幕間-38 召喚された者のその後④
夏の中月の南方は灼熱地獄である。昼は気温が328クロンほどとなり日差しが痛い。だが俺らが移動している地域は夜の移動は推奨されていない。理由は魔物である。奴らも暑いのが苦手なようで昼間は殆ど活動していない。逆に夜になると273クロンにもなる。
基本的に徒歩での移動になる。ただし七人もの10歳児を引き連れていると一日に移動できる距離はせいぜい2.5サーグほどだ。
想像していたより歩けていない。ここで一番問題なのはなんと俺である。環境に適応できていないのである。四日目にして寝込んでしまった。
オリヴィエに看病してもらい安宿で二日も無駄に過ごしてしまう。危険ではあるが夜に移動すべきだろうかとオリヴィエに相談すると腕利きの冒険者でも雇わないと最初の夜で全滅してしまうとまで言われてしまった。
あとは割高であるが定期便として砂漠の民が運営している竜車便が鈍竜が牽引する大型の客車とそれを警護する疾竜に騎乗した砂漠の戦士団で構成される。
ただし一日の移動で10サーグ移動できるが一人頭一日の乗車で金貨1枚も取られる。子供だから安くなるとかはない。困ったことに奴隷は法律上は人扱いされないが運賃は人として計算される。ケチりたいなら荷物として樽にでも詰めれば荷物として計上はしてくれるが流石にそれは俺には出来ない。
そうなると運賃は一日で金貨9枚となる。手持ちの資金は支度金やら宿泊費などで目減りしており金貨32枚ほどである。十字路都市テントスまでの道程を考えると最低でも金貨20枚は残しておきたい。
子供らは不安そうに俺を見つめている。自分たちが処分されるのではないかと思っているのだ。
そんな事はしない!
その日は情報収集に充てた。それで分かったことだが海岸沿いの古い街道を通れば安く移動できそうなのである。ただし中古の二頭立て四輪荷馬車の購入が必須となる。それでも老いた輓馬二頭込みで金貨6枚で済む。船便に乗る際には売れば恐らく三割くらいは戻ってくるとの話だ。
船便を降りた後も馬車は有効だとは思うのだけどオリヴィエ曰く中原に着けば日中の気温はかなり下がるし乗合馬車の運賃も法外ではないという。
一見都合の良さそうな話ではあるが当然問題もある。治安の問題だ。野盗が跋扈しているという。通常は冒険者を護衛として雇う。
そこで妙案が浮かぶ。
▲△▲△▲△▲△▲△▲
売り手も処分したがっていたようで中古の二頭立て四輪荷馬車と老いた輓馬はすぐに手に入った。
俺らは食料などを買い揃えて翌日には出発した。そう隊商に付随するように微妙に後方にだ。
隊商は二頭立て四輪荷馬車10台編成の結構規模が大きく護衛の冒険者も5編成と多い。いざとなったら彼らを巻き込もうという魂胆である。
オリヴィエに教えてもらったのだが、この規模の編成で護衛が徒歩の場合は一日の移動距離はせいぜい7.5サーグと徒歩と大差ないという。起伏が多く砂漠を突っ切る当初の予定からすると予定していた日に船便が出ている港湾都市アドラスには到着しないという。
船便の航海日数は気象状況や潮の都合で変動するので中原に到着してからの予定が結構厳しいとの事だ。
本当によく出来た娘である。思わず頭を撫で繰り回してしまった。
元の世界であればお巡りさん案件である。
洗礼は三日後であった。野営中に隊商の休憩拠点が襲撃を受けたのである。俺らも彼らのご厚意で休憩拠点で休ませて貰っていたの標的となったのだ。
ブックマーク、評価、感想、誤字報告などありがとうございます。




