表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
498/678

幕間-32 召喚された者のその後③

 躊躇なく去っていくのをただ茫然と眺めていた。だがいつまでも途方に暮れているわけにはいかない。俺がしっかりしないと奴隷(スクラブ)の子らはどうしていいか判断が出来ない。特に破棄奴隷は自発的には動かない者が多い。それはどんな行動が主人の地雷を踏みぬくか判らないからだ。誰だって抵抗も出来ない中で一方的に暴力にさらされたくないだろう。彼女たちはまだ俺がどういった人物か判らないのだから。


 粗末な貫頭衣(コプフ・レケン)だけの状態なのでとりあえず数着の衣服と下着や布靴(ヂュック)あたりを買う事にしよう。衣服は俺が店員さんに相談すれば何とかなるだろうが下着は流石になぁ…………。

 彼女たちの素足が汚れてしまうが移動する事にした。この世界の衣装事情は基本的には既製品(レディメイド)の服は売ってない。注文品(オーダーメイド)か中古の品を買う。下着や布靴(ヂュック)既製品(レディメイド)もあるが人によっては中古を買う人もいるくらいだ。


 中古衣服を取り扱う店舗に到着し店内を見回す。様々な衣装などが展示されているほかに布靴(ヂュック)なども多くはないが並べられている。俺は店員さんを呼び彼女たちに合う服と下着を三セット、それに靴を一足用意してもらう。

 服に関しては中古で程度の良いものだと大人サイズで一着で小銀貨7枚(7ガルド)、下着とセットでも中銀貨1枚(10ガルド)ほどだった。子供用の布靴(ヂュック)

 購入した衣服は飾り気のない筒型長衣(ワンピース)であった。ま、良いものは稼げたら考えよう。支払いを済ませてたので宿を探そう。子供らの体力(スタミナ)が心配だ。


 何件かお断りされたものの陽が落ちる前に市壁沿いのやや薄暗い場所にある宿屋(ロキャンダー)一週間(一〇日)ほど泊まれることになった。

 その宿屋は三階建てで一階は食堂兼酒場(バラス)と宿屋主人らの住居スペース、二階は少人数用の部屋、三階が大部屋となっている。俺らが連泊するのはその上、屋根裏部屋(ロフト)である。一泊朝食つきで9人で泊まっても中銀貨2枚(20ガルド)と破格である。ただしお湯は別料金だし便所(ラトリナ)は建物の外にしかないし燃料角灯(オイルランタン)はレンタル料金が発生する。

 おっさんの話だと中原(セントルム)の大都市以外だとこの程度は普通らしい。


 宿も決まった別料金で子供らの為にお粥(ポリッジ)を用意してもらい自分らで部屋まで運ぶ。上の部屋ほど安い理由がこの面倒くささである。


 実は困ったことがある。


 一番年上の女の子以外に話が通じないのである。俺に付与された翻訳能力が公用交易語(トレディア)のみであったためだ。仕方ないので一番年上の子、名前をオリヴィエという少女に下の子らの世話を一任する事にした。


 おっさんの話だと公用交易語(トレディア)は共通語みたいなもんではあるがある程度教養が必要とされるので一人だけ出自が違うのではないだろうかと思っている。


 その日は全員毛布に包まって眠った。夜中にお約束の定番みたいな展開はなかった。もっともそんな体力(スタミナ)が残ってるはずもない。


 さて、これからどう生きようか。運や環境や家庭環境や遺伝子やら才能が等とやらない言い訳はいくらでも出てくる。そこで腐って止めるのも手ではあるがこの世界止めれば死である。とりあえず手持ちの手札で何とかしないとならない。


 翌日からは衰えた筋肉や体力を回復させるために出歩いたりしつつ身振り手振りとオリヴィエの補助で少しずつコミュニケーションを取るようにした。

 奴隷商(スクラブ・ディーラー)にかなり脅されていたようで終始ビクビクと怯えているのだ。


 そんな日々も二週間(二〇日)もすると体力も回復し身体つきもかなり元に戻ってきた。それに俺に対してもかなり慣れて来たのかたどたどしい公用交易語(トレディア)でコミュケ-ションを取るようになった。


 夏の前月(7月頃)の終わりを目途に十字路都市テントスへの移動を考えないとマズいかなと思い始め子供らを引き連れて買い物に出かけた。

 旅装を買うためだ。旅行用革靴(イテア・ブーツ)は本人の足に合わせないと駄目なので時間もかかるし結構お高い。一足で中銀貨3枚(30ガルド)だ。

 それに旅に適した丈夫な服と日差し除けの頭巾付き外套(フーデットマント)背嚢(バックパック)水袋(ビーコット)や毛布などの装備品を買っていく。

 それらが揃った後は鍛冶屋へと赴き大振りの短剣(ダガー)を各人に買い与える。

 他にも投石紐(スリング)を各自に持たせた。練習しなければ役にも立たないだろうけどこれに関しては道中で暇を見て練習させようかと思う。


 子供らうち10歳児であった7人は中原(ダール)民族と南方(ダルマニア)民族の混血児であったが一番年上で12歳のオリヴィエは中原(ダール)民族であった。打ち解けていくうちにある程度素性も分かってきて彼女は独立商人(インディペンデント)の娘で2年前まで両親に連れられ様々な地域を廻っていたという。知識も豊富で自衛程度の剣術や射撃(シューティング)術を学んでおり武装も小剣(ショートソード)軽弩(ライトクロスボウ)を持たせてある。防具は一応硬革鎧(ハードレザーアーマー)を着せているが、成長期なので恐らく近いうちに買替か改造を視野に入れるようにと言われた。


 それらの装備などで金貨3枚(3千ガルド)を消費しなんとか夏の前月(7月頃)の最終日に旅立つ事が出来た。


ブックマーク、評価、感想、誤字報告などありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ