488話 迷宮攻略に向けて①
残った移住者たちとの交渉に入ろう。うちでは働かざるもの食うべからずである。まずは大所帯の地霊族らだ。希望者に関しては鉱山王国ラウムから移住してきた地霊族の職人集団と協力してもらおうと考えている。
自動工場で何でも作れるから職人とか不要ではと考えたのだけど、この島の状況では周囲の万能素子を七等分している状態であり製作品にどうしても優先度を設けなくてはならない。
そう言う意味もあってこっちの技術で作れるものは造ってもらおうと考えたのだ。様々な職人がおり彼らだけでなんとかなりそうである。ただし旨い飯と酒を大量に用意する必要があるけど。
ここでやっていけない者に関しては守秘義務の契約を行い一定の資金を与えて十字路都市テントスで解放しようと思っている。
次に数の多い半豚鬼らだ。25人すべてが男である。彼らの強すぎる性衝動で性犯罪に走られると困るので一応四則演算と公用交易語の読み書きなどは出来るがとりあえずは肉体労働専門とする。徐々に適性を見て考えよう。
獣耳族に関しては人族と同じで職業体験させながら適性を見ていこうと思う。十字路都市テントスで開放しても恐らく差別を受けるだろう。
獣人族に関しては職人的仕事や事務仕事は向かない。戦闘職を希望している事もあり港湾領都ルードの巡回警備を担ってもらう。
問題は草原妖精たる幼人族だ。好奇心旺盛なトラブルメーカー気質で定住を好まない特性があり子供のような外見から警戒されにくい。
話し合った結果、契約書を交わし十字路都市テントスで開放した。ただし一人だけ残った者がいる。アーヴェという女の子、いや女性か。地霊族並みに長生きな幼人族で結社で囲われていた際には冒険者として斥候を担当していたそうだ。
この島の迷宮踏破に興味があるらしい。僕が共同体の拠点に行っていた数時間の合間に島で作業中の面々から情報を仕入れたようだ。
それならば残ってもらおうという事になった。
人族の方は結社の敷地で一次産業に従事していた者たちである意味で僕らに足りない人員である。彼らは十字路都市テントスで開放されても生活の充てがなくここで活躍できるならと申し出てくれたので都合が良かった。
そして問題の妖精族だ。それぞれ対応した精霊を扱う事に長けている。しかしそれぞれで集落を形成するには数が少なすぎる。大陸に戻ってどこか同族を探すかと問えば長い寿命だし人族換算で数世代過ぎてから考えても問題ないだろうという事でここに残ることになった。全員が精霊魔法の使い手であるため非常に助かる。
二刻ほどで進退は決まった。あとは名目上の偽装拠点の入手である。僕らは対外的には西方の迷宮王国クリンジャに迷宮攻略に出かける事になっている。
ここの大迷宮都市クーデンにある程度の規模の土地と家を買い足がかりにしているという体である。
この島の存在については当面明かす予定はない。
それと西方に点在するマネイナ商会の偉い人にも挨拶に行かなければならない。今後の物資の調達と中原への搬送を任せるためだ。
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