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幕間-41 召喚された者のその後⑥

「誰だよ。余裕だったなとか言った奴」

 ここ数日の事を思い返し俺は思わずそんな事をボヤく。勿論言ったのは俺自身だ。中原(セントルム)に到着しいざ出発と思ったら早々に問題が起きた。



 ▲△▲△▲△▲△▲△▲


 まず処分奴隷アービトリオ・スクラブの身分のままのオリヴィエらが乗合馬車(タグバグン)に乗れなかったのである。彼女たちを貨物として荷台に放り込むなら構わないとまで言われた。これは南方(アサド)でも経験していたが他の乗客、特に富裕層の化粧が分厚いご婦人が処分奴隷アービトリオ・スクラブなんかと同乗したくないとごねたのである。


 俺は所有者の変更は行ったが奴隷としての格付けを変更していなかったのである。この世界のルールとか知らんし誰も教えてくれなかったじゃん!

 どうりで子供らが俺に従順だと思ったよ。彼女たちは主人の気まぐれで破棄されるのを恐れてた訳だ。気を許してくれたのかなとか思ってた俺が道化じゃん!

 ショックではあったけど気を取り直して急いで商人組合(マークアンテギルド)に駆け込んだよ。契約を書き換えたいとね。

 そしたらあいつら一人につき契約変更手数として金貨3(3千ガルド)枚を要求してきやがった。

 8人いるんだぞ。ふざけるな!

 俺は勘定台(カウンター)に金貨を叩きつけて「処理してくれ」って言ってやったよ。


 取りあえずそれで処分奴隷アービトリオ・スクラブから労働奴隷(ラボロー・スクラブ)に格が上がった。これで処分奴隷アービトリオ・スクラブの証となる鎖付きの首輪(チョーカー)を外す事が出来る。それに合わせて処遇なども変更した。

 必ず守るべき内容を定めたのである。


 奴隷の基本条項である主人に害意を向けない。不利益な行為をしない。の他に三つ追加した。

 嘘の報告はしない。これは体調(コンディション)不良などを隠されても困るからだ。

 行動する際には必ず二人一組で行動する事。

 本体から離れる際には必ず誰かに伝言を頼む事


 これだけである。そんな事と思うだろうけど奴隷の多くは思考放棄している者も多く言われた事しか行わない者も多い。なので強制した。仕事に関しては強制はしない方向だ。


 それ以外は自由意思に任せる。忘れていた事だが驚いた事に南方(アサド)と違って中原(セントルム)奴隷(スクラブ)の扱いが格段に違うのだ。


 まず奴隷は財産である。法律上の人としての権利は放棄されているが人格権は認められており戯れの体罰や人格否定などは主人が罰せられることもある。また契約以外の労働をさせる場合は奴隷(スクラブ)の意思の確認が必要で断られたとしても報復行為は禁じられている。


 これは国や富裕層が弱者救済の一環として行っている慈善事業の一種らしい。ただし無理をして行う必要性もなく財力の余裕の範疇で行うだけだ。生活保護などないので放置して犯罪者に走られるよりはマシだろうという考えである。


 そのせいか最下層民より奴隷の方が余裕がある。人扱いされないので各種納税義務がない。衣食住は主人によって保障されている。無理な仕事は行わなくて良い。僅かだが賃金もでる。その日の暮らしに困るような連中からすれば垂涎モノである。


 ただデメリットもある。人としての権利はないので目撃証言などに証拠能力がない。数は少ないが奴隷という言葉に過剰反応を示したり蔑む層が居る事。移動権がないので主人の許しなく遠出が出来ない。働けなくなると慰労金を貰って放逐される場合がある。よほど主人に気に入られれば老後まで面倒を見てもらえるケースもあるがそれはごく少数の有能な奴隷の話である。その為に奴隷は賃金を自分の買い取りの為にため込む者が多い。


 正直に言えば平民とあまり変わらなくないかと思う。移動権に関してはそもそも平民も旅とかする者はほぼいない。働けなくなると貯蓄を切り崩すか


 これが子供だとちょっと変わってくる。奴隷でいる事で誘拐されて勝手に売買する事が出来なくなるのだそうだ。主人のいる奴隷は登録されており主人以外が勝手に売買を行うには非常に煩雑な手続きを要する上に売り主の調査もされる。


 市民権のない子供の誘拐防止になるので成人して組合(ギルド)に所属させるまでは今のままでいる事を勧められた。

 自由民(ゲンテリブ)という存在は自由であるが、自由が故に全てが自己責任で済ませられてしまう。組合(ギルド)に所属すれば仮に誘拐から売買となってもかならず所属組合(ギルド)に確認の連絡がいく。人狩り(トゥル・キャザー)という存在はそう言う煩雑な手続きを要する事を嫌うので組合(ギルド)所属員や奴隷を狙わない。

 ただし組合(ギルド)は理由なく長期に渡り活動実績の少ないまたはない者を除籍するので注意だ。


 そしてここで手続きの際にオリヴィエから提案があった。自分を冒険者として登録して欲しいというのである。

 12歳という年齢であれば成人の後見人が居れば登録可能だし出来れば恩を仕事を手伝って返したいというのだ。

 確かにちょこっと戦う術は身に着けている。正直言うと彼女の親は当時10歳児に戦闘訓練を施したのかと憤りそうではあったけど自由民(ゲンテリブ)であれば致し方ないのかもしれない。

 しかし彼女には他の奴隷のの世話があるので仕事に同伴させるわけにもいかないと断ろうかと思っていたら話を聞いていた一人のが手を上げた。そのは他のよりやや大柄なで自分にも仕事を手伝わせて欲しいというのである。オリヴィエのような知識や技術もないがやる気だけはあるとの事だ。御者や残りのの世話くらいは見れそうだ。

 オリヴィエも賛成との事で彼女、クロニーには御者と雑用と残った六人のの面倒を見る業務を付け加えた。


 話がまとまったので二頭立て四輪荷馬車(ワゴン)輓馬(ドラフ・カダー)の購入に出かける事にした。すぐに見つかると良いんだが…………。


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