると最も防御の薄い密閉型兜の眉庇の隙間に大振りに短剣を深々と突っ込んだ。
あっという間の出来事であった。
しかし僅かな硬直時間を見逃すほど半豚鬼英雄のクロガーは甘くなかった。三角穂長槍を振り仲間であったはずの半豚鬼ごと斬りつけた。
半豚鬼と人造人間が派手に弾き飛ばされる。
「むぅ」
クロガーが唸った。彼の膂力なら半豚鬼ごと細身の人造人間も真っ二つのはずであったが深手を負ったものの人造人間はよろよろと立ち上がったのである。
「強化済みか…………」
人間の脆弱な肉体では耐えられないという事で骨やら筋繊維などを特殊なものに作り替えて見た目に反して人以上の能力を発揮させる仕様である。
そうこうしているうちにもう一人の半豚鬼が狩られる。自らの壁盾で視野が塞がれて標的を見失った隙に殺られたのだ。
本命と思っていた全身甲冑の人物は鞘盾から広刃の剣を引き抜き悠然と歩み寄ってくる。刀身から青白い魔力のオーラが見える。かなり強力な[魔法の武器]だ。
そちらにばかり気を足られるわけにはいかない。盾役に穴が開いた事で二人の人造人間が弱そうに見える僕と瑞穂を標的にしたのか切り込んできた。僕は鯉口をきる。
僕は初撃を【飃眼】でギリギリで見切って避けるとそこから踏み込んですれ違いざまに刀身に万能素子を集約させて一閃。
本来であれば硬いはずの肉体が紙のようにスパッと二つに分かれて床に転がる。
一方瑞穂のほうも初撃を床に転がるように大きく避けつつ距離を開けると膝射にて機械式連弩を三連射。近距離では矢の弾道は安定しない筈なのに見事によろよろと立ち上がる人造人間に突き刺さった。うち一本が額に深々と突き刺さる。間違いなく即死だ。
初撃を躱された人造人間が射撃後の僅かな硬直を狙って追撃を試みるが瑞穂に届かずバラバラとなって床に転がった。距離を取ったのは閉所では運用しにくい鋼刃糸を用いるためだ。
一方前衛側はクロガーが最後の人造人間を三角穂長槍で叩き伏せたものの全身甲冑の広刃の剣が半豚鬼の壁盾をまるで紙のように切り裂き返す刃で半豚鬼を全身甲冑ごと切裂いた。
恐怖を感じたのだろう最後の盾役が背を向けて逃亡しようとしたところをさらに踏み込んで一刀のもとで斬り伏せた。その流れるような動きは達人の域を感じさせた。
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