453話 後処理③
本日冒険者組合から使いが来て出頭せよと連絡があった。
連絡は手紙でありそこには同伴者一名を許可というこれまで見たことのない文面があった。どうも胡散臭い。
しかも本日に限ってアルマが高位審議官として神殿の仕事で早朝から不在であった。そうなれば同伴できる人は【虚偽看破】が使える術者が理想だ。
和花か瑞穂か…………。
まさか中立を謳う冒険者組合が国に忖度しないよね? やっぱり疑心暗鬼になってる?
暫し悩んだ末に和花を同伴する事にした。理由は和花の方が【虚偽看破】の特性をよく理解しているからだ。
フリューゲル高導師と日本帝国から来た雲龍三等陸佐にいくつかお願いをして僕らは出かける事にした。
冒険者組合の位置は内壁区に位置するので共同体の拠点からだと大通りを北へと3.75サーグほど行ったところにある。
約束の時間は七の刻なので時間的には余裕がある。一頭立て二輪幌馬車を手配し和花と打ち合わせしつつ向かった。
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「こちらでお待ちください」
専属受付係のマクファイト嬢の案内で通された部屋はこれまで行ったことのない場所であった。マクファイト嬢が豪華な黒壇の両開き扉の前に立つとノックをし、「お連れしました」と告げると、「入れ」と返事が返ってきた。どこかで聞いた声であった。
その部屋は豪華な調度品が所々に配された部屋であった。書類が積まれた大型の机と応接セットからなる部屋で部屋の主を見てここが冒険者組合の支部長マーテリア氏の公務の部屋だと分かった。
「まずは座ってそれを読め。理解したら署名しろ」
言われるままにソファーに腰を下ろすとマクファイト嬢が書類をテーブルに置く。一目でそれが魔法の契約書である事が分かった。
魔法の契約書を手に内容を目で追う。内容を要約するとここでのやり取りを口外禁止という内容である。
「署名できないなら報酬だけもらって帰ってもいいぞ」
署名するか迷っているとマーテリア支部長のこの台詞に嘘はない。念のために【虚偽看破】を効果時間を延長して掛けてきて正解であった。
恐らく今回の依頼についての表に出せない話をするのだろうと判断し署名する。
署名を確認した後にマーテリア支部長が席を立ち着いてくるようにと言って部屋を出る。昇降機に乗ると開口一番こう言った。
「これから向かう場所は冒険者組合の特別区画だ。そこにあるモノを保管している」
このあるモノという部分に違和感があると【虚偽看破】さんが伝えてくる。言い回しを変えている節があるようだ。
昇降機が止まり薄暗い広場に出る。速度と体幹時間的に地下20サートくらいは降りただろうか。
「真っ当に冒険者やってれば一生見る事がない区画だ」
歩きながらそう言ってマーテリア支部長が進んでいくと何やら叫び声にも似た声が聞こえてくる。
「ここだ」
その鉄格子の扉とその奥を見てピンときた。ここは監獄だ。鉄格子の大扉を潜ると通路が続いており左右の壁には無数の鉄格子で仕切られた小部屋がある。何やら香が焚かれているがそれでは隠し切れない嫌な臭いが漂っている。南方でも嗅いだ汚物臭だ。
「ここは賞金首らの処遇が決まるまで放り込んでおく場所だ」
そう言うとひとつの牢屋の前に止まる。中を見るように見るように言われる。2スクーナほどの空間にベッド代りの藁と便所かわりの桶がおいてあり壁に女が寄りかかるように寝そべっていた。
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