幕間-49 召喚された者のその後⑭
何事もなく一夜が明けた。時速1.1ノードほどで歩き続けたけど甲竜に疲れは見えない。
移動しつつ車内でそのまま食べられるライ麦パンや硬乾酪などの定番の食事を済まる頃には次の補給箇所である宿場町が見えて来た。町と言っても旅人相手の商売をするために集まった集団で人口も500人にも満たないので本来であれば町としてはカウントされないそうだ。
開門と同時に入都手続きを行い大型輸送馬車を預けた後に組合へと荷物を持って向かう。
ここで驚いた事に予想外の人物と遭遇した。
「あれ? 佐藤君?」
その声は久しぶりに聞いた。思わず言いたいことが募ってくる。
「高屋君。なんで俺を置いて先に行っちゃんったんだよ!」
「なんでと言われても仕事が終わったから? 君、部外者だし」
そんな事を言い小首を傾げる。いくら君がイケメン族とはいっても男がやっても可愛くないんだよ。
俺はあれからの出来事を高ぶる感情を押さえつつ語ってしまった。よくよく考えればそれを黙って聞いてくれる高屋君はお人好しだなとか後で思った。
「借金の件は大変だとは思うけど期日までに間に合うのかい?」
話を聞いた後高屋君はよく分からない事を問う。俺の計算では一週間も猶予があるはずだ。そう伝えると高屋君が驚くべき情報を口にした。
「この先で大規模な軍事作戦中で通行止めだよ」
「は?」
「なんか重火器で武装した野盗集団が暴れているらしくてそれに対処するために騎士団が動いてるんだよ」
重火器って言った? たしかこの世界の銃器って火縄銃や燧発式銃だよね? でもあれは重火器とは呼ばないし。もしかして現代兵器で無双とかいう展開なのか?
「それって大丈夫なのかよ」
「普通に考えれば返り討ちにされるよね。でも弾薬は無限じゃないだろうし王太子直属の騎士団が後続で出陣しているから意地でも何とかするんじゃない?」
高屋君の言い様は完全に他人事である。
どうやって調べたかは知らないけど高屋君の調査結果だと現在分かっている野盗の数は重火器で武装した一個小隊ほどおり、他に非戦闘員と思われる若い女性を10人未満程連れ歩いているとの事だ。装備もある程度は判明しており牽引式の重迫撃砲が1門、軽迫撃砲が2門、軽対戦車誘導弾の発射機が3機、分隊支援火器が3挺、狙撃銃が1挺、他に全員が突撃銃で武装しているそうだ。あとはそれぞれが標準装備として拳銃と大振りの短剣を装備している。彼らの移動手段としては脚として高機動車と汎用トラックが一両ずつあるという。
「待った! なんでこの世界にそんなもんがあるの?」
思わず突っ込んでしまった。頭の中では戦〇自衛隊かよとか突っ込もうかと思ったのは内緒だ。
「なんでと言われても少し前に傍迷惑な人達が持ち込んだものだよ」
そう言って高屋君が数か月前にあった出来事をざっくりと説明してくれた。ある程度兵器は回収したとの事だけどどうやら事前に武器弾薬を横流しをして何処かに隠し持っていた集団が居たらしい。
騎士団の装備も割と新しい装備とは言え甲冑程度は紙ぺらと大差ないし魔導騎士も当たり所が悪ければ分隊支援火器でやられるかもねとの事であった。
「暫く周辺に近づけないので南東方向の旧街道を通って――――」
高屋君は地理に明るくない俺の為にどのルートがおすすめか教えてくれた。
「それじゃ、仕事があるから僕は行くよ。次会う時まで壮健で」
そう言って手を振って去っていく。姿が見えなくなる前に褐色の肌の大柄の女性と話し込んでいるのが見えた。暫く話し込んで満足したのか両者は分かれて人ごみに紛れてしまった。
ところで十字路都市テントスって広いんだろ? 再会とかできるのかね?
しかし現代兵器で無双っていいよねとか思っているとオリヴィエが各種手続きを終わらせており俺が妄想の世界から返ってくるのを大人しく待っていた。
妄想の中で野盗達から武器を盗めないだろうかとか思ったよ。でも子供らをは引き連れては流石に無理だなと思った。
今夜は木賃宿に宿泊する事にした。寝心地がいいわけでもない車内で幾日も寝ており地味に疲労がたまっている。身綺麗にしている事もあり奴隷だからと言ってお断りされる事もなく大部屋を一部屋使わせてもらう事になった。
たまには食事も良いものを食べさせてあげたいと思ってぞろぞろと連れたって食堂へと入る。特に主食の堅焼きライ麦パンにはいい加減飽きた。
公用交易語が殆ど読めない俺の代わりにオリヴィエに注文してもらう。程なくして出されたものは主食として出てきたのが半ライ麦パンであった。こいつ、あまり硬くないぞ!
主菜にスライスした硬乾酪を乗せた大きなハンバーグに付け合せに彩り豊かな温野菜、それにコーンポタージュがつく。肉に関しては久しぶりの巨大鼠以外の肉である! 肉の量は推定で240グリムくらいある。
ただしお値段もそれなりで一食小銀貨15枚であった。本来の俺の稼ぎであれば上限は小銀貨5枚が限度である。でもたまにだから良いよな。子供らも良い笑顔で食べている。
翌朝は日の出とともに起きて支度を済ませると日雇い労働者向けの大衆食堂で久しぶりの長期保存を考慮してない焼きたてのライ麦パンと少ないがなんかの干し肉となんかの野菜の入ったしょっぱい汁物で朝食を済ませてから、お昼用にという事で露店で豚肉の串焼きを購入して高屋君の忠告通りに南東方面の旧街道を往く。
同じ方向へと行く者も多く一種の隊商のように25台の馬車が護衛を伴ってだらだらと進んでいく。
これは警戒を手を抜いても誰かが仕事してくれるだろう。
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