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513話 試練の迷宮⑦

 拍子抜けなくらい何事も起こらず気が付けば棚台を三つ降りていた。まさかとは思うけど逃げるのが困難な状況になってから襲い掛かってくるとかだろうか?


 この大して広くもない棚台で襲われると僕らは迎撃手段がかなり限定される。接近戦ともなると健司(けんじ)もダグも攻撃範囲が広く必要なタイプだし逆に残りの四人は攻撃範囲が狭い。飛び道具(ミサイルウェポン)に関しては僕や健司(けんじ)(クロスボウ)なので即応しにくくダグは投槍(ジャベリン)なので即応性に関しては同様だ。和花(のどか)やアルマの射撃に関しては投石紐(スリング)なので投げるまでに結構間がある。瑞穂(みずほ)機械式連弩コンパウンド・リピーターくらいだろうか。


 即応性という意味では威力に不安が残るが魔術師の【魔力撃(ブラスター)】や奇跡(ホーリー・プレイ)の【気弾(フォース)】くらいだろうか。


 また棚台の大きさは10スクーナ(約5坪)ほどしかなく基本的に逃げ場がないので不安しかない。


 まとめ役(リーダー)が不安を表情(かお)に出すとそれが面子に伝播するので冷静に冷静にと自身に言い聞かせる。


 そして五段目の棚台へと瑞穂(みずほ)が降下を始める。ここはこれまでより高さがあり7.5サート(約30m)ほどと少々訓練した程度の素人に毛が生えた程度の僕らには結構大変である。濃霧のせいか目的地の棚台が霞んで見える。

 しかしどれだけ降りれば目的地に着くのであろうか?


 瑞穂(みずほ)が無事に下の棚台に降り立つのを確認した後に和花(のどか)が降下を始める。その時だ――――。



和花(のどか)!」

 偶然でも幸運でもどちらでも良い。いち早く上空のから急降下するモノの存在に気が付いた僕が叫んだ。彼女にはこれで十分だ。

 なぜなら和花(のどか)に貸与してある[反発障壁の指輪リング・オブ・フォース]は自動的に障壁を張るわけでなく不意打ちには効果がないが危機を認識出来ればきちんと効果を発揮する。


 僕の声を聴き瞬時に状況を理解した和花(のどか)が障壁を展開。急降下してきた(アクィラエ)のような巨大な猛禽類は急降下の勢いそのまま障壁に激突し弾かれ痛々しい悲鳴と共にコースを変えると墜落していった。


 その後、上昇してくる気配もなく和花(のどか)も無事に棚台に降り立った。続く健司(けんじ)は獲物としては認識されなかったのか危なげなく降り立つ。更にアルマ、ダグと続き最後は僕であった。特に問題もなく降下し残り2.5サート(約10m)をきったあたりで霧の中からそいつが襲って来た。


 それはミニバンサイズの巨躯で上半身と大きな翼は(アクィラエ)を思わせ、下半身が馬という魔獣鷲頭馬(ヒポグリフ)であった。そいつが前肢で僕を捕獲しようと突っ込んでくる。

 慌てて無詠唱(テルガン)で【防護圏(ボーン・スフィア)】を展開するも緊急展開した【防護圏(ボーン・スフィア)】では巨大な質量を受け止め切れる訳もなく【防護圏(ボーン・スフィア)】は割れ殺しきれなかった勢いで僕は壁面に叩きつけられる。


 痛みを堪え腰に吊っている光剣(フォースソード)を抜くと前肢を斬りつける。鷲頭馬(ヒポグリフ)は悲鳴を上げ離れていく。その隙に光剣(フォースソード)で綱を切り無詠唱(テルガン)で【軟着陸(アルジィ・ビュート)】を唱えて無事に棚台に着地する。


 立ち上がり振り返ると鷲頭馬(ヒポグリフ)はダグの羽根付き槍(ウィングド・スピア)を掻い潜り瑞穂(みずほ)機械式連弩コンパウンド・リピーターを連射を避けつつ獲物を物色していた。僕らは上空を舞う敵に対しての戦闘訓練はあまりしてこなかったのをここで後悔した。


 しかし弾幕を張る瑞穂(みずほ)機械式連弩コンパウンド・リピーター弾倉(マガジン)を打ち尽くすほど放った時には数本が巨躯に命中していた。だが慌てていたのか使用する弾倉(マガジン)を間違えていたようで神覇鉱(ヴァーラル)製の貫徹力の高い太矢(クォーレル)を使ってしまったようだ。

 出血を強いているものの期待したほどの効果が出ていない。


 怒り狂った鷲頭馬(ヒポグリフ)は標的を瑞穂(みずほ)に定めたようで一度大きく羽ばたくと狙いすませたように急降下してくる。

 だがそれを待っていた者が居た。


 ダグである。


 怒りに我を忘れて襲い掛かるものが何処に来るか予測できれば後はその予定コースに羽根付き槍(ウィングド・スピア)を置くだけである。

 狙いたがわず吸い込まれるように穂先が鷲頭馬(ヒポグリフ)の上半身へと食い込む。ダグと瑞穂(みずほ)は即座に落下予定位置から退避するとその直後に巨躯が墜落しバウンドすると狭い棚台から落ちてしまったのだ。


「あぁぁぁぁぁぁっ」


 主武器(メインアーム)を失ってしまったダグの悲痛の声が虚しく木霊した。






 ▲△▲△▲△▲△▲△▲






 鷲頭馬(ヒポグリフ)討伐を労いつつ更に下へと降りていく。道中で(アクィラエ)のような巨鳥が幾度か襲い掛かってくるのを撃退していが倒しても下へと落下してしまい万能素子結晶(マナ・クリスタル)すら回収できないという虚しさに心の中で泣きつつ更に四段ほど棚台を降りたところで変化があった。


「この構造は初めてね」

 アルマがそう感想を漏らした。この棚台は崖沿いに幅0.25サート(約1m)ほどの人が通れる道があったのである。道はやや下り坂で行先は濃霧に隠れて判らない。

 下を見てみると棚台が見つからない。どこにあるか分からない棚台を当てにするのは登攀の素人の僕らには難易度が高い。(トラップ)だろうなと誰もが思いつつ選択肢は進むしかないのである。

「とにかく進もう」


 その通路は右側が壁面の為に非常に厭らしい。大半の者は右利きなので武器が取り扱いにくいのだ。


 四半刻(三〇分)ほど進んだ頃だろうか。最初に異変に気が付いたのは瑞穂(みずほ)であった。

「この通路、狭くなってる」

 そう指摘されて確かめてみると幅が20サルト(約80cm)ほどに狭くなっている事に気が付いた。そのうち壁面に張り付いて横歩きで移動する事になるのだろうか?


 兎に角前進あるのみである。


 更に四半刻(三〇分)ほど進むと今度は普通に分かった。通路の幅が12.5サルト(約50cm)になっているのである。足元が見にくく僅かずつ幅を狭めているあたりが厭らしい。


 こうなると幅のある健司(けんじ)などは横歩きで移動となるし壁面を背に移動を開始する。これ絶対に壁面か真上から襲われるやつだわ…………。


ブックマーク、評価、感想、誤字報告などありがとうございます。

貴重なお時間を使って報告していただき感謝に堪えません。


ちょっとプロット見直したら流石に今のペースじゃ今年中に今章が終わらない事に気が付いた。少し見直して端折るかな。

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