486話 今後の方針
「「お帰りなさい」」
【転移】で拠点に戻ってきた。まだ日の出前であり誰もいないであろう事務所で時間でも潰そうかと立ち寄ったら和花とアルマが優雅にお茶など飲んでいたのである。
「なんで起きてるの?」
和花はこの時間帯に起きている事はないしアルマに至っては礼拝の時間である。
「「そりゃ…………連絡あったし」」
そして二人はまたもや息を揃えて同じ言葉を口にした。君ら息が合いすぎじゃ…………。
夜中に連絡を送った人物は間違いなく瑞穂であろう。彼女も【通辞】の魔術は使えるし。
とりあえずはだ…………。
「二人とも、ただいま」
そう口にした途端に無性に恋しくなってしまった。そう言えば一週間以上触れ合ってさえいなかったなぁ。
そんな欲求は脇に避けておいて先に片づける問題がある。朝食でも食べながら話をしようって事で二人を伴って共同体の構成員向けの食事を提供している大食堂に向かった。
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食事をもって僕らは幹部連中が利用する食堂へと移動する。席につき静かに食事を進め食後のデザートである氷菓を食べつつ話を始める。
まず遺跡の件と収集品の分別を頑張ってくれたことへの労いを述べそれから何があったかを順を追って説明していった。
僕の話を聞いていた二人の表情が徐々に『また面倒なことを』と言わんばかりに変わっていった。
彼らの面倒を見つつ例の島の開発と攻略を進めていくというプランはそのまま進める。彼らは何らかの力を保有しているので面倒を見る代償に手を貸してもらう。
それとは別に東方の戦争難民についてだ。様々な意見が出たが規模が大きすぎてたかが共同体程度では焼け石に水だというのが三人の共通認識であった。
ところがそこに別の意見が加わるタイミングよくやってきた[高屋流剣術]本家道場の門下生の一人であった雲龍三等陸佐であった。彼は取り残された日本帝国軍のまとめ役でもある。
「うちの若い面子はまだ公用交易語の取得に戸惑っております。彼らを東方に派遣しその難民と共に学ばせたらどうです? 難民の問題は大陸共通語たる公用交易語が理解できない事なんでしょ?」
「そうだね。それともう一つは彼らが新しい環境に馴染むかなんだけどねぇ」
「生活レベルを落とせと言われるよりはマシでしょ。それに若い奴らに所帯を持たせてやりたいのですが…………」
雲龍三等陸佐のその一言で目的を理解した。婚活の場に利用するのか。難民は女子供が多いし先方としても働き手の男が手に入るなら案外歓迎される?
「問題は彼女たちが生まれ故郷を捨ててこっちの環境に馴染んでくれるかなんだよねぇ」
そんな疑問を口にするとアルマが挙手した後にこう口にした。
「こっちの女は逞しいのでまず生活できるかです。愛でお腹は満たされません。それが許されるのは一部の特権階級だけです。家族の愛情というのは互いに尊重しあえば後からでも生えてくるものです」
そう言い切った。
「それなら援助してみるか…………」
ただ悪いけど援助する対象は選ばせてもらうけどね。あとはお互いの常識の擦り合わせかなぁ。ここが食い違うと破局するからねぇ。
「まずは試してみよう。一個小隊程メンバーを選出して欲しい」
雲龍三等陸佐にそう告げるとこの話は一旦終わった。次は例の島の妖精族たちなどだ。
闇森霊族に関しては例の島に住んでいる古参の闇森霊族の氏族に受け入れてもらう手筈になっている。あちらの闇森霊族は2万年前に島が絶海の孤島となって以来外部の血が混じらず事故死も含めて既に氏族としては終わっている状態であったため若い世代の血を取り入れる事に積極的であった。何せ一番若い闇森霊族が太古の闇森霊族から数世代ほどしか進んでおらず3000歳とかいう。限りなく上位闇森霊族に近い闇森霊族である。
他の妖精族に関しては要相談になりそうだ。地霊族だけは数が多いので恐らくそれなりにやっていけるだろう。
他には半豚鬼の問題か。豚鬼ほどではないけど性欲が凄いらしいんだよねぇ。それこそ創作物のハーレム勇者並みにイケるらしい。あれはファンタジーだと思ったけど実現できるだけの化け物が居るのを初めて聞いたときは驚いたなぁ。
他には…………幼人族か。彼らは種族の遺伝子レベルで放浪癖があり一箇所に定着するのは老いた時しかないので基本的には干渉しない方が良さそうだ。
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忙しいと言いつつ罪(積み)を重ねてしまった。そして隙間時間で組んでしまった。




