506話 試練の迷宮①
取りあえず隙間時間で何とか一話分整えた。
光が消えると僕らは薄暗い広場に立っていた。流石に見世物を兼ねているだけあって初手から致死性罠が仕掛けられているなどはなかったようだ。
3サートの石壁に囲まれた部屋で正面に巨大な鉄扉があるのシンプルな部屋であった。
「ここは恐らく準備部屋だろうね。装備の確認をしよう」
その言葉で全員がそれぞれの装備の確認を行う。僕は打刀は[魔法の鞄]に戻し代わりに片手半剣を取り出す。これは師匠と会った時に貰ったブツである。神覇鉱と真銀製の合金製で軽量だが切先重心の為に重量の割りに振り回すと重く感じる。
上から下までガチガチの重武装で固め三日月斧を持つ健司。
重要範囲のみ神覇鉱製の防具で固め羽根付き槍をもつダグ。
とんがり帽子に前開きの長衣に[世界樹の長杖]を持つ和花。
祭司帽に法衣を纏いその下に真銀製の鎖帷子を身に着け天秤を模した司教杖を持つ。
瑞穂は上体は竜肌製の革鎧に肩掛け外套を羽織る。下は膝上2.5サルトほどミニスカートに膝下までの長靴である。肩掛け外套とスカートの中は隠し装備満載だ。左右に小剣を穿き手には機械式連弩を持つ。
僕はと言えば神覇鉱製の胸鎧の他にツナギ状の竜肌製の革鎧である。念のため左腕には刃留めをつけている。武器は師匠が寄こした最新の飾り気のない片手半剣だ。
扉には銘版がありそこにはこう書かれていた。
”汝、試練を求めるなら扉に触れよ”
準備が整ったのを確認すると瑞穂が大扉に触れる。意地の悪い罠はなく重々しく開いていく。その先は幅1サートで高さが1.5サートの継ぎ目が見当たらない石壁の通路がまっすぐと伸びている。
明かりは天井近くに間接照明があり僅かに明るいが正直言えば3.75サート先が分からない。
継ぎ目の見当たらない石の通路を瑞穂が音もたてずに進んでいく。もっともすぐ後ろの健司がガシャガシャと音を鳴らしているので台無しなんだけどね。
3.75サートほど歩いたところで瑞穂がピタリと歩みを止めると流れるような動作で機械式連弩を正面の暗がりへと三連射する。
ギャァァという悲鳴と共に二体の何かが暗がりから飛び出してきた。
「なんだ赤肌鬼じゃん」
そう言って健司が前に出ると三日月斧を一振り。その一撃は修行の賜物か以前より鋭くなっていたようであっさりと首が宙を舞う。
続いてダグが無言で刺突を入れると喉元を貫いた。以前より正確性が増したようである。二人とも鍛錬の成果がきちんと出ていた。
ここで赤肌鬼の死体が粒子が散っていくように消えていってくれるとゲームのようで楽なんだけどこれからグロいグロい万能素子結晶を採取タイムである。
人型を解体するのは毎回気分が滅入る…………。
瑞穂が倒した赤肌鬼三体も含めて五つの万能素子結晶を得た。今の価値一個につき中銀貨2枚くらいだろうか。これだけで迷宮都市ザルツなら数日は暮らせる。
呪的資源を考えて【洗濯】の魔術が使える指輪をダグに預けてありそれで身綺麗にすると通路を進んでいく。
更に5サートほど進むとそこは十字路であった。そして瑞穂が唐突に足を止め後ろ手で手信号の”止まれ”と示す。
何かがおかしい。
瑞穂が徐に[魔法の鞄]から定番装備の10フィート棒を取り出すとそれで床を突く。
その途端、床が撓んだかと思うと10フィート棒に絡みついた。
「やっぱり床擬態型粘土状疑似生命体だったか」
不意を打たれなければ動けないこいつを倒すのは訳がない。一限ほど撓む床を殴り続けていると動かなくなった。
程なくして液体となり床に吸収されると万能素子結晶だけが残された。
さて、どっちに進もうか?
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