501話
10月から月月火水木金金生活に入るので中途半端ですが更新は不定期に戻ります。
あくる日、とんでもない情報が入った。帰還不可となって散り散りとなった防衛軍の人達の中で作戦行動中行方不明となった者たちの所在だ。
どうやら事前に撃墜を虚偽報告して輸送回転翼機をいずこかに隠し持ち隙を見て少しずつ物資を運び込んでいたようだ。
そんな彼らだが一個小隊規模で野盗と化したようだ。どういう訳か輸送回転翼機は現在は存在しない。恐らくだけど中原に来る際に空で活動する魔物に襲われて壊れてしまったのではないだろうか?
流石に[神の視点]を以てしてもこの広大なアルム大陸から輸送回転翼機を一機見つけるのは至難の業だ。
取りあえず[神の視点]に報告のあったあたりを確認すると確かに汎用トラックに牽引される重迫撃砲と高機動車が映っている。
燃料は兎も角として残弾はどの程度だろうか? そう言えば佐藤君もこの辺りを移動していたな。つくづく運の悪いというか…………。
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重火器で武装した野盗らの近くの宿場町で佐藤君と偶然を装って迂回路を提示した。変に特に反発せずに迂回路を進んでくれたようで戦場は回避できたようだ。警護がてら砂漠の民に安全圏まで同伴してもらう。
肝心の地方領主の騎士団だが、魔導騎士3騎、魔導従士5騎の編成の他に随伴として重装歩兵が二個小隊と弓兵が一個小隊の他に軽装騎兵が数騎の他に輜重隊とそれの警護の歩兵がつく。
戦場は中原では一般的な起伏の少ない見通しの良い平原であった。口火を切ったのは野盗どもであった。
迫撃砲の先制で指揮官であった何とかという男爵が僚騎もろとも吹き飛んだ。
混乱を極める中で軽対戦車誘導弾が残りの魔導騎士と魔導従士を撃破し分隊支援火器の銃弾が射程距離外から随伴の歩兵と弓兵を蜂の巣にし瞬く間に平原を血で赤く染め上げた。
戦闘と呼べるものではなかったがこの世界と元の世界との兵力差を考えたら予想通りの結末であった。
野盗の部隊を見ると非戦闘員として連れ歩いている女性の中に見知った人物がいた。僕らと共に強制召喚された挙句に妓館で教育を受けていた娘だ。僕らで見受けして日本帝国に帰還できたはずなんだけど公用交易語が出来る事で交渉役ないし案内役として連れてこられたのだろうか? 運のない娘だ。
防衛軍のおじさんらも助けてやりたいがおそらくはもう賞金が掛けられている事だろう。何せ今しがた貴族、それも地方領主を殺害してしまったからだ。匿えば僕らも同罪として処理されるだろう。
多くの人を抱える組織の長としては彼らを見殺しにするしかない。
雲龍三等陸佐の話では既に戦死扱いらしいので居ない者としての扱いらしい。ただ非戦闘員だけでも何とかしたいと僕と同意見であった。
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周囲は篝火が焚かれ防衛軍兵士らが酒盛りしている。輜重隊の物資をゲットしたようだ。どんな環境に居たのか想像したくないがかなり不衛生な印象を受ける。
非戦闘員の女性らだが基本的には飯炊きとアレの処理として連れ歩いているようだ。恰好も薄汚れた貫頭衣とまるで南方の奴隷のような扱いである。とても文明人のやる所業じゃないなぁ。
よく見れば10人中8人は現地人のようである。村を襲った際に生け捕りにでもしたのだろう。残りの二名は見知った顔であった。以前帰還作業で送り返した娘らだ。
学生もアレの対象に加えた時点で僕の中では完全に同情心とかはすべて消えた。あいつらは人の姿をした怪物だ。
問題は非戦闘員をどう助けるか?
もうすぐ王太子直属の騎士団が来るはずなので彼らに救助させるか? それが良いかな。なまじ顔を知ってる娘だけにどういう表情していいのか…………。
準備する事にした。
僕は双眼鏡を[魔法の鞄]に戻すと大きな箱を取り出し地面に置く。箱を開くと中には分解された対巨獣長尺加速投射器が入っており手順書に従って組み立てていく。【暗視】の魔術を用いているので雲の多い今夜でも昼間のように明るい。
ここは戦場予定地の平原であり今夜はやや雲が多く野盗どもから1サーグほど離れている。この状態で僕を見つけられたらそいつは恐らく色々な意味で化け物だろう。
この対巨獣長尺加速投射器の良いところは趣味人がデザインしたであろう対物ライフルをさらに大きくしただけの外観だが銃ではないという点だ。
立派な魔法の工芸品であり弾道計算やらを必要とせず固定目標に音速の20倍の速度で神覇鉱の弾丸を叩き込む点にある。
二脚を展開し伏せ打ちの体勢を取る。そもそもこの対巨獣長尺加速投射器の重量が36グローもあり立射や膝立射は無理なのである。照準器を覗き十字線の中心に標的をおさめ引金を引けば赤子でも標的に当たる簡単仕様である。
施された各種魔術の補正で物理法則の大半は無効化されている。
なら重量を軽くしてくれよと思わなくもないが重量軽減はコストが馬鹿にならないのである。
標的は捉えた。非戦闘員に被害が出ない方角からの射撃だ。足元の【幻影地図】を確認する。
王太子直属の騎士団が2.5サーグ先まで来ている。指揮官は夜更け近くのこんな時間でも明かりをつけずに部隊を移動させている。艶消し黒で全身を塗装された重装型の魔導従士は殆ど移動音を立てていない。恐らく魔導隠行騎を使っているのだろう。
僕は照準器を覗き十字線の中心に標的をおさめ引金に指をかける。
「日本帝国の法の及ばない異世界で好き放題やって楽しかったかい? でもそれももう終わりだよ」
そう呟き引金を引く。
野盗どもの陣営に巨大な火柱が上がった。
ブックマーク、評価、感想、誤字報告などありがとうございます。
貴重なお時間を使って報告していただき感謝に堪えません。
古参社員の新しい業務への教育を行わず出来る人間だけで作業しましょうってのはどうかと思うんですよ。
リアで「あの人、使えないからいりません」とかいう日が来るとは…………。




