幕間-40 紅の剣士のその後②
あれから幾日かが経過した。訳も分からず逃亡生活となり赤の帝国の兵には追われ人狩りにも追われひたすら斬り捨てていく。今も足元に無謀にも襲い掛かってきた人狩りだったモノらが転がっている。肉体的にも精神的にもそろそろ休息が欲しいと感じていた。
俺が襲撃される原因はどうやら赤の帝国が俺の首に賞金を懸けたらしい。金額は生死不問で金貨500枚だという。賞金首に指定されたからのようだ。こうなると迂闊に町には入れなくなる。
取り合えず襲撃者の装備を漁って糧食と金品を確保する。
「ちっ。シケてるな。これっぽっちか」
保存食らしい凡そ一週間分の干し肉と乾パンと硬乾酪に各種硬貨が合計で千ガルドほどであった。
何処へ行くかは決まっていないが赤の帝国の領土からは脱出したいので南に向かって歩いていく。正確な地図は持っていないが現在位置から推測するとあと三日も歩けば南の国境線を超えられるはずである。
もっとも国境警備隊の哨戒網を上手く潜り抜けられるかはわからない。最悪の場合は全員斬り伏せる事にはなる。
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予定通り三日で国境を超えた。とりあえず赤の帝国の軍隊に追い回される事は当面ないだろう。国境線の守備基地は混乱していた。周辺地域を統括していた”串刺し将軍”デジャン伯爵が戦死したというのだ。
死因は魔導騎士の頭部が突然破砕された際のショック死だという。戦争難民を追い回していた最中に随伴する魔導騎士らと竜騎兵らともども討たれらしい。
「あのデジャン伯爵が戦死ねぇ…………」
この世界は古い技術で作られたものほど高性能という法則があり並大抵の連中じゃ鎧袖一触されるのがオチだ。どれほどの戦力と戦闘したのだろうか?
この辺りで大規模な軍団を運用できる国はないはずである。情報が無さ過ぎて考えても無駄だなと気が付く。そしていつの間にか緩衝地帯に点在する難民キャンプのひとつが見えて来た。まずはあそこに紛れ込んで身体を休ませ貰おう。
「まさかお前とここで見える事になるとはな」
忍び込もうとしていた難民キャンプを取り仕切っていたのは青の勇者様であった。いつか首を取ってやろうと思いつつも戦場が変わってしまい叶わないと思っていた人物である。常に眉庇を下ろしており顔を晒さないのでそれを拝んでみたいという欲求もある。相棒の戦の神の神官戦士たる地霊族も控えており思わず舌なめずりしてしまいたくなる。
打刀に手をかけ鯉口を切ろうとした時だ。この難民キャンプの異常さに気が付く。
難民らの表情に悲壮感が薄い。更に皆なぜか清潔である。とても着の身着のまま逃げ出した難民には見えない。それに違和感は難民と共にいる者たちだ。顔立ちが日本人風で一様に日本式軍刀を提げており足運びから武技使いだと分かる。実力の程は武技使いの中伝くらいだろうか? 流石にここで打刀を抜くのは無謀すぎると判断し気を抜く。
だが気を抜いた瞬間これまでの疲労がどっと襲い掛かってきてあっさりと意識を手放した。
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お客の前で普通にお盆休みも馬車馬の如く働きますよとか言っちゃう上司は〇ネばいいと思うんだよ。実際働くのは私だぞ。




