485話 大所帯
一限ほどたったころアドリアンを先頭にぞろぞろと集団が現れた。その集団はいくつかの種族で構成されていた。
まず最大の勢力が闇森霊族の三氏族だ。合計で131人ほどいる。見た目では判断できないがどの氏族も100歳未満の未熟な若手しかいないという。結社の仕事で熟練層がほぼ死亡してしまった結果だ。
肉体は人同様に15年で成熟するが同じ長寿でも時間感覚が地霊族などと異なりかなり緩やかな気質だ。彼らの感覚では100歳程度は人族の18歳程度の感覚である。
なるほど、18歳と言われると納得してしまった。同じ長寿系でも人族社会に染まった地霊族や幼人族は割と時間感覚が人族に近い。
次に多いのが地霊族だ。44人ほどいる。結社で使う機器や武器などの製造や補修を担当していた。全て奴隷化してある。次に多いのが半豚鬼であった。彼らはその体格故に荷運びなどの力仕事担当であった。それが25人ほど。
他にかつては草原妖精と呼ばれてた幼人族が4人、古代の魔法帝国によって愛玩用として生み出された獣耳族が8人。多種多様な獣人族が19人
あとは珍しい妖精族である白磁の肌に薄い水色の髪の氷霊族が3人、真っ赤な髪に褐色の肌の炎霊族が5人、青い髪に白磁の肌の水霊族が2人、緑の髪に白磁の肌の風霊族が3人らであった。
最後は人族だ。39人ほどいる。人種は様々である。これで283人となる。まぁ…………約300人ではある。
「他にも赤肌鬼や豚鬼や食人鬼の集落もあったが奴らは我らとは生活を共にできないと判断して連れてこなかった。今頃は周辺で暴れているだろう」
そう説明された。周辺の人々もいい迷惑である。でも妥当な判断だ。赤肌鬼は油断していると普通に寝首を掻いてくるし、豚鬼は異性を容姿の有無に関わらずに有り余る性欲の対処としてしか見ていないし、食人鬼にとっては人族なんて餌くらいの間隔である。
「あれ? 犬頭鬼は?」
最弱の種族と呼ばれる犬気質の犬頭鬼が居ない。あの種族は主人格の気質次第で善人にも悪人にもなる種族である。ここに居ないという事は赤肌鬼らと共においてきたのか。
「あ、忘れてた」
指摘されてアドリアンがそんな事を言い出した。彼らの業界ではナチュラルに奴隷扱いなので数に含まれないらしい。数は35人いるそうだ。
そうなると合計で318人か。移動だけで大変そうだし今後の統制の問題もある。
取り合えず一番力のあるのがアドリアンらしいので当面は彼に統率してもらう事とする。そして[転移門の絨毯]の説明をし試しに数人を移動させて安全を確認させたのちに順番に例の島へと跳んでもらう。
もっと統率の取れない自己の権利だけを過剰に主張するだけの自己中集団かと当初は思っていたけどこれなら安心して良さそうだ。
最後にアドリアンと瑞穂が跳ぶと僕は[転移門の絨毯]を仕舞って【転移】で例の島へと跳ぶ。
移動先は建設中の町の空き地である。この場所はまだ開発目的がなく空白地となっていた。すぐに家屋を用意できないのでここで天幕生活をしてもらう事となる。それらの用意は既に終わっているので天幕の割り振りやここでの守るべき規約を説明していく。
アドリアンの率いる氏族以外は予定外の為これから処遇なども含めて話し合いとなる。
「ところでだ…………」
取り合えず食事の準備を始めたころアドリアンがそう小声で喋り始めた。無言で続きを促す。
「お前らの拠点にマリエルは行っていないのか? 使いに出したんだが…………」
マリエル…………あぁ、嫁さんか。
「僕らが出発したときには来てなかったよ。確認してこようか?」
「頼む」
どのみち和花らに報告もあったので【転移】で戻ることにした。念のために監視で瑞穂を置いて行くことにする。彼女であれば遅れは取るまい。
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