497話 そいつはハーン玩具になるのか?
「まずは見て欲しいっす」
そう言うとハーンは資材置き場まで歩いていき側に待機していた魔導重騎に乗り込むと作業用の腕を使って覆っていた布を取り払った。
「おぉ…………」
姿を現したソレを目にした瞬間感嘆の声が漏れた。それは金属で作られた竜であった。身体を丸めるように鎮座したソレは推定で全長は7.5サートほどあり本物の竜に例えると老竜から古竜くらいの大きさになる。以前見た飛竜を模した簡易飛竜騎とは比較にならないほどの威圧感を感じる。
現在の復刻した技術ではまだこの規模の騎体は生産できない筈なので、これは太古の騎体という事になる。
「こんなとんでもないブツを送りつけてくる人って師匠?」
「匿名で拠点に送りつけられてきたのですがおそらくそうです。あ、乗ってみます?」
そう言うとハーンは僕の返事を待たず魔導重騎から降り闘竜騎の開閉扉を開く。
操縦槽の位置は胸部にあるのは共通事項なのだろうか? 逸る心を抑え込み操縦槽を覗き込む。
「へぇ。結構広いね」
「え、驚くところはそこですか? 他にあるでしょ!」
そう強い口調でいうと語り始めてしまった。君の話は無駄に長いから興味のない振りしてたのに…………。
座席は独特の馬乗り型と呼ばれるものである。そして最大の売りが全天周囲映像盤である。あとは見た感じは他の太古の騎体と同じように思う。
僕個人としては最も気になるのは飛行能力などの方だ。ハーンの方の説明も機能の方へと移っており攻撃手段は竜同様に牙による噛みつき、前肢の鉤爪による引っ掻き、長い尻尾による薙ぎ払いも他に最大射程距離37.5サートを誇る火炎放射となる。
至近で浴びると魔導騎士の外殻程度なら溶解するほどの高温であるとの事だ。人間が浴びたら消し炭どころか灰も残らないだろう。
他にも飛行中から後肢で掴んだ岩石を投下も出来る。
そして一番重要な飛行能力の話へと移る。
飛行速度は189ノードにもなる。普通の生物が出せる速度ではない。ただしこれは本体に格納している噴孔推進機関を使った場合に限るとの事だ。通常は40ノードまで落ちるがそれでも十分に早い。
最大積載量は24グランになる重量級の魔導騎士を一騎運べるという事だ。
竜を再現しているだけあって飛行する際には翼をはためかせて垂直離着陸できる。うちで運用するなら魔力加速射出機で射出になるだろう。
「取り合えず仮象操縦訓練装置で訓練できるようにしておいてね」
説明が長そうなのでそう言って打ち切らせる。
語り足りなさそうな表情をしているが、「では次は」と言って最初に見た金色に輝く重量級の魔導騎士である。
「実はこいつを魔改造させて欲しいんですよ!」
そう言ったが最後、どのように改造するかを延々と語りだす。
要約すると素体そのものを素材から見直し中身は別物に仕上げたいとの事だ。それによる効果は見た目は成金趣味の重鈍な騎体だけど超高性能騎って事にしたいらしい。ただその為にどうしても一つ欲しい材質があるとの事だ。
ようするにこれまでのやり取りはお強請りの前振りか。
「態々お強請りするって事は自動工場じゃコストがかかるしなって事?」
「そうなんっすよ。実は魔光石の原石が欲しいんですよ。大きさは50ディゴくらいの原石でいいんですが…………」
oh
心の中で叫んだよ。寄りにもよって魔光石かよ!
金貨100万枚積んでも簡単に手に入る代物じゃないんだぞ。それをハーンの玩具の為に…………。
「分かった。善処する」
だが、僕はそう答えた。これはメイザン司教に泣いてもらおう。
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次話は書きかけの幕間の数話ほど投稿して本編に戻ります。
仕事と通院と親の介護でバタバタしてますが、なるべく毎週投稿する方向で調整します。
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