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520話 試練の迷宮⑪

 吊り橋周辺を念入りに調べるが特に怪しい仕掛けは見つからなかった。ちなみに下を覗くと真っ暗で底が見えない。落ちたら終わりかな?


 底の見えない開口部の中央に文字通り宙に浮いている浮島があり吊り橋はそこへと伸びている。その長さは10サート(約40m)ほどだ。そこを中継点として更に奥に広がる広大な森へと吊り橋が伸びている。

 浮島は広さ10スクーナ(約20坪)ほどでその中央には収納箱(チェスト)が鎮座している。あれは報酬部屋の扱いなのだろうか? それとも嫌がらせの(トラップ)か…………。


「あれってやっぱり報酬部屋扱いだと思うか?」

 どうやら健司(けんじ)も同じことを思っていたようだ。

「報酬部屋扱いなら数少ない安全地帯になるから有難いんだけど…………」

「だよなぁ。二人しか居ねーし見張りの問題もあるからな」

 迷宮(アトラクション)の性質上、見世物の側面が強く階層を跨ぐ階段や部分や報酬部屋を安全地帯とする暗黙の規約(ルール)があったらしい。そうは言っても油断はできない。


 この迷宮(アトラクション)は間違いなく見世物のはずなのだが、念には念をいれて思い【飛行(フライト)】の魔術を詠唱し吊り橋と浮島をじっくりと観察する。呪的資源(リソース)的にも限界が近く頭が痺れるように感覚が襲う。


 偵察中に空からの襲撃もなく、特に不自然なところも見つからなかったが、念のために健司(けんじ)に 【落下制御フォーリング・コントロール】をかけてから吊り橋を渡ってもらう。



 ▲△▲△▲△▲△▲△▲




 防犯魔術の設置や野営(キャンプ)の準備も終わり一息ついたのを見計らっていたのだろう。

「開けようぜ」

 健司(けんじ)収納箱(チェスト)の前で落ち着きなく待機していた。健司(けんじ)には悪いが僕の方はそろそろ限界だ。


「もう呪的資源(リソース)もないし休ませて欲しい。頭が回らない」

「鑑定してくれとか言わないから良いだろう?」

 鑑定作業は記憶している文献知識と照らし合わせる作業だけに頭を使う。せめてアルマが居れば丸投げできるのだけど…………。

 兎に角な中が見たくて仕方ないらしい。仕方ないなとボヤキつつ許可を出す。長年放置されてきたこの手の迷宮(アトラクション)は地味に高価な魔法の工芸品(アーティファクト)が入っている事が多い。


「開けるだけだよ」

「よっしゃ!」

 そう叫ぶと嬉々として収納箱(チェスト)を開ける。

 その時、連続した炸裂音が響いた。


「「…………」」


 僕らに異常はない。ただ、周囲にはやや焦げくさい臭いが漂っているだけだ。


「不発か?」

「いや、恐らくジョークの類だと思う」

 油断した挑戦者に気を引き締めろって意味かとも思う。これで気軽に収納箱(チェスト)を開けられなくなった。次は(トラップ)の可能性を警戒する事になる。


 もっとも、そう思わせるだけの仕掛けかもしれないけどね。


「脅かしやがって」

 そう悪態ついて収納箱(チェスト)の中を覗き込む健司(けんじ)だがその動きが止まる。

「どうした?」


大剣(グレートソード)だ…………」

 そう言って箱からそいつを取り出す。

「結構重いな…………」

 それは派手な彫金の装飾の施された金属製の真紅の鞘に収まっていた。彫金の施された(ヒルト)柄頭(ポンメル)にかなり大きい赤い宝石、恐らくは紅玉(ルビー)あたりがはめ込まれておりかなり見た目重視な武器である。


「やっぱり[魔法の武器(マージナル)]か?」

「そうだね。この鞘の赤は塗装じゃなくて金属そのものだね」

 そうなると赤延鋼(ガードラ)真銀(ミスリル)製かな。ただ赤延鋼(ガードラ)はこの手の構造材には向かないからほぼ真銀(ミスリル)製で間違いないだろう。という事は地霊族(ドワーフ)作だ。」

 秘儀とされているが地霊族(ドワーフ)だけが真銀(ミスリル)製を加工する際に自在に色を付けられるという。


「抜いていいか?」

 健司(けんじ)がそう確認を取りつつ右手は(ヒルト)へと伸びている。

「はっきりと身元が分かるまでは抜かない方がいい」

 (トラップ)として呪いの武器を入れる可能性も十分にある。この手の迷宮(アトラクション)は観客を喜ばせるために何処かにエグい(トラップ)とか仕掛けてあるのが定番だ。


「とにかく抜かないでね」


 念を押してから僕は横になる。和花(のどか)たちの事は気になって仕方ないけどもう疲れすぎていて何もしたくない。



 ▲△▲△▲△▲△▲△▲


 目が覚めると頭はすっきりしていた。地面に寝たこともあって身体はバキバキである。空を模した天井は夜を示しており周囲は暗い。明かりは焚火の炎だけだ。目立つから焚火はしないのがだったけど健司(けんじ)は夜目が利かないし仕方ないのか。


「起きたか。襲撃はなかったぞ」

 僕が焚火の方を見つめているのに気が付きそう言って来た。


 懐中時計を取り出し時間を確認する。とっくに定時報告の時間は過ぎている。もっとも本部からこちらの座標は特定できないのでこちらから連絡しないと何かあったのではと騒ぎになっているかもしれない。


 大急ぎで【遠話(ログトーク)】で本部の通信魔術師コーレスポンティア・マージと連絡を取るとやはり連絡がなく大騒ぎになっていたようだ。


 こちらの状況を説明し各班(グラペン)の状況を聞いたのちに僕はある決断をする。

「プランBに移行する。各班(グラペン)から連絡があり次第それを伝えるように」と言って通話は終了する。


 これにより僕らは早急に和花(のどか)たちと合流する必要が出てきた。健司(けんじ)に仮眠をとってもらい起床次第も戻る事とした。


 健司(けんじ)は不満そうであったがプランBに移行した際の危険度も想像できているので渋々ではあったが横になると程なくして寝息を立てる。



ブックマーク、評価、感想、誤字報告などありがとうございます。

貴重なお時間を使って報告していただき感謝に堪えません。



なんかフルリモート勤務なのをいい事に出来もしない机上の作業計画のごり押しでまともに休めていない。これはやはり転職活動を本格的にやらないとマズいか…………。


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