451話 後処理①
「終わったようだね」
僕らが戻ってきたことに気が付いたフリューゲル高導師が立ち上がって出迎えてくれる。
「しかし、すごい惨状ですね」
竜人族のガナンとフリューゲル高導師の二人だけで騎体を擱座させてしまった事だ。魔導機器技師としての知識は素人に毛が生えた程度の僕には再生は不可能に思える惨状である。
彼らは超越者に片足突っ込んでるのだろうか?
「相手が未熟だったからだよ。ところでそこの気味の悪い生首が闇司祭かね?」
大したことではないと言い切ってしまうあたりが凄いなと思えてしまう。
「えぇ。何らかの形で証言を引き出せるとの事で持ってきました」
「なるほど神殿で【降霊術】を使うつもりか――」
取り合えず戻りながら話そうという事になり周囲の警戒をしてもらいつつ駐騎場へと戻る。
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「これはひどいな……」
暴徒などは沈静化されており道中は静かであったが駐騎場は再び襲撃があったのか多くの遺体に溢れており衛兵隊らがせっせと市壁の外へと運び出していた。
健司ら無事のようで部隊長っぽい人と何やら話し込んでいる。
僕らが戻ってきたことに気が付いた部隊長さんが、「これも仕事なので」と前置きしてどこに行って何をしていたのかなど四半刻くらい質疑応答が続いた。
話が王城での惨状に及ぶと部下を呼びつけ分隊が調べに向かった。僕らは確認が取れるまでここで待機を言い渡される。
今回の駐騎場での戦闘というか暴動は貧困層によるもので生存者の話によると独立商人のヘンダーソン氏が王都の糧食をかき集めて逃げ出す準備をしていると吹き込まれたらしいが、どうも記憶があいまいらしいとの事である。今夜は王都の至る所で略奪暴行が行われており衛兵隊曰く、「普段は無気力なくせにこんな時だけ盛りやがって」と文句を言っていた。
それから八半刻ほどして大地母神の神官らが二〇人ほど来て怪我人の治療と炊き出しを始めた。
しかしついさっきまで殺し合いに発展した場所で炊き出しとかどういう神経してるんだと思うのだけどここ以外に炊き出しの準備と治療を行えるほどの広いスペースがないとの事だ。
町の人らは未だにヘンダーソン氏を糧食をかき集めて王都から逃げ出す極悪独立商人と思い込んでいる人も多くこちらを睨みつけている者が多い。
もう意味が分からないよ。
取り合えず僕らがヘンダーソン氏から中原で仕入れてきた糧食を半値で買い取り寄進という名目で大地母神の炊き出しに使ってもらう事にした。
これで理不尽な感情が少しは和らいでくれれば良いのだけど…………。
「正直こんなことをしても一時しのぎにもならないと思うのだけどね」
「なんだか訳が分からないわね」
「根本的には僕に問題があったね。禄の情報を収集してこないで横着して【転移】で来てしまったのもあったかなと反省している」
アサディアス王国の情報などをもっときちんと集めてからでも遅くなかったかも知れないねと和花と話していると大地母神の若い男の聖職者でやってきてこんな無茶を言い始めた。
「申し訳ないのですが、もう少し寄進していただけないでしょうか」
如何にも申し訳なさそうに低頭平身でいうのだけど、ヘンダーソン氏の小型平台式魔導騎士輸送騎にある荷物はすべて放出した。あとはヘンダーソン氏の個人的な食糧くらいだ。
しかしこの若い聖職者は結構抜け目ないのか僕らが[魔法の鞄]に物を出し入れしているのをしっかり目撃しておりまだ隠し持っていると思っているようだ。
明らかにこのままだと炊き出しが行き渡らずに、再び暴徒と化すと脅し始めてきた。
知るかと言いたいところだけどこの若い聖職者は勘違いしている。僕らが保有しているのは【時空収納】であって【時空倉庫】ではないので容量に限りがありここにいる民衆を満足させる分は到底ない。
そろそろ呪的資源が回復するし、これは【転移】で逃げ出すかな?
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辞書ファイルを整理しルビというか固有名詞を変更しました。手が空いたら過去分も差し替えていきます。




