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501話

10月から月月火水木金金生活に入るので中途半端ですが更新は不定期に戻ります。

 あくる日、とんでもない情報が入った。帰還不可となって散り散りとなった防衛軍の人達の中で作戦行動中行方不明(MIA)となった者たちの所在だ。

 どうやら事前に撃墜を虚偽報告して輸送回転翼機ライボーズ・ギラビアンをいずこかに隠し持ち隙を見て少しずつ物資を運び込んでいたようだ。

 そんな彼らだが一個小隊(およそ30人)規模で野盗(マリング)と化したようだ。どういう訳か輸送回転翼機ライボーズ・ギラビアンは現在は存在しない。恐らくだけど中原(セントルム)に来る際に空で活動する魔物に襲われて壊れてしまったのではないだろうか?

 流石に[神の視点ポント・ビスタ・ディ・ディウス]を以てしてもこの広大なアルム大陸から輸送回転翼機ライボーズ・ギラビアンを一機見つけるのは至難の業だ。


 取りあえず[神の視点ポント・ビスタ・ディ・ディウス]に報告のあったあたりを確認すると確かに汎用トラックに牽引される重迫撃砲(モーターカノン)と高機動車が映っている。


 燃料は兎も角として残弾はどの程度だろうか? そう言えば佐藤君()もこの辺りを移動していたな。つくづく運の悪いというか…………。



 ▲△▲△▲△▲△▲△▲



 重火器で武装した野盗(マリング)らの近くの宿場町(ポストコント)佐藤君()と偶然を装って迂回路を提示した。変に特に反発せずに迂回路を進んでくれたようで戦場は回避できたようだ。警護がてら砂漠の民(スナデル)に安全圏まで同伴してもらう。


 肝心の地方領主の騎士団(ベルトラング)だが、魔導騎士(マギ・キャバリエ)3騎、魔導従士(マギ・スレイブ)5騎の編成の他に随伴として重装歩兵(ホプリテス)二個小隊(およそ60人)弓兵(サジテアリアス)一個小隊(およそ30人)の他に軽装騎兵(ライト・キャバリア)が数騎の他に輜重隊とそれの警護の歩兵(ペダイテズ)がつく。


 戦場は中原(セントルム)では一般的な起伏の少ない見通しの良い平原であった。口火を切ったのは野盗(マリング)どもであった。

 迫撃砲(モーターカノン)の先制で指揮官(コマンダイト)であった何とかという男爵(バロン)が僚騎もろとも吹き飛んだ。

 混乱を極める中で軽対戦車誘導弾(ATM)が残りの魔導騎士(マギ・キャバリエ)魔導従士(マギ・スレイブ)を撃破し分隊支援火器(SAW)の銃弾が射程距離(レンジ)外から随伴の歩兵(ペダイテズ)弓兵(サジテアリアス)を蜂の巣にし瞬く間に平原を血で赤く染め上げた。


 戦闘と呼べるものではなかったがこの世界と元の世界との兵力差を考えたら予想通りの結末であった。


 野盗(マリング)の部隊を見ると非戦闘員として連れ歩いている女性の中に見知った人物がいた。僕らと共に強制召喚された挙句に妓館(ブロセル)で教育を受けていただ。僕らで見受けして日本(やまと)帝国に帰還できたはずなんだけど公用交易語(トレディア)が出来る事で交渉役ないし案内役として連れてこられたのだろうか? 運のないだ。


 防衛軍のおじさんらも助けてやりたいがおそらくはもう賞金が掛けられている事だろう。何せ今しがた貴族、それも地方領主を殺害してしまったからだ。匿えば僕らも同罪として処理されるだろう。

 多くの人を抱える組織の長としては彼らを見殺しにするしかない。

 雲龍(うんりゅう)三等陸佐の話では既に戦死扱いらしいので居ない者としての扱いらしい。ただ非戦闘員だけでも何とかしたいと僕と同意見であった。



 ▲△▲△▲△▲△▲△▲



 周囲は篝火が焚かれ防衛軍兵士(おじさん)らが酒盛りしている。輜重隊の物資をゲットしたようだ。どんな環境に居たのか想像したくないがかなり不衛生な印象を受ける。

 非戦闘員の女性らだが基本的には飯炊きとアレの処理として連れ歩いているようだ。恰好も薄汚れた貫頭衣(コプフ・レケン)とまるで南方(アサド)奴隷(スクラブ)のような扱いである。とても文明人のやる所業じゃないなぁ。


 よく見れば10人中8人は現地人のようである。村を襲った際に生け捕りにでもしたのだろう。残りの二名は見知った顔であった。以前帰還作業で送り返したらだ。

 学生もアレの対象に加えた時点で僕の中では完全に同情心とかはすべて消えた。あいつらは人の姿をした怪物だ。

 問題は非戦闘員をどう助けるか? 

 もうすぐ王太子直属の騎士団(ベルトラング)が来るはずなので彼らに救助させるか? それが良いかな。なまじ顔を知ってるだけにどういう表情(かお)していいのか…………。


 準備する事にした。

 僕は双眼鏡(ファーングラス)を[魔法の鞄(ホールディングバッグ)]に戻すと大きな箱を取り出し地面に置く。箱を開くと中には分解された対巨獣長尺加速投射器(物干し竿)が入っており手順書に従って組み立てていく。【暗視(ナイトビジョン)】の魔術を用いているので雲の多い今夜でも昼間のように明るい。

 ここは戦場予定地の平原であり今夜はやや雲が多く野盗(マリング)どもから1サーグ(約4km)ほど離れている。この状態で僕を見つけられたらそいつは恐らく色々な意味で化け物だろう。

 この対巨獣長尺加速投射器(物干し竿)の良いところは趣味人がデザインしたであろう対物ライフルをさらに大きくしただけの外観だが銃ではないという点だ。

 立派な魔法の工芸品(アーティファクト)であり弾道計算やらを必要とせず固定目標に音速の20倍の速度で神覇鉱(ヴァーラル)弾丸(ブリッド)を叩き込む点にある。

 二脚(バイポッド)を展開し伏せ打ちの体勢を取る。そもそもこの対巨獣長尺加速投射器(物干し竿)の重量が36グロー(約30kg)もあり立射や膝立射は無理なのである。照準器(スコープ)を覗き十字線(レティクル)の中心に標的をおさめ引金(トリガー)を引けば赤子でも標的に当たる簡単仕様である。

 施された各種魔術の補正で物理法則の大半は無効化されている。


 なら重量を軽くしてくれよと思わなくもないが重量軽減はコストが馬鹿にならないのである。


 標的は捉えた。非戦闘員に被害が出ない方角からの射撃だ。足元の【幻影地図ファンタズマル・マップ】を確認する。

 王太子直属の騎士団(ベルトラング)2.5サーグ(約10km)先まで来ている。指揮官は夜更け近くのこんな時間でも明かりをつけずに部隊を移動させている。艶消し黒で全身を塗装された重装(ラーフ)型の魔導従士(マギ・スレイブ)は殆ど移動音を立てていない。恐らく魔導隠行騎(マギ・コンシールダー)を使っているのだろう。


 僕は照準器(スコープ)を覗き十字線(レティクル)の中心に標的をおさめ引金(トリガー)に指をかける。


日本(やまと)帝国の法の及ばない異世界で好き放題やって楽しかったかい? でもそれももう終わりだよ」


 そう呟き引金(トリガー)を引く。


 野盗(マリング)どもの陣営に巨大な火柱が上がった。

ブックマーク、評価、感想、誤字報告などありがとうございます。

貴重なお時間を使って報告していただき感謝に堪えません。


古参社員の新しい業務への教育を行わず出来る人間だけで作業しましょうってのはどうかと思うんですよ。

リアで「あの人、使えないからいりません」とかいう日が来るとは…………。

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