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477話 メモに書かれていた場所へ

 真新しい上質紙(かみ)に書きなぐったようなエルフ語で『レルンにて待て』と書かれていた。


「レルンって何だと思います?」

 側で戦利品の指輪と自身の記憶を照らし合わせていたフリューゲル高導師(アルタ・グル)に何とは無しに尋ねた。


「レルン…………。これはあれかな。東方南東部域の都市国家の事ではないかね」

「他に何かあります?」

 そう言って紙片を見せる。

「ふむ…………。暗号には見えないしここは素直に都市国家レルンの王都レルンで待っていろと言う解釈でよくないかね?」


 たしかにここであれこれと考えていても答えは出そうにない。そう決めたら早速ラーケン艦長(キャピタイン)に進路を都市国家レルンへと取るように伝える。




 ▲△▲△▲△▲△▲△▲




 白鯨級潜航艦(アルブム・セット)の良いところは目的地までまっすぐ潜航していけば住む事だ。ただ一つの欠点は亜空間(サブルアング)からの浮上場所である。こいつの存在を非公開にしている弊害である。


 遺跡(ダンジョン)の側から直線距離にして487サーグ(約1950km)ほど移動する。そこは王都レルンから直線距離で1サーグ(約4km)ほど離れた森の側であった。次元潜航艦ディメンシア・プロンゴ・スキップ艦橋(ブリッジ)上部のみ浮上させ艦橋上部扉(ヘッドドア)を開けると九重(ここのえ)が首だけを出し周囲を確認する。程なくして問題ない事が分かり艦橋上部へと移動し僕に場所を譲る。

 艦橋と地上の境界部分約0.25サート(約1m)ほどが歪んで見えるがこれは亜空間(サブルアング)との境目である。落ちるとおそらく帰ってこれない。九重(ここのえ)に見送られながら地上へと降り立つ。


「それじゃ九重(ここのえ)和花(のどか)に戻ったら伝言を宜しく」

「任せておけ。高屋(たかや)も気をつけてな」

 ケーニッヒ副長(アジョイント)は軍時代の習慣か敬礼を仕掛けて苦笑いを浮かべる。僕は王都レルンの方へと視線を移し観察する。


 話では都市人口三千人ほどの中原(セントルム)でいうところの男爵領程度の規模の国土と人口との事である。都市ひとつと周囲にいくつか村がある程度で総人口一万にも満たないのである。

 武力も魔導騎士(マギ・キャバリエ)二個中隊程との事で赤の帝国(チャコール)が攻め込んできたら恐らく二日もせずに陥落であろう。


 東方にはこんな規模の国が山ほどある。この国は赤の帝国(チャコール)の国境との緩衝地帯を挟んで隣接しているので気が気でないだろう。

 ここで立っていても仕方ないので行くかと一歩を踏み出した時だ。服の裾が引っ張られた。

 慌てて振り返ると瑞穂(みずほ)が服の裾を握っているのである。副長(アジョイント)と別れた時にはいなかったはずだ。

「なんで?」

「ひとりはダメ」

 そう言って首を横に振る。白鯨級潜航艦(アルブム・セット)は既に次元潜航しており連絡手段はない。これは恐らく拠点に残る和花(のどか)と示し合わせているのだろう。結構頑固で帰れと言っても帰ってくれないだろうし気配を断たれて監視されるのも落ち着かない。

「分かったよ。でも、連絡はした?」

「うん」

 誰にとが言わなかったけど連絡したのなら良いかという事で二人して王都へと歩いていく。

 さて、どういう触れ込みで都市に入ろうか。赤の帝国(チャコール)絡みでこの時期は衛兵隊(センティア)もピリピリしているだろうからなぁ…………。


 杞憂であった。金等級(第八階梯)の効果は大きかった。特に来訪理由を聞かれることなく検査などもなく優先的に入らせてもらった。

 王都レルンは港湾都市である。赤の帝国(チャコール)交易路(トレド)を塞いでいる関係で現在は海路での移動が盛んで港湾部は非常に込み合っている。


 煉瓦造りの低層住宅が立ち並んでいる中央通りを二人して観察しつつ歩いていく。まずは宿を確保せねばならない。


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