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510話 試練の迷宮④

 取りあえず赤肌鬼(ゴブリン)一家を解体して万能素子結晶(マナ・クリスタル)を取り出そうとしていておかしな点に気が付いた。

 それは迷宮(アトラクション)産の怪物らは必ずと言っていい程、万能素子結晶(マナ・クリスタル)を持つのだけど上位種と呼ばれる個体と一部の赤肌鬼(ゴブリン)にそれらがなかった事だ。

 はじめは見落としたのかと思ったけど不快感を押し殺して解体を進めていくとやはり見つからなかった。


 考えられる事は上位種と一部個体は迷宮(アトラクション)産ではなく天然物だという事だ。召喚魔術(コンジュアレーション)にて集落ごと呼び込まれたのだろう。

 この迷宮(アトラクション)がこれまでため込んできた万能素子(マナ)がこういった召喚に用いられているとしたら階層主(フロアボス)、延いては最終ボスは強大な強さを持った敵になるのではないだろうか?

 悪い予感が当たらない事を祈る。

 階層ごとに報酬が出るタイプではないようで戦果と言えば赤肌鬼英雄ゴブリン・チャンピオンの所持していた魔法の大剣(グレートソード)くらいであった。

 ただこの剣は健司(けんじ)が使うにはやや短くしかも軽く持ち味を生かせないとの事で換金用となった。



 四日目の夜には三層の階層主(フロアボス)を撃破した。

 二層は昆虫系の怪物が跋扈し階層主(フロアボス)は生理的嫌悪感マックスの体長1.5サート(約6m)にもなる変異性超巨大黒蟲ミュータントヒュージローチと取り巻きの巨大黒蟲ジャイアントコックローチの軍団であった。

 発狂気味に放たれた和花(のどか)の【炎の壁ウォール・オブ・ファイア】の魔術で焼き尽くし焼け焦げた黒蟲(ローチ)らの臭いに辟易した。

 この階層ではボスに至るまですべてが迷宮(アトラクション)産の怪物であった。万能素子結晶(マナ・クリスタル)で懐が潤いそうである。


 三層目は巨大化した動物が主体であった。

 人間様って結構生物の中では雑魚に属しており巨大生物の体当たりとかで割とあっさり転がされる。

 体長0.25サート(約1m)ほどの巨大鼠(ジャイアントラット)の大群に悩まされ後肢が異常に発達した巨大角兎ジャイアント・ポルキャニンの突撃に危うく串刺しにされそうになったりしつつも階層主(フロアボス)である体長が1サート(約4m)にもなる四手熊フジョーヘンダル・バールアングと対戦した。

 硬い体毛、分厚い皮下脂肪、強固な筋肉による防御力は半端なくこちらの攻撃の多くは多少の出血を強いるものの持久戦の様相であった。二限(一〇分)を過ぎたあたりで疲労が見えた瞬間に強烈な一撃で健司(けんじ)が派手に吹き飛んだときは焦ったが最後は健司(けんじ)の突きが止めとなった。


 そしてこの階層から報酬部屋が出現したのである。



 僕らは報酬部屋の収納箱(チェスト)を前に悩んでいた。報酬部屋のサイズは8スクーナ(約4坪)ほどあり、それに対して収納箱(チェスト)の大きさは0.5スクーナ(約0.25坪)ほどある。

 瑞穂(みずほ)が調べた限りでは(トラップ)はあるとの事だ。(トラップ)の種類は解除をしないで開けるか収納箱(チェスト)に一定の衝撃を与えると発動するタイプらしい。解除の難易度はかなり高く、(トラップ)の効果は爆発か毒ガスではないかとの事だ。


「どうしたものか?」

 本来の目的は迷宮(アトラクション)の攻略であって別に個々の報酬など無視しても構わないのであるが…………。妙に引っかかる。


「…………開ける」

 暫く悩んでいると意を決したのか瑞穂(みずほ)が罠の解除に取り掛かった。正直言えば瑞穂(みずほ)の罠解除の経験はあまり多くない。イロハを教えた師匠曰く筋がいいとの言葉を信じるのみである。


 補助要員として僕が側で道具を渡したりと瑞穂(みずほ)の指示を聞きながら補助をする事一限(五分)ほどが過ぎたころだろうかカチリという開錠音が静まり返っていた部屋に響いたのであった。


「開いた」

「お疲れ様」

 僕としてはそう言って労いつつ頭を撫でることくらいしかできないがそれで満足したようだ。


 ただ開けようとしたら重くて開けられなかったので健司(けんじ)とダグにも手伝ってもらって開けたのであった。

 中身は…………。




 丁寧に折りたたまれた長衣(ローブ)長靴(スティバリー)指ぬき皮手袋(キャエスタズ)であった。


 こんな時にゲームみたいに鑑定スキルとかあれば楽なんだけどなぁ…………。文献と突き合わせて調べないと効果などは判らない。ゴミでない事を祈ろう。


 時間的にも四層攻略するには呪的資源(リソース)が心許ない。夕飯をとって一休みしようとなって各自支度を始めた。


 その間に僕は他の攻略グループがどうなっているか定時連絡で確認を取る。


 第二班は順調に進んでおり戦利品も多いとの事だ。期待してて欲しいといった感じであった。面子のチームワークにやや不安を覚える第三班は予想通りに難航しているとの事であった。負傷者も出ておりとのことだ。

 闇森霊族(ダークエルフ)半豚鬼(ハーフオーク)だけで構成された第四班は予想通り幾人か半豚鬼(ハーフオーク)を犠牲にして攻略しているそうだ。自分たちの待遇改善がかかっている事もあり半豚鬼(ハーフオーク)連中の士気は異常に高いという。


 そう言った話を夕飯時にして特に何のイベントもなく翌日となり第四層の攻略に取り掛かる。そして第四層はこれまでの迷路然としていた構造から大きく様変わりしていた。


「平原かぁ…………」

 そこは一面12.5サルト(約50cm)ほどの草に覆われた草原であった。これは草むらからの不意打ちも警戒しなければならず結構しんどい。


 この手のタイプは地面のどこかに下層への階段があるはずだ。そうなると階層主(フロアボス)は…………。


 幻覚魔術(イリュージョン)で隠されているのか見える範囲にはそれらしい生物は居ない。ただ(エレファンティ)河馬(ヒポポタマス)麒麟(パントヒラ)といった大型の生物がチラホラ見える。


 天然物でなければ侵入者である僕らを発見次第襲い掛かってくるだろう。視界が開けている分考えて動かないと詰みそうである。




ブックマーク、評価、感想、誤字報告などありがとうございます。

貴重なお時間を使って報告していただき感謝に堪えません。


仕事が忙しすぎるというか業務の上流側が仕様をコロコロ変えるので手直し業務に追われているといった感じだろうか。業務の主導権なく相手に振り回されているせいかストレスが半端ない…………。

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