462話 遺跡へ③
健司が鋭い踏み込みで距離を詰めると大鎚矛を振り下ろす。その一撃はこれまでの[黄流闘術]の初伝の鍛錬が生かされており雨樋の魔像の頭部に命中するとそのまま振り下ろし床に叩きつける。以前のように見様見真似でなんとなく体得してしまった技ではなくきちんと基本に裏打ちされた見事な一撃であった。
ダグの方はと言えばもともと得意であった槍捌きに攻撃力のアップという事で魔戦技を体得するという課題があった。今回は穂先に体内保有万能素子を集約させて貫徹力を上げる【練気突】が見事に上手くいき羽根付き槍が雨樋の魔像の石のような肉体を貫く。
装甲歩兵を纏った巨漢の九重はその質量と怪力を生かし動き始めた雨樋の魔像に突進し機敏には動けないけど短い距離のダッシュで距離を詰めるとその勢いのまま盾打撃を行う。壁際まで吹き飛ばされた雨樋の魔像に対してさらに接近し追い打ちで右手に持っていた重鎚矛で何度も殴りつける。
巽は戦闘技術はそれほど高くない事もありスマートな戦い方ではないけど意外と装甲歩兵は使えるなと感心する。
ひとりおかしいのがいる。フリューゲル高導師だ。
雨樋の魔像の鉤爪攻撃をギリギリで躱すと超接敵状態で拳が触れるかのような状態で放った一撃は寸勁のようにみえる。[金剛闘流]の達人が恐れられる理由がこれだ。雨樋の魔像は一撃で胴体を破壊された。
「俺の出番がないじゃん」
一分もしないうちに戦闘が終わってしまい。出番がなかった九重がぼやく。
「そのうち出番があるよ。そんな事より仕事仕事」
ぼやく九重に急かす。
しかしフリューゲル高導師の化け物ぶりはおそらく人類の最高峰に位置するだろう。他の面子も十分強い。雨樋の魔像だって叙勲間際の若い騎士と互角と言われており決して弱い部類ではないのだ。
例の島の四つの迷宮攻略には複数同時攻略を考えているのでこれは助かる。
そんな事を考えている間に九重が調べ終わったのか扉の開閉方法で悩んでいる。
鋼鉄の両開き扉は上部構造と違い劣化が見られない。これは魔法で劣化が抑えられているという事だ。次にホールに埃が積もっていない。魔法で定期的に掃除しているか掃除専門の存在がいる可能性。そして一番の問題。鍵穴もドアノブもない。
「なぁ、樹。こういう場合ってどう対処するんだ?」
調べつくした結果対処できないと思ったのか僕に答えを求めてきた。恐らく物理的な方法では開閉しない。ここは魔術師の出番だ。
【術式解析】で起動ワードを探るしかないだろう。
扉の前に立ち詠唱に入る。
「綴る、基本、第七階梯、感の位――――」
しかし詠唱中に瑞穂に腕を引っ張られ詠唱を中断させられる。集約した万能素子が霧散する。
「呪的資源は大事」
そう告げると[鋭い刃]を引き抜き鋼鉄の扉に突き立てる。強力な[鋭い刃]の力が扉の魔力強度を上回ったのか刃が根元まで突き刺さりその後は難なく扉を切裂いていく。
物理的に開かないとは何だったのか。そうは言っても切り終わった鋼鉄の扉は重く非力の瑞穂では動かせなかったので巽に蹴り飛ばしてもらった。
光の精霊動かすと自分らの周囲を照らす光源がなくなってしまうので【光源】の魔術を唱える。それを確認した後に九重が召喚した光の精霊を先行させるとその明かりに照らされ状況が見えてくる。
大理石の様な材質の幅1.25サート、高さ1サートの通路のようだ。
「大型の敵がいるかもしれんね」
フリューゲル高導師がそう呟く。たしかにあり得そうだ。僕らは経過しつつ九重を先頭に扉を潜る。
ブックマーク、評価、感想、誤字報告などありがとうございます。
登場人物は少なめにと思っていた時が私にもありました。そろそろ主要な人物の一覧でも用意する時だろうか?




