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49話 畏怖

買い物偏と合わせるつもりでしたが文字数が5000文字超えそうなんで分割しました。


2023-09-16 文章の一部を改変

 待合ホールで健司(けんじ)たちと合流しマーサ卿を太陽神(アルソール)神殿まで送り届ける。マーサ卿が平凡な服を着ていたのは、冒険者(エーベンターリア)区画(エリア)は治安があまりよくないためだ。今回はお忍びで従者(スクワイト)ひとりすらつけてこなかったという事情もある。

 平服だと単なる初老の小母さんにしか見えなかったけど、正装すると高貴な方に見えるから不思議だ…………とか思っていたら和花(のどか)に見透かされたのか脇腹を抓られた。



「それじゃ冒険者(エーベンターリア)組合(ギルド)へ行くぞ」

 次の予定は買い物かと思ったら師匠がそんなことを言い出した。先日討伐成功した階層主(フロアボス)変異性超巨大黒蟲ミュータントヒュージコックローチ万能素子結晶(マナ・クリスタル)の売却などもあるのだけど他にも必要な手続きがあるらしい。

 道中に健司(けんじ)に賃貸に関して文句を言ったら健司(けんじ)たちの借りた長屋(アパート)は狭いし年頃のお嬢さんをふたりには流石にまずいし、かと言って男三人で住むには狭いから仕方ないんだよと言っていたが真意は他にありそうだ。

 だがトイレ共同、風呂なし、台所なしで部屋の大きさが六畳間未満という物件情報を聞くに他意はなかったのではないかと思い始める。仕方ないのかと一応納得する事にした。


 そうこうしているうちにお役所然とした冒険者組合エーベンターリアギルドへと到着し受付番号を貰って待っていると————。

「なんか妙に注目されているというか…………僕の気のせい?」

 だが気のせいではないようだ。

 偶然だが目が合うと判りやすいくらいに逸らされてしまう。


「受付に行けば判るさ」

 そんな僕の反応を見て師匠がおかしそうに言うのだが————。


 タイミングよく受付から呼ばれたので四人…………一党(パーティ)で受付にいき認識票(アーケナングスマーク)の提出を求められるので求められるまま差し出す。


 何やら作業をされているがこちらからは見えない構造になっており気になって仕方がない。


「昇格処理が終わりました。ご確認ください。それと————」

 そう言って差し出されたのは黒い認識票(アーケナングスマーク)と重そうな小袋だった。


「おめでとうございます。第三階梯(ランク)に昇格です。こちらは懸賞金となります」

「「「「!?」」」」

 意味が分からない…………。

「すみません。意味が分からないのですが?」

 いち早く冷静に戻った和花(のどか)が受付さんに理由を問いただした。


 その後の受付さんの説明によると、先日僕らに絡んできた一党(パーティ)は犯罪者指定されていたそうだ。多くの新人冒険者(エーベンターリア)連鎖暴走(トレイン)行為で轢き殺し上前を盗み、外部持ち出し禁止の万能素子結晶(マナ・クリスタル)を外部の闇商人に売り飛ばしたり、違法なドラッグを密輸入したりと疑惑はあったのだが、主犯格(リーダー)であるマルコーという戦士が推定で銀等級(第七階梯)の戦士であったそうだ。

 因みに師匠の捕捉によると銀等級(第七階梯)に認定される戦士の実力は騎士団長クラスに当たるそうだ。

 その実力により生半可な冒険者(エーベンターリア)じゃ手に負えないうえに組合(ギルド)は犯罪者を討伐する部隊などは持っていないので内偵だけは進めていたが、先日若い新人冒険者(エーベンターリア)が倒したという報告が入り、たまたまそれを目撃していた観覧者たち(ビジターズ)とそちらの虹等級(第十階梯)冒険者(エーベンターリア)様の発言で残党を取り押さえて証拠を押収し昇進検討議会であなた方の昇格と犯罪者撲滅の報奨金を出すことになった。


 そう締めくくられた。


組合(ギルド)の調査部隊は戦闘力より隠密活動を求められるし、かと言ってこの迷宮都市ザルツの冒険者(エーベンターリア)で実力者は迷宮(アトラクション)下層(した)の攻略組だが、彼らは上層(うえ)のゴタゴタとか興味がないから関与しない。多くの冒険者(エーベンターリア)は遭遇しないように目立たないようにビクビクと日銭を稼いでいたのさ」

「でも他の冒険者(エーベンターリア)の目線は感謝には見えないのですが?」


「畏怖だよ」


「畏怖?」

 どういうこと?


「お前らの居た世界で世界を揺るがす大魔王を勇者が倒したって話があっただろう? その顛末を覚えてるか?」

 師匠にそう言われたのだが、似たような物語はなしは結構多くてピンとこない。


「あ、わかった! 復讐物だ」

 そう答えたのは隼人(はやと)だ。

「ん? どーいうこと?」

「ほら、世界を揺るがす大魔王を倒すほどの力を持った個人ないし一党(パーティー)に対して為政者たちは自分たちの地位や特権を奪われるのではないかって疑心暗鬼になって奴だよ。史実でも英雄や忠義の士が何れ自分たちの地位を脅かす存在かもという理由で排斥するじゃん」

 その話でピンときた。彼らの心理は僕らが第二のマルコー一党(パーティー)になるんじゃないかと懸念しているのか! だからこそ感謝と畏怖といったところだろうか?

 僕らはここに来た直後で確かに何も知らないもんな。


「まー日々の生活の中で誤解を少しずつ解いていけばいい」

 そう師匠が話を締めくくった。


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