表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
537/678

487話 予想の範疇ではあったけど悪い話と…………

「では、こちら側からの報告ね」

 和花(のどか)はそう口にするとこれまでの事を順を追って話し始めた。

 シュトルムが政治的後ろ盾を得て僕らと(たもと)を別ったという事。その際に共同体(クラン)の装備の大半を国軍発行の戦時徴発令を以て接収していったこと。ただし技術契約奴隷テークネオライオクタ・スクラブには手をつけなかった事。例の島関連は漏らしていないかった事。

 他には若い女性冒険者(エーベンターリア)が男所帯である共同体(うち)の稼いでいる若手を狙って共同体(クラン)加入にしつこい事などをやや愚痴も混じっていたり脱線するのを隣のアルマが適切にフォローしつつの報告であった。

 話の内容より先に思った事は、君たち妙に連携取れてるなぁであった。

「…………なるほどね」

 そんな予感はしていた。シュトルムは冒険者(エーベンターリア)として登録はしているが貴族という枠から抜けられない印象があった。ただ半森霊族(ハーフエルフ)のセシリーと添い遂げるのが難しいという理由で一族を捨てる気ではいたようだけど、世俗騎士(リッター)でもいいから貴族社会に残りたいという欲は見えていた。

 彼としては僕が叙爵をしその配下の世俗騎士(リッター)あたりに落ち着きたいようではあったようだけども僕には国に仕えるという気概がない。後ろ盾ともいえる人物の再三の勧誘も断った。

 そして僕の後ろ盾になっていた人物はシュトルムに目をつけたんだろう。一介の伯爵(カウント)の嫡男如きが国軍の令状など持ち出せないので恐らく男爵(バロン)位あたりを餌としてチラつかせてうちの共同体(クラン)を売るように誘導したのだろう。

 ただ彼の良心なのか打算なのか技術契約奴隷テークネオライオクタ・スクラブそれと例の島関連のモノは秘匿したようではあった。

 恐らく彼の中では恩を売ったつもりなのだろう。保身かな?


「でも黙っていても伯爵(カウント)位だったのに、男爵(バロン)位で満足したのかしら?」

「たぶん新興貴族で男爵(バロン)位ならうるさい親戚筋から結婚について文句が出てこないからだと思うよ。それに後ろ盾が王太子(あのひと)だしね」

 和花(のどか)の疑問にアルマが答えてくれた。僕も同じことを考えていた。説明助かる。

「でもさ。あいつの名声ってうちの共同体(クラン)に居ればこそ得られたものじゃないの」

 和花(のどか)的には納得がいかないようでご立腹である。彼女の気持ちは理解できるけどね。



 ▲△▲△▲△▲△▲△▲


「話には聞いていたとはいえ多種多様ねぇ」

 例の島の大地に降り立った和花(のどか)が開口一番そう口にした。

 朝食後に和花(のどか)とアルマを同伴して例の島にやってきた。いつまでも瑞穂(みずほ)を放置という訳にもいかなかったからね。ちょっと機嫌が悪そうなのは見なかったことにしよう。


 これから闇森霊族(ダークエルフ)氏族(クレーネン)らをこの島の闇森霊族(ダークエルフ)氏族(クレーネン)と引き合わせる。その間に和花(のどか)とアルマには残った人たちの今後について相談にすることになる。


 そう思っていた時だ。好都合なことにこの島に住む闇森霊族(ダークエルフ)のルフェーブル氏族(クレーネン)のマティアス氏長(ラングド)がやってきた。以前会った時は無表情のような人という印象であったけど今日は笑みを浮かべている。彼らは長く変化の乏しい生活からか感情の揺らぎが乏しくなっており新しく若い同族を迎え入れる事に久方ぶりに心躍っているのである。


 連れて来た闇森霊族(ダークエルフ)は三氏族(クレーネン)おり当初より多い事とここでの生活が合わないようなら森の中で独自の集落を形成する旨を話し合う。その際に島は二万年外界から隔離されている事。生態系が他と異なる事。迷宮(アトラクション)産の怪物などが野生化し世代交代をしている事も説明する。

 普通の動物は居ないのである。それに関しては僕らがある程度は怪物の間引きを行った後に動物を連れてこようかとも考えているとも伝えた。生態系を破壊する?知らん。

 闇森霊族(ダークエルフ)らは取りあえずお試しでルフェーブル氏族(クレーネン)の集落で生活する事になった。もっと揉めるかと危惧していたけど杞憂であった。それが表情(かお)に出たのだろうか去り際にアドリアンがこう言った。

「我々にだって上位者を敬う心根もあるさ」


 僕は去り行くアドリアンに声をかけた。

「落ち着いたら手を貸して欲しい」

 それに対してアドリアンは振り返りもせず手を上げひらひらと振るだけであった。

 たぶん了解したという事だろう。


ブックマーク、評価、感想、誤字報告などありがとうございます。


書き溜め終了。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ