503話
「迷宮攻略しない?」
僕は佐藤君の特性からもっとも向いている仕事を提案した。なぜかと言えば彼が恐らく召喚の際に技能宝珠によって技術を刷り込まれた戦士としての技術が向いているからだ。
「どういう事だ?」
自身の才能に気が付いていないようなので懇切丁寧に説明する。彼は初見に対しては付与された技能がそのまま生きる。迷宮の敵は基本的には本能に忠実で学習能力は低く一流の戦士として力量を遺憾なく発揮できる。
そのかわり対人戦は序盤で勝ちを拾えないとダメだけどね。
そして彼を補強するためにこの間の遺跡で拾った魔法の工芸品が役に立つ。
今更彼に数年単位の修練を科しても仕方ないのだ。
「佐藤君。これを使ってみない?」
僕はそう言って宝珠をいくつか取り出しテーブルに置く。これは造りたての人造人間に技術をインストールする為の魔法の工芸品でその名を[教育の宝珠]である。効果のほどは封入された知識や技術を得る事が可能である。欠点もあり得た技能に関しては自前で育てる事が出来なくなる事だ。また発想の転換などの応用なども出来ない。
魔法なども導管が育っていないとせっかくの技術が宝の持ち腐れになるケースもある。
そう言った事を説明していった。
「悪くないね。俺としては十年後に強くなれると言われるより即席でもある程度の力が欲しいからな」
どうやら佐藤君は[教育の宝珠]を使う事に肯定的なようだ。僕らだと絶対お断りだったんだけどね。
まずは必要な技術や知識を数日かけてピックアップしてもらう事にした。
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佐藤君らがゆっくりと身体を休めている合間に僕はといえば東方の難民キャンプへと向かっていた。
事前に渡した大型輸送馬車などの評価を確認に行ったのだ。
「あんなもん気前よくポンと渡してよかったのかね?」
ゲオルグがいうあんなもんとは強軽銀骨格の大型輸送馬車に牽引用に多脚戦車を用意したのだ。
どうせ自動工場で片手間に生産できる程度の性能である。
実際のところ戦闘能力も高く小規模の野盗を幾度か退けている。移動に関しても大型輸送馬車を連結する事で移動速度も向上したとの事だ。
現在位置は東方の南部域でも西部に近くあと50サーグほどでルカタン半島の巨壁に到達するという。彼らは懐かしの迷宮都市ザルツに向かっているのである。
あそこで生産奴隷として契約すれば地域に拘束されるが数年は食うに困ることはない。その間に中原式の農業技術などを学んで慰労金も出る。それを元手に開拓村に移住するなり故郷に帰るなりする選択肢が生まれる。
既に迷宮都市ザルツ側の受け入れ態勢は整っている。これは【転移】で移動できる僕の仕事であった。
証文もあるので問題は無いはずだ。中原勢は大量の生産奴隷を欲している。
派遣した防衛軍のおじさんら二個小隊もかなり溶け込んでいるようで七割近くが結婚を視野に入れているという状態だという。こっちの女性はものすごい高望みしないから人並みに稼げて暴力を振るわなければ合格だしねぇ。
逆におじさんらはこっちの男とは違ってバツイチ女性に心理的抵抗が薄い。
計画通り…………。
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