498話
本編再開
幕間-41あたりの時期になります。
ハーンのおねだりで魔光石の原石が必要になりメイザン司教に取り寄せてくれとお願いに行くと非常に嫌そうな表情をされる。聖職者であり、やり手の商売人の彼を以てしても入手が大変な代物なのだ。
その後は東方の難民キャンプに様子見に行くと既に送り込んだ隊員のうち数人が現地の女性とカップルとなっていた。中には未亡人とくっついた者も居たけど、この戦争で旦那を失ったばかりなのに切替早いな…………。
ただ東方情勢はひどくなっており赤の帝国が言いがかりをつけて南部域への侵攻を開始したのだ。既にいくつかの小国が呑み込まれている。彼らは戦争難民を国家反逆者に加担した者としている。その為にこの難民キャンプも移動を余儀なくされた。
その為かみんなが慌ただしく移動準備を始めている。特に忙しく動いているのがうちから派遣した元防衛軍の二個小隊だ。
元防衛軍の隊員たちも不安を覚えているようだけど申し訳ないがまだ受け入れ準備が終わっていない。
一通り様子を見てこのキャンプを纏めているかつて仲間であった地霊族のゲオルグと面会する。
「援助の方は大丈夫そう?」
僕は挨拶もそこそこ本題を切り出す。
「食料などは贅沢言わなければな。じゃが…………後から合流してきた老人たちが問題でなぁ…………」
そう言ってゲオルグは溜息をつく。気が付けば8千人の難民を抱える大所帯となっており様々なものが不足しているという。
本来この世界の老人たちは若い世代を生かす為なら年老いた自分たちが犠牲になるのが当然だと考えている。実際若い世代を逃がすために囮となった勇敢な老人たちを見た。あれがここでは普通だ。
ところが今回きた老人たちはというと…………。
「年寄りを敬え。食料を寄こせ。寝床を寄こせと煩いうえに酷い者は子供から食料を取り上げる者もいるんじゃ」
そして取り上げた食料を子供に返せと言えば、「わし等に死ねというのか!」とか「貴様に年寄りを敬う気持ちはないのか!」とか「我々が苦労してきたおかげで今のおまえたちが居るんじゃぞ」と騒ぎ始める。
配分は平等のはずだと言っても聞き分けない。かといって受け入れた以上排除も難しく皆が困っているのだそうだ。
「流石にうちでも引き取れないしなぁ」
数年後には働いてくれる猶予期間の子らなら歓迎だけど。農作業などに従事してもらうとしても東方の古臭い非効率なやり方の方から得る物もないしなぁ…………。だからこそ生産が低い。これは建国ごっこで小国を乱立させまくっていた為政者たちの責任でもある。中原は一次生産者の効率を上げるために様々な投資を行っている。
「そうじゃ。実は――――」
ゲオルグはそう言って一枚の手配書を見せた。
その手配書の男は水鏡先輩であった。生死問わずで賞金が金貨100万枚となっていた。
発行元は赤の帝国である。罪状は書いていない。
実は水鏡先輩が尋ねて来たそうだ。てっきり青の勇者殿との再戦かと思いきや、理由は不明だが追われている身であり町にも入れないので食料を分けて欲しいという事で分けたんだそうだ。
「確か知り合いじゃろ?」
「そうだね」
そう答えたものの味方ではないんだよねぇ…………。僕の反応で水鏡先輩との距離感を察したゲオルグは話題を変えた。
「そうじゃ。大型輸送馬車の都合がつかんかね?」
「台数は?」
「そうじゃのぉ…………。出来れば5台。輓馬も用意してもらえると助かる」
難民に関しては見殺しにするみたいで気が滅入っていたんだよねぇ。ここは我が身の罪悪感を少しでも軽減する意味も込めて援助するとしよう。
「分かった。大型輸送馬車五台と輓馬20頭を用意するよ。明後日でいい?」
流石に輓馬はお店に陳列してるわけではないのでポンとは買えない。
代理店で話を通して馬牧場への紹介状を書いてもらい牧場で実際に輓馬を見て契約する事になる。急ぎで買うとなるとある程度歳を取った輓馬になるだろう。
いや、待てよ…………。
良い方法を思いついた。
明後日の夕刻に所定の場所で落ち合う約束をして僕は例の島へと戻るのであった。
ブックマーク、評価、感想、誤字報告などありがとうございます。
貴重なお時間を使って報告していただき感謝に堪えません。
「Going Medieval」の大型update来るとついに地下帝国もダメそうになるなぁ。あのゲームは地上に建築するより地下を掘り進んだ方が楽だったんだよなぁ。




