502話
ようやく幕間51に追いつき追い越した。
大きな事件もなく日々が過ぎていく。そんなある日の事だ。フリューゲル師から報告があった。
佐藤君らに報復をするために脱獄し街道で待ち伏せしていた金色の勇者一行をぼこって捕縛したというのである。身柄は借金を背負った佐藤君へプレゼントとして道端に放置したそうだ。よほど運が悪くなければ回収できるはずであるというのである。
流石は悪運持ちと感心するべきであろう。報告が上がったのは運悪く取り逃がした野盗の生き残りと佐藤君が遭遇し戦闘になったという。
何とか退けた後に保護されなかった非戦闘員の娘らを同乗させてこちらに向かっているという。市壁で入都手続きを終えたというのであと一刻もすれば到着するだろう。
出迎えるとするかな。
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無事に到着した佐藤君から八半刻ほど文句を言われたものの全部聞き流した。
そしてこちらの用件を告げる。
「佐藤君は後ろの娘らの解放を望むんだよね? 恐らくだけど手持ちの資金だけじゃ足りないと思うんだけど契約通りウチで働くという事でいいんだよね?」
「ん? 働くのは聞いているけど具体的な待遇とかは?」
「あれ? 魔法の契約書を見ていないの?」
「俺が読める訳ないじゃん!」
「いや、読んでもらいなよ!」
思わずそう突っ込んでしまった。
仕方ないので懇切丁寧に説明する。
すると――――。
「えっ、俺って奴隷なの?」
「君はうちの共同体に金貨50枚を無利息で借金した借金奴隷だよ。返済義務を果たすまでは契約に沿て労働する決まりがある。規定額の返済が終われば放免だ」
契約は返済期限はないし利息もない。狭いが個室貸与で衣食住も保証されているし最低限の給与も出る。これほどの待遇はちょっとないと思うんだけどねぇ。
「それは理解した。それじゃあの娘らは?」
「一般常識で鑑みると君の所有物扱いなんで同じ部屋なんだけど流石に鮨詰めで虐待扱いになるし彼女らにも個室は貸与するよ。それに共同体で決められた仕事を熟してくれれば対価はでる」
「幼い娘を働かせるのか?」
「ここじゃあの年齢での労働は珍しくないし、うちでは最低でも中等教育と公用交易語が不便なく使えるレベルまで学ぶのも仕事のうちだよ」
要するに自立して職業の選択肢が増えるうえに少ないけど賃金が出るのだ。なんか怒られる要因ある?
子供らは佐藤君とは違い労働奴隷のため自力で解呪料を払うか主人格の人が払わない限りは自由民にはなれない。
少し考えてから佐藤くんは「分かった」と頷いた。
「ちなみに今の佐藤君の資産から計算すると最初の労働条件で働いた場合は必要額に届くのに15年はかかると思うけど――――」
「そんなに!」
「君の借金金貨50枚と彼女たちの解呪料金貨400枚の他に彼女らは自分らを買い戻すために自分たちの能力に合った金額を別途支払う必要がある。有能は人ほど高額になる。それが労働奴隷の決まる。総額は…………」
単純に考えてもすべてが払い終わるには金貨600枚は必要になる。
「それじゃ遅いんだよ!」
「そうなると佐藤君の仕事内容を変更して稼げる業務に変えないとね。そうだなぁ…………」
そこで佐藤君の特性に思い至った。
「迷宮攻略しない?」
ブックマーク、評価、感想、誤字報告などありがとうございます。
貴重なお時間を使って報告していただき感謝に堪えません。
しかし自分の粗探しって下手過ぎてダメだなぁ。




