460話 遺跡へ①
十字路都市テントスから次元潜航で何の障害もなく目的地近くまでやってきた。「坊ちゃん。これを」
そう言ってラーケン艦長が浮遊式潜望鏡を見るように言うので覗いてみると東方南部域の赤の帝国との緩衝地帯である難民キャンプに対して攻撃を仕掛けている現場を目撃してしまった。今は余裕がないのだけど新機能の検証も兼ねて追い払うくらいはしておこう。そう思った理由は難民の集団の中にかつて旅をした戦の神の神官戦士であるゲオルグの姿を見たからだ。
僕はハーンを呼びだしいくつか指示をすると準備させる。それと共にラーケン艦長に命じる。
「浮上後に即偽装処理してください」
「承知した」
そう言うと副長が頷き艦内に発令する。次元潜航艦が減速をはじめるとともに徐々に浮上し始める。
操作に関しては専門家に任せて僕は上甲板格納庫へと急ぐ。亜空間から元の次元に浮上しつつ外装を周囲の景色に偽装させつつ一限ほどで船体は停止した。
開閉扉を開き砲撃型多脚戦車が姿を現す。難民キャンプまでの距離は1サーグほどあり旗騎に対して十分直接射撃できる距離である。すぐそばに森がありそれを遮蔽物にして旗騎を狙う。これだけ離れると向こうの魔力探索器の範囲にはこちらは映らない筈だ。
余裕をもって準備していると竜騎兵に向けて無謀にもゲオルグが吶喊するのが映像盤越しに見えた。それに対して竜騎兵らが小銃を発砲。ゲオルグが倒れるのが見えた。
「ハーン!」
流石にまずいと思いややきつめの口調でハーンを急かす。
「もうすぐっす。…………いつでもいけるっす」
ハーンから準備完了の報告が届いた時だ。突如黒い狼型の怪物が突如出現して竜騎兵に襲い掛かるのが見えた。
ハーンがこちらを見て判断を委ねている。
「取り合えず予定通り旗騎を潰そう。そのあとに僕が出るよ」
「では、発射」
そう言って引金をひく。
その瞬間、新しく用意した徹甲弾が旗騎の頭部を吹き飛ばしていた。脳核ユニットが破壊された騎体はその時点で死んだのだ。
騎体は勢いのまま数歩進んだ後に前のめりに倒れた。
僕はそれと同時に上甲板格納庫から飛び出す。乗騎は素体状態のものだ。隠蔽性を最優先しており周囲に溶け込む。
急加速で突き進み常軌を逸した機動で瞬く間に八騎の右の脇の下を切裂く。ここは人間でいうところの大動脈に相当する冷却水管が走っておりここが切断されると騎体の魔力収縮筋の冷却が出来なくなり熱による弛緩で騎体が稼動停止するのだ。
それを避けるために弁を閉じると腕が動かなくなる。騎体の損傷を最低限にして戦闘力を奪うのに最適なのだ。ただこれが出来るのも太古の騎体だからこそだ。
それなりに高性能と言われたウィンダリア王国の正式採用騎である[ドレッド・バーン]ですら追従性においてかなりの違和感があり本来の自分の動きが再現できない。
しかしこの騎体はまるで自分の身体のようによく動く。もっとも頭頂長2サートの巨体が人間と同じように動くとなると中に乗っている人は堪ったもんじゃない。慣性が殺せず操縦槽はシェイクされたようになる。
騎士が騎体を放棄して逃げ出す。彼らが単なる魔導騎士の生体部品なのはすでに分かっている。騎士の矜持などなく戦闘不能になれば騎体を放棄する事に躊躇がない。
足元では【姿隠し】を使った瑞穂が[時空倉庫の腕輪]を使って戦闘不能になった騎体を収納していく。ついでに竜騎兵の遺体なども回収していく。
そして僕らは誰に見られるでもなくひっそりと去っていく。
「いやー大量っすね。復元して二次装甲を変えて売り飛ばしましょう」
「そうだね」
「楽しみだなー」
そう言ってハーンが去っていく。
さて、本来であればいつの間にか乗り込んでいた瑞穂に説教といきたいところだけど、困ったことにこの娘は使い勝手が良すぎて居るとついつい何か用事を言いつけてしまう。
本人も自身の有用性を常々アピールするもんだから結局許してしまっている。斥候の監督として結局遺跡に同伴させることになってしまった。
一刻ほどして烏型偵察騎で遺跡の位置を確認出来たので攻略メンバーだけで降りる。
そこは幻獣の森と呼ばれる様々な幻獣が生息する立ち入り禁止の場所であった。
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そろそろ「Going Medieval」のアップデータ来ないもんだろうか。もっとも毎回地下帝国と化すんだけど。




