表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
598/678

531話 試練の迷宮⑲ 

 下りた先は一面真っ白な世界であった。


「報酬もねーしくそ寒みーし最悪だぜ」

 隣で文句を言っているのは九重(ここのえ)である。周囲は暗いうえにかなり吹雪いており視界は5サート(約20m)先は見えないくらいには酷い。明かりと言えば何人かが携帯する精霊角灯(バイムランタン)くらいだ。

 上の階層(フロアー)南方(アサド)をイメージしたとしたら今度は北方(ノード)だろうか。勘弁して欲しい。

 ただ北方(ノード)を参考に階層を構成したのであれば登場する怪物もある程度は絞れてくる。

 雪狼(ニクス・ウルフ)雪大狼(ニクス・ダイアウルフ)雪大熊(ニクス・バールアング)雪大鹿(ニクス・ラサー)雪巨人(ニクスジャイアント)毛長象(マォモス)あたりだろうか。

 あ、吹雪いていなければ雪大鷲(ニクサ・アクィラエ)に襲われる可能性もあるか。

 階層主(フロアボス)は恐らく霜巨人族(フロストジャイアント)大雪狼(ニクサルヴォルフ)あたりかな? そろそろ一介の冒険者(エーベンターリア)じゃ対処できない敵になってきたな。もしかしたら最下層も近いのかも?

 大雪狼(ニクサルヴォルフ)とは体長2.5サート(約10m)にもなる純白の毛並みの超大型の狼型の四足獣であり、よく氷の精霊王(フェンリル)と勘違いされる。どちらも氷の精霊(ペール・バイム)を力の源とした魔法を使ってくるので勘違いされても仕方ない。


 僕を含む幾人かは[常温の首飾り(サーマル・ネックレス)]を身に着けているので問題ないが他の面子はそうはいかない。急いで防寒具に着替えさせ拠点設営を指示し僕はと言えば周辺の警戒と言う名のサボリである。

 半刻(一時間)ほどで設営は終わったもののそれだけでは足りないと氷霊族(フローベル)のライハンルトに頼み【|氷の精霊壁《バイム・ウォール”フラウ”》】を五枚ほど設置して吹雪を避けてもらった。吹雪が落ち着いただけで体感温度はかなり上がったと思う。


 ここまで終わればあとは食事と休息だ。

呪的資源(リソース)の回復も兼ねて交代で一旦休もう」

 そう言って見張りの順番を決めるために各班(グラペン)まとめ役(リーダー)を呼び集める。



 ▲△▲△▲△▲△▲△▲




 一日が経過した。この階層(フロアー)は相変わらず薄暗く吹雪いており視界の悪さも相まって探索がかなり厳しい。【|氷の精霊壁《バイム・ウォール”フラウ”》】のお陰で内側は積雪が0.25サート(約1m)ほどで済んだものの壁の外は0.75サート(約3m)ほど積雪が増えていた。

 体力(スタミナ)呪的資源(リソース)も充分回復した事もあり交代で周辺の調査に乗り出した。基本的には編成(パーティ)単位での行動で四つの編成(パーティ)が交代で調査する。

 待機中の面子で定期的に除雪作業などを行っている。このまま無為に時間が過ぎると先に進めなくなるのではと不安になる。

 対策として自重の重い石の従者(ストーン・サーバント)に指示を出し周辺を踏み固めさせる。


 遭遇する敵は想定通りであるものの足場の悪さと視界の悪さと相まって近距離での遭遇戦となる。その為か不意打ちを喰い負傷者が出たりもした。最も癒し手も多いので調査に支障はなかった。


 この階層(フロアー)で唯一良かったことがあるとすれば、ここは宝の山であった。敵をから剥ぎ取れる純白の毛皮は希少性が高く高価買取品だ。また(ウルフ)系は兎も角として鹿(ラサー)(バールアング)は肉も売れる。更に(バールアング)の肝も薬の材料として売れる。


 いちおう活動拠点(ベースキャンプ)から周囲0.38サーグ(約1.5km)の調査は終わったが単なる平野のようである。吹雪の方は相変わらずでこれを何とかしなければ階層主(フロアボス)と遭遇するのは何時になるんだとイラつきだす者も出始めた。

「俺が炎の精霊王(イフリート・ワムル)を長時間呼び出せればな…………」

 そう言って健司(けんじ)が落ち込んでいるが、そもそも従属神(アプレンティス)に匹敵すると言われる精霊王(バイム・ルーラー)を長時間使役できるとしたらその人物は精霊王(バイム・ルーラー)より上位の存在となる。人類には無理という事だ落ち込むだけ無駄である。


 その後も調査は続くが手応えがないまま更に一日が過ぎ去った。調査範囲は活動拠点(ベースキャンプ)から周囲0.5サーグ(約2km)まで広がった。


「どんだけ広いんだよ」

 調査から戻ってきた九重(ここのえ)がそう言ってドカッと座り込んだ。そこそこ敵とも遭遇したようで移動と戦闘と剝ぎ取りで疲労が色濃く出ている。


 食料などに余裕があるもののこの暗く寒い地域で過すことに慣れていない者が多くかなりストレスを溜めている。寝台とかも普段使っているものより質が落ちるしね。睡眠は大事だ。


 ところが翌日に変化があった。吹雪が収まり周辺が明るくなったのである。


「なんだね、あれは?」

 拡大魔術(エンハンス)で視力を増強していたフリューゲル師が奥を指さす。そちらへと視線を向けると距離にして1サーグ(約4km)ほどだろうか?


 北方(ノード)を模して巨大な(タリム)…………。

白亜の塔(クレーデターム)を模したものじゃ? 恐らくあそこの下が階層主(フロアボス)の居場所でしょうね」

「なるほどね。ところでどうやってあそこまで行くかね?」

「そうですね――――」


 石の従者(ストーン・サーバント)を複数体用意し横一列にした状態で前進させる。その自重で雪を踏み固め(タリム)までの経路を確保するのだ。


 ただしこの作戦には問題点がある。

 そう魔術師(メイジ)は七人しかおらず誰の呪的資源(リソース)を浪費するかだ。

 それなりの数を用意する事になるので数を作れる者か複数人で負担するかの?


「やはり僕かな」

(いつき)殿はダメだ。君は階層主(フロアボス)戦に参加してもらう。弟子にやらせよう」

 フリューゲル師の意見で彼の弟子二人が担当する事になった。



 周囲の状況が変わらないうちに(タリム)までたどり着きたいという事で設営したものはそのままでとし(タリム)へと向かう事になった。


ブックマーク、評価、感想、誤字報告などありがとうございます。

貴重なお時間を使って報告していただき感謝に堪えません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ