505話 いざ迷宮攻略へ
四チームとそれらをサポートする面子を白鯨級潜航艦で運び拠点を構築するのに六日を要した。これは事前調査をしていなかった僕の落ち度だけど、この島は奇妙な事に中心部を中心に半径12.5サーグの区画では次元潜航出来なかったのだ。原因は時空の乱れらしいのだけど調査に要する余裕もなく大回りだけど島の中心を避けるようにそれぞれの迷宮の入り口の側に移動し何とか積み荷を降ろして簡易宿舎とか防壁を設置した。そしてサポートメンバーは交代で周辺の怪物を狩り始める。
特に問題はなかったようで中週の後半にはそれぞれのタイミングで迷宮へと突入する。
残念ながら連絡用のアイテムは製作が間に合わなかったのが痛い。その為に秋の中月の末日に一旦は迷宮から出て進捗確認する事となった。
ちなみに僕らの担当エリアはサポートチームの拠点を構築していない。それには理由がある。それはその地点が以前に遭遇した緑竜の活動エリアだからだ。休眠期であればほとんど動かないのだけどどうやら最新情報では活動期に入ったようで旺盛な食欲を満たすために目につく生物は片っ端から襲い掛かっている状態だという。
どの程度の強さかは不明であるが最低でも大竜クラスであり最悪の場合は古竜クラスでありうちの共同体の精鋭で対処してもそれなりの数の死亡者が出る覚悟が必要となる。
基本的に迷宮の入り口付近で白鯨級潜航艦に待機してもらう事になる。
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「それじゃ試しに潜ってみようか」
軽く宣言してお馴染みの隊列で廃墟にぽっかりと開いた開口部へと進んでいく。
迷宮宝珠によって生成された迷宮は大きく分けて二通りある。ひとつは住居兼研究施設。もう一つが闘技場のように奴隷を戦わせてそれを肴に食事を楽しむタイプである。迷宮都市ザルツの最も深き迷宮は後者であった。
事前情報としてわかっている事は迷宮主は連絡が付かないので恐らく死亡しているだろうとの事。
事前に決められた怪物を万能素子が続く限り生成している事だけである。
迷宮宝珠が生成できる怪物には創成魔術の法則が適用されるのでいくつか制限があり、生物として未だに解明されていない竜種や魔神などは出現しない筈である。
開口部は45度の角度で下っており幅2サート、高さ2サートとかなり大きい。だがこれだけで内部で遭遇する可能性のある敵をいくつか候補から除外できる。
下り坂を一限ほど進んだ先に広場があった。
「これは闘技場タイプかな?」
広場は野球場サイズはあり壁際には観客席のようなものがあり天井が10サートと高く中央に巨大な門扉が存在した。設備が破損しているようだけど本来はここに映像盤があったはずだ。
「このタイプは結構致死性の罠とかもあるから気を引き締めていこう」
そう告げた後に中央の巨大な門扉へと歩いていく。ここから迷宮に突入するのだろう。構造的に内部の怪物は外に出れないので寿命がない知恵をつけた魔獣などが徘徊している可能性がある。
迷宮攻略が楽な要因は怪物が知能がほぼない事だ。本能らしきものだけで襲い掛かってくる。
知恵がつくと罠を仕掛けて来たり連帯してきたりする。こうなると難易度が一気に上がる。
中央に聳える門扉の前まで来る。門扉が開く形跡がない。周囲を観察すると石碑があった。
そこには二万年前の下位古代語でこう彫られていた。
「我、勇気の証を得るまで帰還能わず」
そう口にした途端、門扉が重々しい音と共に開いていき真っ白い空間が広がっていた。これは宣言をした僕が入った時点で閉じるか時間が来ると勝手に閉じるタイプだと思う。
その時瑞穂と目が合った。
頷くと何の恐れもないと言わんばかりに光の中へと消えていった。皆分かっているようで無言で光の中へと入っていく。
そして最後に僕が光の中へと入っていくと重々しく扉が閉じる音が響いた。
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書きかけが800文字くらいなので今回はここで更新停止。次回は21日くらいの予定。




