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457話 引っ越し①

章管理の都合で予定より早めに投稿。

 邪神を奉じ十字路都市テントスに被害をもたらせた闇司祭(ダークプリースト)らは闘技場(アリーナ)にて公開処刑された。この日は闇の日(オペーク)であり一般的には休養日である。日頃娯楽に興じる余裕がない庶民等はこぞってこの残酷なショーを見るために集まった。と聞いている。

 この残酷なショーの処刑対象には日本(ひのもと)も含まれているのだ。誰が好き好んで元同級生の処刑を眺めに行くのかと。ましてやガス抜きの為の見世物である。


 ただ実際に見てきた共同体(クラン)の構成員らの話では死ぬまで終始意味不明な平等論を叫んでいたそうだ。


樹さん(ボス)。例のデータ収集が終わったっすよ。標的(まと)は魔の砂漠に墜落。周囲に目撃者はなし」

 鍛錬を終え一休みしているとハーンがやってきてそう報告してくれた。これがバレたら我々はお尋ね者だなとは思ったが共同体(クラン)幹部の満場一致という事で敢行した。犠牲は最小限に留めたがそれでも殺しは殺しだ。いずれ僕らにも報いが来る日があるかもしれない。その時は…………。


 今後の件として幹部会議を行い例の島に拠点を移すことに決めた。ただしあの島は人が住んでいないこともあり整備する必要がある事と住むためには様々な業種の人間を呼び込む必要があるためその準備を始めている。


 ただし表向きは共同体(クラン)は運用するので僕らの代わりに表向きは仕事をしてくれる冒険者(エーベンターリア)の選別をお願いしている。若くて燻っている黒鉄等級(第三階梯)あたりの冒険者(エーベンターリア)だ。


 この十字路都市テントスは仕事には困らないが基本的に体力任せな雑多な業務が多い。いわゆる日雇い業務のような感じだ。


 そんな中で僕らが目をつけたのが他のいくつかある迷宮都市で競争に敗れてこの十字路都市テントスにやってきた冒険者(エーベンターリア)だ。

 彼はほどほどに実戦経験を積んでいるだけでなくある程度連帯も出来ている。それに一党(パーティー)構成も安定しており巡回業務(パーティオトヨッタ)駆除依頼(エクスターミネート)に最適なのである。

 共同体(クラン)で衣食住の面倒を見るという話をするとホイホイと魔法の契約書(コントラート)署名(サイン)する。特に装備の整備などを鍛冶師などが無料で行うというのが彼らには受けが良かった。


 帰れなくなった高屋(たかや)道場の面子に任せていた巡回業務(パーティオトヨッタ)を少しずつ移行させている。

 高屋(たかや)道場の面子は防衛陸軍に所属なので土木作業なんかも得意である。彼らには順次例の島へと渡ってもらい都市部の復旧作業を行ってもらう。


 日本(やまと)皇国に預けた取り残された防衛軍の面子の一部が向こうの国での生活に嫌気がさしたようで戻ってきた。日本(やまと)皇国には行ったことはないが生活レベルが明和後期から大正時代くらいのようで合わない者が出たそうだ。

 移住希望者の数は250人と結構多い。元防衛軍の面子だけで350名にもなるので生き残りで一番階級が上だった雲龍(うんりゅう)三等陸佐に部隊の再編をお願いする。


 うちの共同体(クラン)のもう一つの業務である運搬業務(トラスポーティ)のほうだ。こちらは魔導機器(マギテック)を使いこなせる面子が必要なこともありやや難航している。共同体(クラン)で運用している中型平台式(トル・プリック・)魔導騎士輸送騎(マギ・キャリア)を操縦できる者や魔導歩騎(マギ・ファンタリア)を動かせる者が中々揃わない。

 そういう意味では師匠が送り込んでくれた茨の園ジディーノ・ダィ・スパィンの子供らは非常に優秀だ。だが彼らは新拠点へと連れていく。


 事務方と十字路都市テントスでの様々な副業に関しては魔法の契約書(コントラート)署名(サイン)させたうえでメイザン司教(ビショップ)に一任した。聖職者(クレリック)であるがやり手の商人(マークアンテ)でもある。彼にとって僕らと手を切る方が損だと思わせておけば味方として心強い。


 地霊族(ドワーフ)の職人軍団は新拠点へと連れていく予定である。そうなると十字路都市テントスの職人が不在になるので代わりの職人を手配している。鉱山王国ラウムの地霊族(ドワーフ)の職人が結構燻っているそうで呼べば来るとの事でお願いしてある。


 そして現在扱いに困っている人物が一人いる。


 自称自由騎士(エクェズ・リバーロ)のシュトルムだ。元々はウィンダリア王国のマルエッセン伯爵(カウント)の跡取りである。ただ半森霊族(ハーフエルフ)のセシリーとの結婚を一族が中々承認しない事に焦れて家を捨てると言ったものの一介の冒険者(エーベンターリア)で終わる気がないようである。

 将来が安定した騎士(リッター)の道を模索しておりここ暫くの情報漏洩の原因ではと疑っている。

 この世界の商人(マークアンテ)や王侯貴族て同族支配に特徴づけられた封鎖的な多角的事業経営が主流だ。それもあって女子に生まれると優秀な人物を一族に引き込むために結婚させられるし、男でも必要なら望んでない結婚を強いられる。

 彼らは伴侶に対して互いを尊敬と友愛と親愛を育む事を幼いころから学んでおり物語のよくあるような悲劇は滅多に聞かない。結婚させる方も態々相性に悪い組み合わせをするほど無能でもない。子供の数を多く求めるのも一人の奥さんに多産を強いるのは厳しいので奥さんを複数娶るのだ。

 生活に余裕があると人間は心に余裕が出来きてくる。ただし成金は例外。愛では飯が食えない。この世界は余所者に厳しく更に職業の選択が不自由すぎるのだ。

 一度堕ちると元の生活水準には滅多に戻れない。人間って自分の生活水準を上げてしまうと中々落とせないんだよね。


 話が長くなったがシュトルムは良くも悪くもこの世界の人なのである。ただ融通が利かない。真実の愛とやらに殉じるなら正室を取ってセシリーを愛妾(マーレトリクス)に据えて多くのが一番いいと思うのだけど誠実故なのか若いだけなのか…………。

 もっとも婚姻統制に嫌気がさしてこの世界に逃げ込んでいる僕がとやかくいう事ではない。


 そんな事を思っていると事務方から来客を告げられる。誰だろう?


 

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