504話 準備完了
「高屋君の案を受け入れようかと思うんだが、その前に確認したいことがある」
そう前置きして佐藤君が告げた話は連れて来た子供らの処遇である。それは至極当然の話である。基本的には佐藤君に同伴させ現地の拠点で教育する。教育内容は公用交易語の学習と中等教育の他に雑役女中見習いとして身の回りの世話をさせるかと考えていると告げる。余裕があれば希望の職に就けるように支援をする事も付け加える。
「それなら問題ないな」
そこで終わりかと思ったら佐藤君に同伴していた一番上の娘が反発した。自分は冒険者として仕事に同伴したいというのである。
これは予想されていた事態であった。
到着後に健康診断と精神チェックを行ったところ年上の娘らは佐藤君に身も心も捧げるレベルで心酔していたのだ。
まぁ~境遇から考えれば分からない事もないが…………。一過性の可能性もあり世の中を知り視野が広がれば自然と解消される可能性もあるので好きにさせようという事になった。
いくつかの[教育の宝珠]を選別して彼らは支度をするために去っていった。
事務員に西方までの魔導列車の乗車券を人数分手配するように指示して終わりである。
残りは佐藤君がここに来る直前に保護した娘らだ。どちらの娘も一度僕らと同じでこっちの世界に来ており一人は妓館で見受けした子だ。一通りの教養を身に着けており仕事先はいくらでもある。本人も馴染みのあるここで働きたいとの事であったので問題はないのだけど。もう一人の方だ。
こっちの世界では体内保有万能素子電池要員として本来の召喚場である神聖プロレタリア帝国の白亜の塔に捕らわれていた事もありこっちの世界については良く知らなかった。
それが今回の異世界渡航で故郷に戻れないショックとおっさんらのアレ処理要員となったことで壊れてしまったようでこれまで誰も目覚めなかったこっちの世界の神の声を聴いてしまったのだ。信仰に目覚めたという事だね。
美優も似たような事が出来るがアレは神寵の恩恵でしかない。
まだ初歩的な奇跡しか起こせないが佐藤君に同伴してもらおうかと考えている。それが嫌なら始祖神の女性修道院に預けるしかないかな?
その後はいくつかの事務仕事を処理して残りはメイザン司教に委任した。
東方の保護した難民たちも無事にルカタン半島に到着したとの事でとりあえずこっちでやれることは一応片付いた。
そうえいば東方と言えば小型真銀魔像がいまだに結社が持ち逃げした長杖を追っているらしくあちこちに点在する結社の拠点を破壊しまくっているという。いい加減にその長杖捨てればいいのにねぇ…………。
真銀魔像を倒せる者もおらず関所の門や市壁の強固な門を粉砕されるという冗談みたいな展開となっているそうだ。
そして一週間遅れた秋の前月の中週。
僕らは訓練も終え迷宮攻略の準備も整ったのである。
終末戦争? しらんしらん。
ブックマーク、評価、感想、誤字報告などありがとうございます。
貴重なお時間を使って報告していただき感謝に堪えません。
忙しいというべきか歳というべきか罪を消化が思った以上に進まないのに罪が増えていく。
そして拘束時間の少ないスマホゲーすら最近は億劫である。




